「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、花を贈れるサービス”花キューピット”を展開する花キューピット株式会社代表、𠮷川登さんです。昭和28年創業、来年で70周年になるという花キューピット。実は社長の𠮷川さんは元々起業をしてIPOをし、上場企業の社長を10年以上やった経験の持ち主です。そんな人が花キューピットに惹かれたのは一体なぜなのでしょうか。言われてみるとほとんど知らない人も多いであろう花業界について深ぼっていきます。
第1回目は𠮷川さんが花キューピットの社長になった経緯についてでした。第2回目は、花キューピットのビジネスモデルと広告戦略についてでした。第3回目の今回は、お花屋さんを始めるにあたって注意すべきこと、ECをやるポイントなどについて伺っていきます。
この記事の目次
技術面から経営面まで…!お花の学校を運営
私たちの親会社はフラワーカレッジという学校を持っています。そこは日本で唯一お花屋さんになるための学校です。
お花の教室は生花やフラワーアレンジメントが普通だと思うのですが、それだけではなく仕入れなどの経営のこともやっていきます。
そこに通って一年ほど勉強すると、一通り仕入れのこともわかり、デザインのこともわかり、産地のこともわかります。そこから自分の店を出したり、あとは他の花屋さんに就職して独立していきます。
花の咲き具合も調節して売る
お花は満開のものを売ればいいのかというと必ずしもそうではなく、咲いているのが好きな方も入れば、咲いていくのを見たいという方もいます。
だから花屋は固いツボミの段階で買ってきて冷蔵庫に入れて保管しておき、お客さんの理想のタイミングでお渡しできるように調節しています。
この辺りもよくヒアリングをして、状況と嗜好を整理することが重要です。
「いつ何時でもいい花をたくさん揃えておく」名店の心構え
toB向けの名店は、あまりマーケティングをしません。toB向けというのは、主に冠婚葬祭に際して花を用意することになるのですが、人の生き死にをコントロールすることはできません。
駅前でチラシをまいても人が結婚したり亡くなったりする訳ではありません。
だからいい花屋さんはいつ何時でもいい花をたくさん揃えておいて、必要な時にすぐ持っていけるようにしているのです。
ルーティーン的に毎年誕生日はきますし、結婚記念日やクリスマスもありますから、地域密着でできるだけいい花を揃えていい経験をしてもらうことが大切だと思います。
いきなり店舗は持つな!お花屋さんの始め方。
お花屋さんを始めるなら、いきなりお店をもって開業するのではなく、先にお客さんをつけておくといいと思います。
私の知っている中では、初めは無店舗で知り合いなどから注文を受けて、評判になって広がっていくタイミングで店舗を持つ人が多いです。
ECはやるべき!ただし、マーケティングツールとして使うのがおすすめ
ECはできればやるべきです。今は簡単にできるいろんなツールが出てきていますし、いいプラットフォームもあります。
ECをやることによって、マーケットがどう動いているかとか、お客さんがどういう反応をしているかなどの反応が非常に近くなります。
ただ、ECさえやれば勝手に売れる、というほどは甘くありません。ECをやってものすごく儲けようという考えで始めると失敗すると思います。
本気でやるのならお金をかけていかないと駄目で、リスティングも含めていろんなやり方を試してみなくてはいけません。ある程度名前が売れてくれば自然検索でとっていくこともできると思いますが、はじめは厳しいです。
ただし注意点があって、お花は個性が出しにくい商品です。スイーツなら「ここのお店のケーキが美味しい」などお店ごとの個性も出しやすく認知もされやすいのですが、「このお店のひまわりはいいよね」などの形で認知されることは非常に難しいです。
だからお花屋さんにおけるECの立ち位置は、自分のところの商品を自分なりのやり方で出すことによって、今までとは違うお客さんがアクセスしてきて、その人たちがどのような反応をするのかを把握するという、マーケティングツールとして利用するのがいいのではないかと思います。
お花屋さんでは、誰も不幸にならない
お花屋さんを見ていると、私は幸せになります。お客さんはみんな感動を求めてやってきていて、誰も不幸になりません。
いろんなところでお花が活用されていて、そこには感動があり、それを生む種みたいなものを売っているようなものだと思っています。お花屋さんをやっている方々をたくさん見ていますが、皆さん本当にピュアですごくいい人たちなんです。
ずっと何十年もお花屋さんをしているからこうなったのか、元々そういう人がお花屋さんになるのかはわからないのですが、なんにせよすごく幸せを感じられるような商売であることには間違いないと思います。