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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
#29 焼き鳥チェーン店「鳥貴族」創業者、大倉忠司さん登場
#30 独自のFC戦略!「業態を磨く」ことが成功への鍵
今回のゲストは、最大手の焼き鳥チェーンである「鳥貴族」を展開する株式会社鳥貴族ホールディングス代表取締役社長の大倉忠司さんです。創業当初から全国展開を見据えていた大倉さんが、ここまで鳥貴族を大きくするまでに至った思考の過程やこれから展開していきたいビジネスについて3回に分けてお送りします。
第一回は大倉さんが心がける”引き算の経営”についてご紹介しました。
第二回は鳥貴族のこだわりについてご紹介しました。
第三回は次なるビジネスの展開についてご紹介します。
この記事の目次
次に挑戦するのはチキンバーガー専門店!きっかけはアメリカ出張
ずっと焼き鳥専門店だけをやってきたのですが、最近ハンバーガー屋という新たな業態にチャレンジすることにしました。根底にあるのはマクドナルド創業者の藤田さんへの憧れです。もちろん著作は全て読んでいますし、創業当初は「焼き鳥業界のマクドナルドを目指す!」と掲げていたくらいです。
直接的なきっかけになったのはコロナ前にアメリカへ行ったことです。鳥貴族の海外進出のため、アメリカには頻繁に訪れていました。
すると、アメリカでチキンバーガー専門店の盛り上がりが凄まじいことに気がつきました。そのお店は北米にしか出店していないし、「ミサに行けるように」と日曜日を休みにしているのに、すでに1兆円企業になっていたのです。それを見て、これを日本でやったら面白そうだなと思いました。
世界でチキンが流行っている理由とは
先進国でヘルシー志向が高まっていることもあり、世界ではビーフやポークよりもチキンに人気が集まりつつあります。さらに値段も安く、宗教的なタブーにも引っかかりません。これだけ大きな流れがきているのならば、試してみる価値は十分にあると考えました。
そう思いつつも、当時は鳥貴族の海外進出の方が優先順位が上だったので後回しにしていたのですが、そんな時にコロナがやってきました。我々居酒屋業界が大打撃を受けて疲弊しているのを尻目に、ハンバーガー業界は好調でした。それなら我々もずっと構想にあったチキンバーガー専門店をやってみようと「トリキバーガー」を作ることにしたという流れです。
すでにハンバーガー業界はものすごいレッドオーシャンですが、鳥貴族もそうだったんです。当時はもう「村さ来」や「つぼ八」が全国展開していたころで、今更全国展開なんて無理だと言われ続けていました。だから第二の創業という思いです。
目指せ国内1000店舗!赤字覚悟の高品質・低価格
たまたまマクドナルドの部長までやっていた人が社内に2人いたので、彼らを中心に据えてハード部分の厨房などは作ってもらいました。
鳥貴族と同様、食材は国産です。ファストフードは不健康だと言うイメージがあるので、お母さんも安心して食べられるような品質のものを提供していきます。そして価格も国内で1000店舗作ることを前提に私がじっくりと決めたので、とても安く設定されています。これも鳥貴族の創業期と同じように、スケールメリットが十分に活かせる規模になるまでしばらくは赤字覚悟です。
今は大井町と渋谷にあり、鳥貴族のブランドのおかげでお客さんは順調に集まっているかなというところです。
あらゆる場所で通用するように、“業態を磨く”
繁華街で成功してからローカルに行って失敗するお店は意外と多いです。それは、業態が磨かれていないまま成功してしまったからだと思っています。立地がいいからなんとかなっていただけで、そうでない場所では通用しないということです。
業態を磨くというのは例えば、メニューのカスタマイズやレイアウトの改善、その他あらゆるノウハウの蓄積のことです。どうすればお客さんが喜んでくれるのかの試行錯誤を5,6店舗くらいまでの段階でしっかりとやり、店舗を増やしてもうまくいくような洗練されたものを作ることが大切だと思います。
ロイヤリティが定額5万円!激安フランチャイズのカラクリ
鳥貴族には直営とフランチャイズが両方あります。基本的には直営でやるつもりなのですが、まだ資金繰りが厳しい時は店舗数を増やすために積極的にフランチャイズを展開したしました。ロイヤリティで儲けようというより、知名度をあげたりサプライチェーンを強化するためです。なのでロイヤリティは定額5万円という激安価格にして障壁を低くしています。
また、こうなるとオーナーも多店舗展開がしやすくなり、こちらとしても効率がいいです。なんと最大70店舗を経営するオーナーもいます。
「僕は小さなお店で十分」という要望に応え、小規模店舗を作る
フランチャイジーは大体3分の1ずつ私の知人、社員、一般の方で、中でも社員が一番多いです。
昔は多店舗展開をできるだけのスキルを身につけないと独立はさせないという方針だったので、年間一人くらいしか独立しなかったのですが、最近は「僕は小さい店舗一つで十分です」という人が案外多くなっていることに気がつきました。僕のような多店舗展開だ上場だと息巻いている人は多くなく、現場に立ってお客さんと密なコミュニケーションを取っていくのが理想だったのです。
それならと「鳥貴族 大倉屋」として10坪ほどのお店を作り、社内からこの店舗を任せる人を募集することにしたのですが、思ったよりもさらに多くの社員が手を上げる形となりました。この小規模で密度が濃くなるのも店舗としてすごくいいと思いますし、これが従来の鳥貴族が手をつけられていなかった部分を埋められるようになったらすごくいいなと考えています。
社長でも飛行機移動はエコノミー!?経費に関する衝撃の考え
うちの経営として珍しいと言われるのが、役員の経費をほとんど使わないということです。給与は差をつけていますが、それ以外はできるだけ平等にしています。例えば私も接待交際費は一切使えないですし、海外出張の飛行機もエコノミーです。
また、社長室もありません。社長室があると敷居が高くなってしまいますし、みんなと同じ場所で作業すればお互いの作業風景を見ることができます。この方が風通しがよくなると考えています。