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お店ラジオ 2021/12/15 2024/03/14

日本の飲食店の現場は “おもてなしの呪い”から解放されよう

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、飲食業界では知らない人がいないという、株式会社トレタの代表取締役、中村仁さんです。ある著名飲食店チェーンの社長が、「これは革命だよ」と言ったトレタのサービスとはどんなものなのか。また、中村さんが見据える飲食業界の未来などについてお聞きしました。

1回目は、中村さんのトレタ創業までのお話をお聞きしました。
中村さんのお話をご紹介する2回目は、トレタの普及にあった苦労話などをご紹介します。

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この記事の目次

  1. 大変だった啓蒙活動と業界の変化
  2. 飲食店の現場がとらわれる「おもてなしの呪い」
  3. 機械化とハッピーの共存のために
  4. 店員に求められるスキルは変わってきている
  5. 理想論をどれだけ本気で語れるか

大変だった啓蒙活動と業界の変化

これまでのトレタの営業活動は大変で、ほとんど啓蒙活動のようなものでした。多くの飲食店から、「そんなサービス、まだ早いよ」「うちはアナログでやるよ」と言われました。なぜ飲食店側がそんな感じだったかというと、紙の予約台帳をタダで使って、業務としては十分回っているところに、紙ではなくアプリで、それもお金を出してやることに、どんなメリットがあるか、なかなかわかってもらえないからです。(トレタのサービス内容については#1に)

かつてやっていた営業活動はこういうものでした。「困っていませんか」「困ってないよ」「すごい手間がかかるでしょ。書き直したり管理したりで、1~2時間かかりませんか」「かかるけど困ってないから」「予約の電話を受けられる人がいなかったら、予約1件、受けられませんよね」「それはそうだね」「店の外でだれかに会って、店の予約を頼まれたらどうするんですか」「店に電話して確認するよ」「それ、面倒じゃないですか。店に電話がつながらないこともありますよね」「あるね」といった会話を積み重ねていって、「現状はすごく不便ですよね」と言うと、「ああ、いわれてみれば不便だったかも」となります。

そんなふうにかつては、地道に啓蒙活動をしていたのですが、それがコロナで一気に変わりました。啓蒙するよりも先に、お客さんの方からやりたいと言ってくれるようになりました。その変化は肌感で感じられます。

 

飲食店の現場がとらわれる「おもてなしの呪い」

営業活動では、「トレタを導入すると、おもてなしができなくなる」と言う人もかなりいました。僕はそれを、「おもてなしの呪い」だと言っています。おもてなしの呪いにつながる三段論法は、「日本の飲食店の良さはおもてなしにあり」、「おもてなしとはフェイストゥフェイスのやりとりから生まれる」ので、「飲食店の現場はアナログのまま残さなきゃいけない」というものです。

しかし、顧客体験の観点からみたとき、それが理想なのでしょうか。この話をするとき、僕がよく例に出すのが回転寿司です。回転寿司はどんどん機械化されて、店内に店員はほとんどいなくなりました。そうなって、お客さんは不満かというと、そんなことはありません。お客さんはみんな、すごく楽しそうですし、店には行列が絶えません。

つまり、機械化することが、必ずしも顧客体験を損なうわけではないということです。むしろ機械化することで、顧客体験を高められる可能性があります。「機械化すること」と、「おもてなしを大事にすること」は二律背反ではないのです。ですから僕は、お客さんの顧客体験をもっと高めるために、テクノロジーをどう使うかという発想に切り替えましょうと言っているのです。

僕のこの言葉が、これまではなかなか受け入れてくれなかったところまで届くようになりました。コロナによって、多くの人のマインドが変わったと思います。

 

機械化とハッピーの共存のために

飲食店はそもそも、マニュアル化することで進化してきました。一方で、マニュアル化はすごく拒絶反応を受けます。なぜかというと、マニュアル化は人間を機械として動かそうとするものだからです。

飲食店には、単純化された仕事がたくさんあります。それを機械ができないので、マニュアルを作って人間にやらせています。それを本能的に感じ取った人が拒絶するわけですが、今後は、マニュアル化が可能な業務は、全部本当に機械になっていくでしょう。

そうなったときに、みんながハッピーになるよう、どうテクノロジーを使うかを、いま考えなければならないのです。トレタを導入するとさまざまなメリットがあります。その人がこれまでに何回来たか、どんな人かの情報をためていくことができ、それを見れば、お客さんのことがわかります。

いずれはトレタがもっと進化して、その人の過去の注文内容や顔の画像情報、会話の音声データなども蓄積して活用できるようになれば、眼鏡型のデバイスでその人を視覚で捉えると、瞬時にその人のデータが表示されるというものになるかもしれません。マンガのドラゴンボールにでてくる、そんなスカウターのようなサービスを作るのが、僕のひとつの夢です。

 

店員に求められるスキルは変わってきている

最近、お客さんがスマホやタブレットで注文できる飲食店が増えています。飲食店のDXが進むことで、現場は変わり始めています。これまでの飲食店では、ホールスタッフとして働くためには、メニューと卓番号を覚えなければなりませんでした。どんな料理があるか覚えないと注文を受けられませんし、卓番号を覚えないと、できた料理を持っていけないからです。注文を受ける機械の操作を覚えることも必要でした。

しかし、お客さんがスマホなどでオーダーするようになると、店員がオーダーを取る必要がなくなります。もはや、ホールスタッフがメニューを覚える必要はないのです。お客さんのことも、データをすぐに見られるようになれば、顔やその人の情報を覚える必要はなくなります。

現場はだんだんとそうなってきていて、スタッフに求められるスキルセットが変化しつつあります。これまでは、暗記ができない人は戦力になりませんでしたが、これからは暗記力ではなく、コミュニケーション能力の高い人が求められるようになるでしょう。極論を言えば、その店での経験は必要なく、コミュニケーション能力の高さがあればいいとなります。お客さんを楽しませる会話力が、何より求められるスキルになるということです。

トレタがTimeeと提携したのも、そんな状況が理由です。Timeeはスキマ時間ができたので働きたいという人と、すぐに人手が欲しい事業者をマッチングするサービスです。これまでの飲食店では、スタッフには暗記や熟練が必要であり、だれでもすぐにできる仕事は皿洗いくらいしかありませんでした。しかしDXが進んだ飲食店では、だれでもすぐにホールスタッフができます。だからTimeeでのマッチングが可能になるのです。

店員の教育方法を変えた飲食店も出てきました。そんな進んだ店では、店員の会話力を磨くため、大喜利をやったりするそうです。そのスキルを身に付ける方が大変かもしれませんが、今後、人間に求められる、機械にはできない部分の能力とは、そういうところなのです。

 

理想論をどれだけ本気で語れるか

経営者に求められる一番大事なことは、きれいごとや理想論をどれだけ本気で語れるか、信じられるかだと思います。こうあるべきだと、最後まで言い切れることが大事です。僕が言い続けたきれいごとは、「問題の根源から解く」ということです。飲食店の予約管理サービスは、オンライン予約ができる使いやすい管理画面を作って、あとはお店の人が人力で対応してくださいと、表面的にやっているところが多いです。

紙台帳の部分を変えるのは非常に大変なので、紙台帳はそのままでも、たくさん送客をすれば、飲食店側も満足だろうというやり方です。そんな表面的なサービスでは、瞬間的にはマネタイズできるかもしれませんが、それでは何も変わりませんし、マネタイズも続かないでしょう。

僕は、店の紙台帳という一番根っこの部分を変えないと絶対に普及しないので、そこを愚直にやろうと言い続けました。そのためには啓蒙のようなことも必要だし、セールスも大変です。でも、そうすることでしか、僕たちの考える理想の世界には近づけないのです。

今回のお話はここまでです。次回は、中村さんが実現した新しい飲食店のことと、飲食業界の未来についてのお話をご紹介します。

 

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執筆 真鍋 誠人

スマレジにて主にイベントマーケティング・コミュニティマーケティング・SNSマーケティング担当。スマレジユーザーのコミュニティ「アキナイラボ」の統括責任者をしており、店舗運営にまつわるヒント・コツを共有し相互発展していけるよう環境作りに日夜奮闘中。

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