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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、自宅や別荘をホテルとして活用する新しいビジネスモデルを展開する「NOT A HOTEL株式会社」の代表取締役CEO、濱波伸次さんです。2020年に設立された同社は、独自のデザインと運営スタイルで注目を集めています。
新しいビジネスモデルを考案し、宮崎で「NOT A HOTEL株式会社」を設立するに至った経緯、独自のデザインと運営方法によって成功を収めた背景、そして国内外での展開や、品質と顧客満足に対するこだわりについて、3回に分けてお送りします。
第1回は、NOT A HOTELの創業と逆転の発想で生まれた新しいビジネスホテル、ノンアセット型ビジネスモデルなどについてお送りします。
この記事の目次
「宇宙へ行く」という宣言で退職
NOT A HOTEL株式会社は、2020年に設立した会社で、自宅や別荘として購入した住居を、利用していない期間に他の方にホテルとして貸し出すサービスを提供しています。
私は23歳の時、宮崎の商店街でEコマースサイトを作る会社を立ち上げました。
その会社を10年間運営した後、2015年に前澤友作氏のZOZOに30億円で売却しました。ZOZOグループに加わった後は、子会社の社長として前澤氏と共に5年間楽しく働きました。
しかし、ある日突然、前澤氏が「宇宙へ行く」と宣言したのです。
その言葉を聞いた私は、これが次のステップへ進むタイミングだと直感し、同日に辞表を提出しました。
同時に、ソフトバンクとの資本提携発表もありましたが、私はその日に退職し、次の事業を考え始めました。しかし、退職時には具体的なビジネスプランはなく、まったくのノープランからの再スタートでした。
誰も体験していないことをビジネスに
私は家具のコレクターとして、世界中を旅してさまざまな経験を積んできました。
その中で、他の人がまだ体験していないことをビジネスにすることが最も価値があると感じるようになりました。
そして、旅の途中で素晴らしいホテルやヴィラに滞在するたびに、「こんな場所が日本にもあればいいのに」と思うことが何度もありました。
しかし、当時の日本にはそういったホテルは存在しておらず、それならば自分で作ろうと決心しました。
最初は趣味の延長として始めるつもりでしたが、実際にホテルを作るとなると、場所や建物、スタッフ、食事など、さまざまな要素を完璧に組み合わせる必要があることに気づきました。そのためには、多くの課題をクリアしなければなりませんでした。
当初は建物さえ完成すれば満足だと思っていましたが、プロジェクトが進むにつれて、すべて自分たちで手掛けたいという気持ちが強くなり、最終的には清掃まで自分たちで行うようになりました。
私たちは、土地探しからチェックアウトまで、サービスのすべてを自分たちで手掛けています。
地元宮崎にホテルを作りたいという思いから始まった新たな挑戦
当初は私の地元である宮崎にホテルを作りたいという想いから、このプロジェクトが始まりました。
宮崎には、青島という目の前に海が広がる絶好のロケーションがあり、宮崎市がその土地の利用者を公募していました。
私たちはその公募に応募し、見事にその土地を利用する権利を得ることができ、こうして「NOT A HOTEL(ノットアホテル)」という構想が生まれ、事業がスタートしました。
宮崎はかつて新婚旅行のメッカとして、多くの人々に親しまれたリゾート地です。
当初、私たちは通常のホテルとして運営することを計画していましたが、銀行に資金を借りに行ったところ、融資を断られてしまいました。
そこで、ホテルの建設費用を確保するために、先にオーナーに販売して資金を回収するモデルへと方針を転換しました。
通常のホテル経営では、建設から数十年かけて投資を回収しますが、このモデルでは、販売と同時に投資回収が完了する仕組みを採用しています。
逆転の発想で新しいNOT A HOTELのビジネスモデル
銀行からの融資が受けられなかったため、私はクラウドファンディングのように、資金を先に集めてからホテルを建設するという逆転の発想を取りました。
このアイデアは、ZOZOのビジネスモデルからヒントを得たものです。
ZOZOは、洋服を先に仕入れて販売するのではなく、店から預かり、売れた後に支払いを行うモデルを採用していました。この手法を不動産にも応用できるのではないかと考えたのです。
ホテルの名前「NOT A HOTEL」は、銀行から資金を借りられなくても事業を推進できるという意思を表現しています。銀行に頼らず、ホテルとは違う形で何かをやるという意味を込めました。
具体的には、まず自分が本当に作りたいホテルをCGで表現し、そのイメージをもとにオーナーを募集します。私たちは一棟のホテルを12人のオーナーに分割して販売し、各オーナーが年に1ヶ月使用できる権利を持つというモデルです。
12人のオーナーが揃った時点で建設を開始するため、販売開始時にはCG作成費用のみで済みます。この仕組みにより、リスクを最小限に抑えながら、理想のホテルを実現することができました。
CGの力と投資家との連携によるリスク管理
私たちが制作するCGについては、ウェブサイトに掲載されているホテルをご覧いただければ、そのクオリティーの高さがわかると思います。
実際にはまだ建設されていない物件も半数ほどありますが、まるで現実に存在しているかのようなクオリティーで再現しています。
この忠実なCG再現により、これまで一度も「現実が違う」といったクレームを受けたことはありません。私たちの社内には優れたCGクリエイターが在籍しており、最終的な仕上げは海外のトップクリエイターと協力して行っています。
ただし、建物の構造がしっかりと計画されていないと、CGと現実の一致は難しいため、建設予定地の土地も確保する必要があります。
土地については、私たち自身で購入するのではなく、投資家の方に購入していただいています。
投資家の方に土地を購入してもらい、建設が始まるまでの間、私たちは金利のみを支払い、売れることが確定した段階で土地を買い戻すという形を取っています。
万が一、計画の途中で事業が中止となり、私たちが土地を買い戻すことができなかった場合には、土地を他の人に売却することになりますが、それまでに支払った金利により、投資家のリスクはある程度カバーされています。
もちろん、土地が売れ残るリスクはありますが、その分を金利で補填する形で、投資家との信頼関係を築いています。
ノンアセット型ビジネスモデルの構築と進化
例えば、現在進行中の水上プロジェクトでは、オープンハウス社が土地を保有し、建築リスクも引き受けてくださっています。
私たちはブランド価値とソフトウェアを提供する形で、実際にはSaaS(Software as a Service)に近いビジネスモデルを採用しています。
このノンアセット型ビジネスモデルは、オープンハウス社のような大規模な企業であれば、たとえ土地が売れなくても、次の買い手を見つけたり、他の活用方法を見出したりする可能性が高いため、ある程度のリスクを取ることができます。
最初の宮崎の物件は賃貸契約でスタートしましたが、その後の那須プロジェクトでは、最初に土地を購入しました。初年度には約50億円の販売を達成し、その実績が次の投資家を引き寄せるきっかけとなりました。
単純にホテルを建設するための資金が不足していたため、さまざまな資金調達方法を模索する中で、このビジネスモデルが形成されていったのです。
オンライン販売への挑戦と成功の理由
この新しい販売方法について、不動産のプロや業界関係者からは、「絶対に売れない」と言われました。特に、オンラインでCGだけを見て購入する人なんていないだろうと言われましたが、私はこのモデルが成功すると信じていました。
しかし、販売開始直前にはさすがに不安がよぎりました。
ところが、実際にウェブサイトを公開してみると、なんと一日で15億円分が売れたのです。驚くべきことに、多くの方がWEBサイト内のショッピングカートを利用して購入してくださいました。
通常、このような高額な権利は営業マンが丁寧に説明して契約を取るものだというイメージが強いですが、私たちはまったく異なるアプローチを取っていたのです。
第1回は、NOT A HOTELの創業と逆転の発想で生まれた新しいビジネスホテル、ノンアセット型ビジネスモデルなどについてお送りしました。
第2回は、8億円の物件をクリックで購入させるエッジの効いたデザインと魅力、新しい別荘の所有方法などについてお送りします。