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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、株式会社アドウェイズの取締役会長であり、同時に「オールドルーキーサウナ」の店長を務める岡村陽久さんです。インターネット広告業界で成功を収めた後、サウナ業界に新しい風を吹き込み、ITの力を活用した無人運営のサウナを展開しています。
岡村陽久さんが、株式会社アドウェイズの取締役会長としてのキャリアを経て、新たに「オールドルーキーサウナ」を立ち上げ、ITを活用した無人サウナ運営という独自のビジネスモデルを展開するまでの経緯や、サウナ事業への挑戦、そして今後の展開について、3回に分けてお送りします。
第1回は、株式会社アドウェイズの創業、上場、そしてサウナ事業を始めるに至った経緯についてお送りしました。
第2回は、「オールドルーキーサウナ」の無人運営の仕組みや、徹底したマナー管理についてお送りします。
この記事の目次
ベテランのお客様から得た無人サウナのヒント
「熱々、キンキン、ガラガラ」のコンセプトに共感し残ってくださったベテランのお客様は、非常にマナーが良く、清潔に施設を利用してくれています。そのため、清掃以外のオペレーションがほとんど不要で、管理にかかる手間も少なく済んでいます。この状況を見て、私は「無人で運営できるサウナが作れるのではないか」と考えるようになりました。
実際に、六本木店の運営が順調に進んだことを受けて、続けて渋谷、新宿、銀座にも「熱々、キンキン、ガラガラ」の無人店舗をオープンしました。しかし、東京という大都会でも「熱々」のサウナを楽しむお客様は限られていることがわかりました。結果として、六本木店以外の店舗は赤字を抱えていました。そこで、一般利用を解禁し、利用料金を2000円から2500円に設定しました。現在では、渋谷、新宿、銀座の店舗では、会員と一般利用者の両方からの収益でようやくギリギリの利益が出る状況になっています。
サウナ事業には、1店舗あたり1億円以上の設備投資が必要です。また、駅から近い立地で家賃も高額です。さらに、「熱々、キンキン」を維持するための水道光熱費が大きなコスト負担となっています。そのため、人件費をかなり抑えているものの、減価償却費や家賃、光熱費が重くのしかかっています。当初は3年で初期投資を回収できると見込んでいましたが、現時点ではまだ回収の見込みが立っていません。
「熱々」と「キンキン」を残しながら新しいエコノミーサウナを目指す
通常、他のサウナ店は5年ほどで初期投資を回収していることが多いです。それは、多くのサウナが非常に混雑しているからですが、私のお店は「ガラガラ」でギリギリの経営を続けているため、回収の見込みが立っていません。
こうした状況を改善するため、今後はオールドルーキーサウナの「エコノミー版」の開発を考えています。サウナの「熱々」と水風呂の「キンキン」はそのまま維持しつつ、他のコストをできる限り削減する計画です。初期投資を半額の6000万円程度に抑え、サウナ室と水風呂には豪華さを保ちながら、それ以外の部分はチープに仕上げる予定です。
また、場所としては、例えば駅から徒歩10分程度の家賃が安いエリアを検討しています。新店舗ではアメニティを比較的安価なものに切り替え、1枚40円ほどかかるタオルも、小タオル2枚までに制限する予定です。
このエコノミー版では、「熱々」と「キンキン」という特徴を維持しながら、オールドルーキーサウナと銭湯の中間に位置する、より銭湯に近いサービスを目指します。
ハイエンド店舗を支えるお客様への思い
オールドルーキーサウナは、会員制だけでは十分な利益を出すことが難しく、一般利用の方が収益性は高くなっています。現在、月額18,700円で会員制を運営していますが、多い方では月に30回ほど利用されるため、1回あたり600円程度しか収益が上がりません。
とはいえ、提供しているサービスの質に対して会費は比較的安いため、会員を集めることは非常に簡単でした。六本木店が1店舗しかなかった時期には、退会待ちの状態が発生し、入会までに2ヶ月から半年ほどお待ちいただくこともありました。しかし、「熱々、キンキン」というコンセプトにしたことで、ターゲット層はサウナのベテランに自然と絞られてしまいました。
会員費の値上げについて議論したこともありますが、正直なところ、私は会費を上げたくありませんでした。それは、会員の皆さんが非常に丁寧に施設を利用してくださっているため、そうしたお客様に値上げをお願いすることが心苦しかったからです。そのため、会費に関しては私たちの経営努力で対応していきたいと考えています。
一般的には、月会費を1万円ほど引き上げたり、1回の利用料に1,000円を上乗せしたりする手段が取られることもありますが、私の哲学としてそのような方法は行っていません。
今後は、既存のハイエンド店舗はトントンで運営できる状態で運営し少しだけ利益を出しつつ、フラッグシップ店舗として維持し、エコノミー版の店舗で利益を確保できればと考えています。
現場に立って見つける課題
お店の立ち上げ時には、店長として私自身がすべての清掃を行っていました。どこが特に汚れやすいか、週に一度のメンテナンスが必要な箇所や、毎日掃除すべき箇所はどこかを正確に把握するため、実際に自分で清掃を行いました。また、タオルの配置や扱いについても、どうすれば最も効率的に作業ができるか、一つひとつ試行錯誤しながら研究しました。
この経験から、最も効率的な清掃方法を確立し、その後はアルバイトの方に作業を引き継ぐことができました。通常のやり方では1時間半かかる清掃も、効率的なやり方を教えることで、45分で終わらせることが可能になりました。
同じ作業でも、これほど大きな時間短縮ができるのです。これは、店舗数が200店舗、1000店舗と増えた時に非常に大きな影響を与えることになるでしょう。だからこそ、清掃のプロセスをしっかり整えることが重要です。また、現場に立たなければ分からないトラブルや課題も多く、実際に現場に立つ経験が非常に役立ちました。
忘れ物対応オペレーション
オールドルーキーサウナでは、忘れ物への対応オペレーションも工夫しています。深夜にスタッフが清掃に入る際に、忘れ物の確認も行う仕組みを導入しています。
例えば、月曜日に忘れ物があった場合は「月曜日のロッカー」、火曜日に忘れ物があれば「火曜日のロッカー」に保管し、1週間以内に取りに来なければ処分する、というルールを設けています。このように、人手を必要とするオペレーションをシステム化し、効率的に対応しています。
忘れ物をしたお客様から「青いサウナハットはありますか?」といった問い合わせが来ることがあります。通常のサウナであれば、店員がその場で探して対応するのが一般的ですが、オールドルーキーサウナは無人で運営しているため、そのような対応は行っていません。そのため、「申し訳ございませんが、ご自身でお店に来て確認していただけますか?」とご案内する形にしています。
IoTデバイスの活用で解決するトラブル
サウナ運営では、例えばシャワーのお湯が出なくなることがあります。これはガス給湯器が不着火を起こすことが原因で、ボタンを押して再起動すればすぐに解決できますが、そのためだけにスタッフがわざわざ現場に行くのは避けたいものです。
そこで、私たちは「スイッチボット」というIoTデバイスを導入しています。このデバイスが自動でボタンを押してくれるため、スタッフが現場に行かずとも問題を解決できます。さらに、ボタンが確実に押されたかどうかは、監視カメラで確認できる仕組みになっています。このように、サービス内容を工夫し、対応方法を見直すことで、ITの力を活用してほとんどのトラブルを解決できると考えています。
店内には「これはこうしてください」「あれはこうしてください」という張り紙も多く掲示しています。例えば、タオル返却の場所では、バスタオルが詰まることがありますが、「詰まった場合は気にせず思いっきり押し込んでください」と案内を表示しています。
このように、小さな工夫とIT技術を組み合わせることで、無人サウナでもスムーズに運営できる仕組みを整えています。
第2回は、「オールドルーキーサウナ」の無人運営の仕組みや、徹底したマナー管理についてお送りしました。
第3回は、今後の展望や新しいエコノミー版の「オールドルーキーサウナ」についてお送りします。