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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社 代表取締役 山本昌弘さんです。同社は、フランチャイズ展開を目指す企業に特化した支援を提供し、効率的で持続可能なビジネスモデルの構築をサポートしています。また、自ら展開している、「うなぎの成瀬」の成功の鍵や、独自の業態開発における戦略や工夫について伺います。
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社を設立した経緯、企業の強みを活かしたフランチャイズ展開支援、そして効率的なビジネスモデルの構築や、独自業態「成瀬」や「よもぎ蒸しサロン」を通じた成功事例、さらに国内外での店舗展開戦略について、3回に分けてお送りします。
第1回は、フランチャイズビジネスインキュベーション設立の経緯や、企業の強みを活かしたオーダーメイド支援の手法などについてお送りしました。
第2回は、「成瀬」や「よもぎ蒸しサロン」の成功、人件費を抑えた効率的な運営モデルの特徴、低コストで始められる業態の魅力などについてお送りしました。
第3回は、国内外283店舗の展開戦略、物件選定やエリア計画の基準、透明性を重視したフランチャイズモデルの拡大方針についてお送りします。
この記事の目次
透明性と共感で広がるフランチャイズの輪
千葉店の成功をきっかけに、「FCに加盟したい」という問い合わせが増加しました。特徴的なのは、私たちが、既存の媒体を利用しなかったことです。唯一行ったのは、私自身がX(旧Twitter)で毎日売上を公開したことでした。
横浜店のオープン初日から、私は売上を隠すことなく公開しました。好調な日も低迷した日も正直に、「30万円売れました」「2万5千円でした」と投稿し続けました。透明性のある発信が、事業のリアルな一面を伝え、多くの共感を得ました。2年以上にわたる投稿を続けた結果、「神戸で店舗をやりたい」「加盟したい」といった問い合わせがXや問い合わせフォームを通じて寄せられるようになりました。
私たちに問い合わせをしてくれる方々は、ITリテラシーも高い方が多いため、サポートが非常にスムーズでした。この点が、通常のフランチャイズ希望者と大きく異なります。また、私たちのビジネスに「共感している」方が多いため、こちらは「この方に任せても大丈夫か」を判断するだけで済みます。
この透明性が、双方にとってフェアでウィンウィンな関係を築く鍵となっていて、結果として、FCは加盟者の主体性に支えられながら拡大し、理想的な形で事業が進行しています。この透明性と共感に基づく仕組みが、事業の成功を支える大きな要因となっているのです。
フランチャイズ加盟の条件と費用
「うなぎの成瀬」の加盟条件は、まず加盟金を150万円と設定しています。これはフランチャイズ業界では比較的低めの金額です。
初期費用には、研修費40万円、重箱などの初期セット60万円、うなぎのデポジット50万円、開業サポート費50万円が含まれ、合計約300万円となります。これに物件取得費や内装費を加えて、全体で1000万円以内に収める設計です。ロイヤリティは、固定費が月10万円と売上の4%です。
また、年間売上は4000万円~5000万円を目標とし、利益率は10%~15%で、年間500万円~750万円の利益が期待できます。家賃を抑えた立地選定と効率的な人件費管理が、収益性の高さを支えています。
効率的な人員配置が支える安定した店舗運営
私たちの店舗では、効率的な人員配置を徹底しており、スタッフは3名、場合によっては2名で運営することができます。この体制により、人件費を抑えつつ、高い運営効率を実現しています。
また、年中無休で営業しつつ、昼と夜それぞれ3時間の短縮営業を採用しており、1日5時間勤務の形態で、子育て中のママさんにも働きやすい環境を提供しています。この短時間勤務により、長時間労働や休憩時間を必要とせず、働きやすさを実現しています。
メニューを『松・竹・梅』の3種類に限定したことで、未経験者でも短期間で即戦力として活躍できる環境を整えており、採用も非常にスムーズです。
私たちは売上や利益の最大化を追求していません。年間売上4000万円に対して15%の利益が出ていれば十分と考えています。それ以上の利益を追求すると、現行の成功モデルを崩すリスクがあるため、アップセルを仕掛けたり、メニューを増やしたりせず、シンプルで堅実なモデルの維持を最優先にしています。
この「勝ちパターン」を守り続けることが、安定した収益を出し続ける最大の秘訣だと確信しています。
フランチャイズオーナーの選定基準
私たちのフランチャイズオーナーは、飲食業を「夢」として抱きながら、本業として他の事業を持ちつつ参入する方が多く、利益のみを追求する方は少数派です。堅実なビジネスを求める方々が中心となっています。
また、家賃や人件費を抑え、廃棄ロスをほぼゼロにする仕組みを採用しているため、赤字となった場合でもリスクが限定的であり、「守備力の強い業態」がオーナーに安心感を与えています。
加盟希望者は、ブランド価値を維持するため、オーナーの選定は厳格に行っています。選考にあたっては、一般常識やビジネス感覚の有無で判断します。例えば、「ノウハウを学んだら独立していいか?」といった質問をする方は、ビジネスの常識が欠けていると判断し、お断りしています。
さらに、「補助金が降りたら始めたい」という依存的な姿勢の方も選定対象外としています。補助金や融資を活用すること自体は問題ありませんが、それに頼りきりでは主体的な運営力が不足している可能性が高いためです。同様に、「融資が降りたら始めます」という方も同様で、ある程度自力で資金を調達できる方を優先しています。
このように、主体性と常識を備えたオーナーを選定することで、ブランド価値を守りつつ堅実なフランチャイズ展開を目指しています。
フランチャイズオーナーに求める資質と成功の要因
フランチャイズに参加するためには、「本当にこの事業に挑戦したいという」という強い意志が重要です。この事業に挑戦したいという高いモチベーションが成功の大きな要因になりますので、熱意のある方を歓迎しています。
成功しやすいオーナーにはいくつかの共通点があります。まず、事業に対して「自分ごと」として取り組み、楽しむ姿勢を持っていることが挙げられます。「成瀬」というブランドが急成長していることを前向きに捉え、「その一員であること」に意義を感じられる方が成功する傾向にあります。
一方で、「自分のエリアに新店舗を出さないでほしい」と言われたり、「店舗が増えすぎると供給に問題が出るのでは?」といった懸念を抱く方もいます。しかし、ブランドの成長を前向きに捉え、その一翼を担う意識を持つオーナーが成功しやすい傾向にあります。
私たちは、オーナー同士が情報を共有し、意見交換を行えるグループラインを運営しています。このグループには全オーナーが参加し、私自身もサポートに関わっています。日々の運営に関する質問や成功事例の共有が行われ、このコミュニティが成長を支える重要な役割を果たしています。
国内外の店舗展開と出店戦略
現在、私たちは国内に283店舗、海外に2店舗を展開しています。国内市場では、最終的に約400店舗が上限と見込んでおり、まだまだ成長の余地があると考えています。
都市部では駅近の立地で、集客力を重視している一方、地方エリアではロードサイドの物件が主流となります。特に、20~30席程度の小規模な居抜き物件が理想的ですが、これらの物件は数が限られています。
物件探しは本部と加盟店が連携して行い、公式ホームページの専用フォームを活用して全国から情報を収集しています。全国の不動産業者から寄せられた物件情報を本部が確認し、加盟店に情報を提供しています。一方、加盟店も地元で物件を探し、本部と情報を共有することで、効率的な物件選定を実現しています。
エリア選定については、出店計画では人口規模を基準に、人口1万人あたり1店舗を上限として出店計画を立てており、人口規模や地域特性を考慮した戦略で、適切な店舗数を設定しています。
今後の展望としては、国内での店舗拡大を進めつつ、海外展開にも積極的に取り組み、新たな市場を開拓したいと考えています。国内では約400店舗を目標に事業を拡大し、海外では成長市場を見据えて事業基盤を構築することで、持続可能な成長を目指していきます。