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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、株式会社カチアリ 代表取締役の有村壮央さんです。一人焼肉を広めた「焼肉ライク」の元代表として活躍し、現在は飲食業界向けのコンサルティング事業を展開。独自の視点と実績をもとに、新たな価値創造に挑んでいます。
一人焼肉という新しい業態を開発し、「焼肉ライク」を最大93店舗に拡大させた経緯、その中で直面した設備コストや来店頻度の課題を克服するための取り組み、さらに海外展開における成功と国内市場での課題、そして業態の進化に向けた柔軟なマーケティング戦略について、3回に分けてお届けします。
第1回は、「焼肉ライク」の成長秘話や、西山塾で得た学び、新しい挑戦への背景などについてお送りしました。
第2回は、一人焼肉の課題として挙げられる来店頻度や設備投資の問題、さらには吉野家に学ぶ業態進化のヒントなどについてお送りしました。
第3回は、国内外での展開の可能性や立地選びの課題、ターゲット層の多様化を進める具体的な戦略についてお送りします。
この記事の目次
徹底的な競合分析が生む革新
西山さんは、マーケティングにおいて徹底的な競合分析を行います。「焼肉ライク」を立ち上げでは、競合を他の焼肉店ではなく、「似た利用動機を持つ業態」と定義し、その代表例が「いきなりステーキ」さんでした。競合店舗がどれくらいの売上を上げているのか、収益構造はどうなっているのか、利用者がどのような動機でどれくらいの金額を使い、何分間滞在しているのかなどを細かに調査しました。
これらの情報をもとにして、「次に狙うべきポイント」を明確にします。たとえば、冷蔵庫のストック量を何日分にするか、物流の仕組みをどう整えるか、といった具体的な運営方針を、時間をかけて策定していくのです。競合分析の際、西山さんが特に重視するのは「お客様の利用動機」です。仮説として「こういう使われ方をするお店が必要だ」という視点を立て、それをもとに市場を観察します。
たとえば、いきなりステーキさんでは、単価2000円で滞在時間が約20分というデータから、「良いお肉を短時間で手軽に食べたい」という動機があると考えました。しかし、ステーキは厚切りで調理するためロスが出やすく、職人のカットや焼きの技術が必要という課題があります。そこで、職人依存が少なくロスの少ない「焼肉」という形態に注目しました。
焼肉は既にカットされており、ロスが少ないうえ、お客様自身が焼くため、調理ミスもありません。さらに、焼肉市場はステーキ市場の4倍の規模を持つため、この形態であれば効率的かつ満足度の高いサービスを提供できると考えたのです。
新たなターゲット層に応じた施策の展開
次にチェックする対象として挙げているのは、肉定食を主力商品とするお店や、焼肉屋の売れているランチメニュー、さらにはジンギスカン業態などです。これらの店舗は夜の営業形態こそ「焼肉ライク」と異なるものの、ランチタイムの客層や動向が似ている場合が多いため、詳しく視察し分析を行います。
当初、「焼肉ライク」では、当初の想定顧客として30代から40代のビジネスマンをペルソナに設定していました。性別を問わず、短時間で手軽に美味しい焼肉を楽しみたい層をターゲットとし、特に忙しいランチタイムの利用を想定していました。
しかし、店舗数の増加に伴い、ターゲット層の拡大が議論されました。西山さんは、その広げ方について、現在の利用状況から、新たな可能性が見込まれる層を見つけ、それに応じた施策を検討します。
たとえば、当初想定していなかった大学生のような若年層が多く来店することが分かった場合、それを新たなターゲットとして取り込む方法を模索します。そして、「ここをどうホールドしていくか?」という視点で、ターゲット層を徐々に拡大していく手法を取っています。
お客様の動機に応じた柔軟な対応
このようなターゲット拡大の際には、年代だけでなく、利用動機に注目することが重要です。たとえば、ダイエット目的で肉だけを食べたい方、大食いメニューに魅力を感じる方、高級和牛を求める外国人観光客など、利用動機はさまざまです。その動機に応じて、ジャンキーなメニューを追加したり、インバウンド需要に応じた高級和牛を提供したりと、柔軟な施策を検討します。
特に重要なのは、「お客様が何を求めて来店しているのか」という利用動機です。30代のサラリーマンや外国人観光客といった属性はあくまで結果であり、その背後にある動機を見極めることが重要です。この動機をもとに、どの層を拡大するかを判断し、具体的な施策につなげています。
では、動機をどう見つけるのか?西山さんは、自ら店舗に張り付くわけではなく、主にアンケートを活用します。ただし、アンケートを実施する際には、事前に仮説を立てることが重要だと考えています。たとえば、「この層が来店しているのではないか」「その層は何を求めているのか」といった仮説をもとに、アンケートを設計します。
具体例として、「焼肉ライクと他のお店を選ぶ際に迷うお店はどこですか?」といった質問を用意します。迷う候補を明らかにすることで、お客様が求めるものがより具体的に見えてきます。こうして得られた情報をもとに、改善策や新たな展開を計画し、次の成長につなげています。
業態進化と持続的成長を支える
現在、私は「焼肉ライク」を辞め、さまざまな企業のサポートをしています。具体的には、大きく分けて「経営管理」「業態づくり」「フランチャイズ展開支援」の3つの分野でコンサルティングを行っています。
業態づくりでは、ゼロから新しい業態を創出するのではなく、クライアントが既に持つ業態をどのように展開し進化させていくかを支援することが中心です。たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や物流の最適化など、業態全体の効率や競争力を高めるための具体策を提案しています。クライアントと戦略を練り、具体策を提案しています。
フランチャイズ展開の支援では、地域特性を考慮し、既存の店舗モデルをどのように拡大するかなど、運営モデルやマーケティング戦略を設計します。こうした取り組みを通じて、クライアント企業の成長を支援し、持続可能な発展に貢献することが、現在の私の仕事となっています。
