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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、人生で初めての就職が109のショップの店長。そして、新橋の居酒屋でのアルバイトから経営者、現在は株式会社ドムドムハンバーガーの代表取締役社長をされている藤﨑さんです。
1回目の今回は、ドムドムハンバーガーの代表取締役に就任されるまでの経緯やドムドムハンバーガーの再生についてお送りします。
この記事の目次
実は日本初のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」
ハンバーガーチェーンのドムドムは現在、全国に29店舗を展開しています。(※2022年8月時点)うち1店舗はドムドムハンバーガーPLUSという少し高価格帯の店舗です。
創業は1970年で、実は日本で一番古いハンバーガーチェーンになります。
日本で一番古いハンバーガーチェーンといえば、マクドナルドと思われる方もいらっしゃると思いますが、ドムドムハンバーガーの方が1年先にオープンしているんです。
最初はダイエーの社長 中内さんが「日本に新しい食文化を紹介したい」ということでオープンされました。
本当はアメリカから持ってこようと考えられたようですがうまくいかず、ならば日本生まれのバーガーチェーンを作ろうと「ドムドムハンバーガー」を作られました。
一時期は全国に多くの店舗がありましたが、マクドナルドやモスバーガーなどに押され、2017年に私どもドムドムフードサービスが譲り受ける時には36店舗まで減っていました。そこからさらに縮小させ、現在に至っています。
最近は、懐かしさとSNSとがうまくマッチングしたことにより話題にしていただいており、筋肉体質にしてこれから攻めに入っていくぞ、と考えているところです。
専業主婦からのキャリア転換、最初は渋谷109のアルバイトから
最初に少し、私の経歴をお話しさせていただきます。私は高校卒業後早くに結婚し専業主婦をしていたのですが、39歳の時に主人が体調を崩したため、私が家計を支えなければならない状況になってしまいました。
私はそれまで就職したことがなく、どこに勤めに行けばいいかもわからなかったのですが、友人のお母様が経営されている店を手伝ってみないかと誘っていただき、渋谷109の中にある10坪ほどのショップで働かせていただくことにしました。
渋谷という街は学生時代から通っていた街でもあり、ギャル系になる前の109をよく知っていましたので、そういった安心感があったことや、ファッション関係も楽しそうだなということで店長として働くことにしました。最初はショップ経営のイロハも分からず、どのように売上を上げていけば良いのかわかりませんでしたが、なんとか5年間で年商を倍にすることができました。
毎日の売上記録を店長ノートにメモしていた
店長になってからは、毎日ノートを書いていました。今思い出すと笑ってしまうような内容です。
例えば、店のレジというのは1日の最後に時間帯売上などを出すことができるのですが、それすら分かっていなかったので「何時に何人来て」「売上がいくらか」というデータを1時間ごとにレジから打ち出し、それを全て時間帯ごとの売上メモとして書いていました。
そしてそのデータを元に1時間ごとの売上を分析し、スタッフが多すぎるとか、ラック1台の1日あたりの売り上げを計算して「このラックは無駄じゃないか」、違うラックの方が売れているから「これを増やせばもっと売り上げが上がるのではないか」などという事を考えていました。
こまかな仕入れで流行をつかむ?新鮮な店づくり
109が良かったのはお客様の絶対数が多いということです。また、渋谷のカルチャーをわかっているスタッフと仲良くなれたのも良かったですね。働いている女の子たちがすごく優秀で、彼女たちをリスペクトできましたし、意見も聞くことができました。
しかし、小さなショップでは流行がわかっているだけでは難しいです。その当時は私が仕入れもやっていたのですが、在庫を持てないためプレマーケーティングが必要で、こまめな仕入れとこまめな販売に努めました。
具体的には、まず朝一で問屋に仕入れに行って赤と白と黒の洋服を各6着買ってきます。そうすると11時位には商品を陳列でき、その日の夕方までにはこの商品が売れる、この商品は売れないということがわかります。
色のバランスまでわかりますので、バランス通りに仕入れをします。黒が一番売れて、次に黄色が売れたとすると、その比率に合わせて仕入れをするのです。
そして、その割合から1日に売れる量がわかるのですぐにリピートするという、こまめな仕入れと販売により商品の回転を良くすることで新鮮なお店を維持します。
クイックで買い、クイックで売って差別化を目指す
また、その当時は中学生から高校生ぐらいが一番買ってくださっていたと思うので、安価であるということが大切でした。安価にするには仕入れを安くすることが重要で、ロスを出さない仕入れをすれば、安くものを売ることはできます。
ブランド品などは在庫を持つことも加味して値付けをされていると思いますが、私どもは「クイックで買って、クイックで販売する」、ショートスパンでやっていくやり方で安くできたので、差別化に繋がったのではないかと思います。
あとは、スタッフです。良い接客をすれば2度3度と来てくださるお客様もいらっしゃいますし、良い接客をしてお客様に認めていただくと、スタッフのやる気や気持ちがどんどん前向きになります。
結果として最初にお話ししたように5年間で年商を倍にすることができましたが、オーナーさんの経営方針が変わってしまいショップを辞めることになりました。
居酒屋のアルバイトから経営者へ
ショップを辞めた当時44歳になっていましたが、家庭の状況は全く変わっておらず、むしろもっと悪い状況になっていました。私が家族を守るために、何かをする必要がありました。
そして、すぐに収入が無くなると困りますので、何ができるのだろうかと考えて料理で仕事をすることにし、居酒屋さんでのバイトを始めました。
バイトをするお店は人が多いところの方が安定していると考えて、新橋の居酒屋さんで働くことにしました。居酒屋でアルバイトをしているうちに常連さんが付いてくださるようになり、常連のお客様から「自分で居酒屋やれば」というアドバイスを受け、新橋で居酒屋を経営することになりました。
お店は古いビルの地下1階、8坪ぐらいの小さなお店でした。新橋はお客様も多いかもしれませんが、同時に競合も多い場所です。そのためいろいろな工夫が必要だと考え、サッシだけで外から丸見えという特徴のあるお店を作りました。
食器も一つ一つ丁寧に選びましたし、アイスペールを竹で作ったり、グラスに関してはコストを考えるとビール会社さんからいただいたものを使うのが良いのでしょうが、陶器製で泡が細かく、ビールが一番美味しいと感じられるようなものにしたりと、細部にまで気を使いました。
他にも、お料理に関しては全て自分がメニュー化していましたが、定番メニューはレシピ化し、いつも同じものが出せるように気をつけました。店の管理や接客、メニューの設定など、手間もお金もかかって大変ですが、そういったことに夢中になれるのです。
予約の取れない店になるために大切なこと
費用対効果は後から考えれば良いと思っています。「いくら必要だからできない」ではなく「いくら必要だから、いくら儲ければよい」と考えた方が良いと思います。
まず、お客様に来ていただかないと始まりませんし、さらにお客様に良いと思っていただかないと始まりません。
ですから、最初から費用対効果だけを考えるのは良くないと当時から考えていて、その考え方は今も変わってはいません。おかげ様で、居酒屋はオープンして半年で予約が取れない店になりました。