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お店ラジオ 2024/02/14 2024/03/14

モノに命を吹き込み、価値を生み出し、宝物を作る

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、創業前には48店のリサイクルショップを訪問し、リサイクルの可能性を見出し、捨てられるモノに新たな命を吹き込むことで、新しい価値を生み出し、宝物を生み出す「工場」として、1995年に「トレジャー・ファクトリー」を創業。仕入れを工夫し、様々な業態を生み出し、徹底した商品管理、ドミナント戦略による出店などでリユースの市場を開拓。トレジャー・ファクトリー独自のリサイクルエコシステムを確立し、業界を牽引する株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長 野坂英吾さんです。

創業のきっかけ、そして48店舗を訪問し創業。リユースが一般的ではなかった時代の市場開拓の戦略。ユーザーの心を掴む買取や販売方法戦略、時代の変化による商品構成の変化や海外への展開、総合業態と専門業態のマーケットの違いなど、3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、創業のきっかけから、一般的ではなかったリユースマーケットの開拓戦略についてお送りします。

 

この記事の目次

 

新たな命を吹き込み、宝物として世の中に送り出すトレジャー・ファクトリー

トレジャー・ファクトリーは、洋服、家電、家具、雑貨などの買取と販売を手掛ける総合リユースショップです。2023年末の時点で、私たちは全国に86店舗を展開しており、特に関東や関西地域で積極的に事業を行っています。トレジャー・ファクトリーを含む当グループは、合計で271店舗を運営しています。

私たちは創業以来、お客様の悩みに耳を傾け、お客様が喜ぶサービスを提供するために、常に創意工夫を重ねてきました。リユース品に新たな命を吹き込むことで、新しい価値を生み出してきました。この思いは、私たちの名前「トレジャー・ファクトリー」にも込められています。私たちは自分たちを、宝物を生み出す「工場」と位置づけています

1995年に創業した当社は、私が学生時代に準備を始め、卒業と同時に設立しました。当時、多くの同世代がホームページ制作のビジネスで起業していましたが、私はそのビジネスモデルが長期間続くものではないと考えていましたので、持続可能でユニークなビジネスを目指しました。この考えが、現在のトレジャー・ファクトリーへとつながっています。

 

48軒の訪問から得た教訓と創業の決断

リユースショップを開業するきっかけは、私が学生時代に経験したアルバイトでした。大型ショッピングモールの中にあるカラオケ店で働いていた時、閉店後のゴミ捨て場で、家電量販店やインテリアショップから出される中古品を目にしました。新品同様のテレビやまだ使えるダイニングセットが捨てられているのを見て、その無駄に衝撃を受け、リユースショップの開業を考え始めました

その後リユースショップについて学ぶため研究を始めました。当時、リユースショップはまだ珍しかったのですが、48軒の店舗を訪れ、各店主と話をしました。私がお店を開きたいと店主に話すと、多くの店主が「利益が出ない」として開業を諦めるようと私に忠告しました。しかし、訪問を重ねる中で、約2〜3割の店が繁盛していることに気付いたのです。

これらの訪問から、リユースショップが成功するための戦略と避けるべき点を私は学びました。そして、この経験が、リユースショップを開業するという決断へと繋がったのです。

 

事業計画の挑戦と資金調達のジレンマ

私は48軒の店を回り、それぞれのお店の良いところをピックアップし事業計画にまとめました。この経験は、私にとって非常に有意義なものでした。

しかし、事業開始には少なくとも700万円の初期投資が必要で、学生だった私にはそれだけの資金はありませんでした。融資を求めて銀行を訪れましたが、予想通り、門前払いされました。銀行の方からは「場所を決めてからお金を借りてください」と言われましたが、場所を決めるためには資金が必要なのです。このジレンマにより、事業開始が困難な状況が続きました。

そんな中、運命の転機が訪れました。新聞で「新規事業者に安価で空き倉庫を貸し出す」という記事を見つけたのです。6社が入る新築の倉庫で入居者がまだ決まっていなかったため、入居者が決まるまでであればという条件で、一時的に使用することが許可されました。

そして、わずか30万円の元手で最初の店舗を開業することができました。事業計画を立ててから約1年後の開店でした。

 

清潔な商品と丁寧な接客で差別化を図る創業

店舗を確保したものの、商品がなければ開店できません。創業当初の課題は、コストをできるだけ抑えた方法で商品を見つけることでしたので、無料で入手できる商品を集めたり、委託販売や卸業者からの仕入れなどを行ったりしました。

その他にも、開店準備中に知り合ったリユースショップの経営者から、廃業時の残品を譲り受けることもありました。これらの商品は廃業時に売れ残った商品ですから人気が無いものがほとんどでしたが、ありがたくいただきました。

しかし、譲り受けた商品の多くは汚れており、そのままでは販売できない状態でした。そこで、これらの商品を丁寧に清掃し、磨き上げて販売しました。加えて、丁寧な接客を心がけ、価格を明確に表示するなど、基本的な商売の原則を守りました。これは、事業計画の重要なポイントでした。

当時のリユースショップでは価格表示は一般的ではありませんでした。通常の小売業では、商品を綺麗に展示し、価格を表示し、丁寧な接客をするのが基本ですが、リユースショップ業界ではこれらが欠けていることが多かったのです。

私は、これらの基本を提供することがリユース業界での大きな差別化になると信じ、銀行に融資を申し込む際にもこの点を強調しました。しかし、この観点を理解してもらうのは簡単ではありませんでした。当時はまだ、リユースショップという業態自体が一般的ではなかったのです。

 

リユースショップでの購入が恥ずかしい時代からの努力

店舗も商品も整い、私たちのお店はオープンしましたが、その頃はまだリユースショップで中古品を購入するということが一般的ではありませんでした。中古品を扱う店に行くという行為は、経済的に苦しい人がするものだという認識が根強くあり、お客様はお店で偶然出会うと、「たまたま来た」という雰囲気を漂わせることもありました。

忘れられないエピソードがあります。あるお客様がタンスを購入し、配達時に誤って隣の家に届けてしまったことがありました。後に、本来のお客様に「なぜ隣人にリユースショップでの購入を伝えたのか」と問い詰められたことがあります。彼らは良い品だと分かっていても、中古品であることに恥ずかしさを感じていたのです。

そうした時代から28年、私たちはリユースが社会的に認められるように努力してきました。商品を常に清潔に保ち、価格を明確に表示し、それまで中古品に保証が付いていないのが普通であった中古品に保証制度を導入しました。さらに、接客サービスにも力を入れることで、少しずつ市場を広げてきたのです。

 

リピート顧客を増やすための戦略

私は、家庭用品を中心に幅広く商品を扱い、地域の人々に「お店に行けば何か見つかるかもしれない」と思ってもらえるような店作りを目指しました。

お客様に「欲しいものが見つかるかもしれない」、「売りたいものがあるから訪れてみよう」と思っていただけるようなお店を作りたいと考えていました。様々な商品を取り揃えることで、お客様が商品と出会う楽しさを感じてもらうため、最初は総合リユースショップとしてスタートしたのです。

リユースショップは、コンビニエンスストアのように常に求める商品があるわけではありません。そのため、探していた商品に出会えた時の喜びは大きいです。

過去に欲しかったが手に入らなかった商品を当店で見つけた時、それは特別な出会いになります。このような経験を繰り返し提供するためには、お客様に何度も店を訪れていただくことが不可欠です。これを実現するため、接客の質を高めるのはもちろん、商品の種類を増やし、常に新鮮な品揃えを心掛けることが重要なのです。

第1回は、創業のきっかけから、一般的ではなかったリユースマーケットの開拓戦略についてお送りしました。
第2回は、出店戦略と売ってもらうための店作り、専門化による市場開拓についてお送りします。

 

 

執筆 アキナイラボ 編集部

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