セレクトショップを開業するには、段階を踏んで準備を進める必要があります。また、店舗形態によって開業後の戦略等が変わるので、しっかり吟味した上で開業に向けて取り組むことが大切です。
本記事では、セレクトショップの開業に必要な資格・届出や開業の流れについて紹介します。セレクトショップの開業を目指している方は、最後までチェックしてください。
この記事の目次
セレクトショップとは
そもそもセレクトショップとは、オーナーが独自に選定した商品を取り扱うお店のことです。ブランドやメーカー、アイテムをオーナーが自由に揃えられるので、オーナーが理想の店舗をつくることができます。
たとえば、アパレル商品を中心に展開しながら、雑貨や食品を置くことも可能です。小売業が扱う商品は、ひとつのジャンルに統一している場合が多いですが、セレクトショップとして開業すればジャンルに囚われずに商品展開できます。
独自性のある店舗づくりが可能で、自身の感性がマッチする客層を獲得できれば、リピーターが生まれる可能性も高いです。自分のセンスで展開したい商品をジャンルに囚われずに選びたい方におすすめの業態といえます。
セレクトショップ開業時に必要な資格・届出
セレクトショップ開業のために、必要な資格や届出がいくつかあります。取り扱う商品によっては、必要な資格が異なるので注意しなければなりません。開業までに何の手続きが必要で、どの資格を取得しなければならないかについて紹介します。
開業に関する届出
セレクトショップに限らず、新たに開業する場合は、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出が必要です。開業届を提出することで、屋号付きの銀行口座の開設や青色申告の利用ができます。国税庁のホームページでダウンロードできるので、事業開始日から1ヶ月以内に提出しましょう。
また、所得税の青色申告承認申請書を提出することで、最高で65万円の青色申告特別控除が受けられます。1月16日以降に開業した場合は、事業開始日から2ヶ月以内に所轄税務署に提出しなければなりません。
化粧品を取り扱う場合に必要な資格
化粧品を取り扱う場合は、仕入れルートによっては申請をしなければなりません。以下のケースに該当する場合は、化粧品製造販売業許可の申請が必要です。
- 自社で製品の企画し、国内製造工場に生産を委託した化粧品を自社名で販売する
- 化粧品製造許可を得ている他社に輸入を委託し、自社名で出荷する
- 自社で計商品を製造・輸入し、自社名で出荷する
なお、以下のケースに該当する場合は、申請は必要ありません。
- 国内製造の製品を国内(メーカーや卸)から仕入れる
- 海外製品を国内(輸入元や卸)から仕入れる
化粧品をどのルートから仕入れるかで化粧品製造販売業許可の申請の有無が決まります。判断が難しい場合は、各都道府県の薬務課に相談してみましょう。
中古品を取り扱う場合に必要な資格
中古品を取り扱う場合は、古物商許可を取得する必要があります。たとえば、以下のケースに該当する場合は、古物商許可の取得が必須です。
- 古物品を販売目的で購入して販売する
- 壊れた古物を買い取った後に修理して販売する
- 買い取った古物品を分解し、その部品を販売する
- 買い取った古物品を別の商品と交換する
- 買い取った古物品のレンタルサービスを行う
- 古物品を委託販売する
つまり、古物品を介して収入が発生する場合に古物商の許可を取得しなければなりません。古物商の許可申請は、営業所の所在地を管轄する警察署で行えます。許可申請書と添付書類、手数料を持参して手続きを進めましょう。なお、全く使用されていない商品でも一度人の手に渡ったものも中古品扱いなので、新品として販売しないように注意してください。
セレクトショップは実店舗とオンラインどちらで開業する?
セレクトショップを開業する方法として、実店舗とネットショップの2種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、一概にどちらの方がよいとは言えません。理想は両方で運営することですが、どちらか1つに絞りたい方は、今後の方針の参考にしてください。
実店舗で開業するメリット・デメリット
実店舗で開業するメリットは、顧客から信頼してもらいやすい点です。実際に商品を手にとって状態を見てもらえるので、安心して購入してもらえます。また、商品の魅力が伝わりやすく、顧客に応じてきめ細かい対応を心掛けることで、売買が成立しやすくなるでしょう。
デメリットとしては、実店舗を構える際にはまとまった資金が必要で、開業に至るまで長い時間がかかるという点があります。また、営業時間内でしか販売実績を作ることができず、集客範囲にも制限がかかるのも難点です。人件費や固定費等の支出も発生するので、コスト管理を徹底する必要があります。
ネットショップで開業するメリット・デメリット
ネットショップとして開業することで、開業費用を抑えることが可能です。店舗を構える必要がなく、低コストでオンラインショップを開始できるため、少ない初期投資で始められます。また、24時間体制で商品を販売することができ、かかるランニングコストも少ないので、効率良く利益を出すことができるでしょう。
一方で、商品が売れるたびに梱包や発送作業が必要になり、実店舗とは異なる業務工程が発生します。送料を売価に入れない場合は、送料分を負担しなければなりません。さらに、開業当初は実績や信用がないことから、宣伝活動に力を入れて流入数を増やす必要があります。ネット広告やSNSを上手く活用しなければならないため、Webマーケティングの知識が必要です。
セレクトショップの開業費用
セレクトショップの開業時に必要な費用の目安を紹介します。実店舗とネットショップでは、必要な開業資金は異なります。どのくらいの資金を集めればよいか分からない方は参考にしてください。
実店舗の開業費用
実店舗の開業に必要な金額は、一般的に400~1,000万円といわれています。主に以下の項目が初期費用として発生します。
- 物件取得費
- 外装・内装工事費
- 空調費
- 設備・備品代
- 仕入れ代
- 広告費
特に物件取得費と工事費は高い割合を占めるので、少しでも抑えたい場合は、店舗の立地とデザインを吟味する必要があります。また、開業から順調に利益を得られるとは限らないため、家賃や人件費などのランニングコストも半年分は確保しておきましょう。
ネットショップの開業費用
ネットショップの場合は初期費用を抑えられるので、開業費は500万円程度あれば十分でしょう。無料で出店できるサービスが増えており、工事費等も発生しないため、上手くいけば仕入れ代や広告費のみに抑えることができます。パソコンやネット環境がない場合は、追加で費用は発生しますが、それでも10万円あれば揃えることも可能です。
ランニングコストとして、サーバー代やドメイン代、ソフトウェア代、梱包代などが発生しますが、実店舗の家賃や水光熱費に比べれば安いので、月々の負担も軽減できる点が魅力です。従業員を雇用する場合は、数ヶ月分の人件費分は確保しておくと安心でしょう。
セレクトショップを開業する流れ
セレクトショップを開業する流れについて説明します。基本的な流れは以下のとおりです。
- コンセプトを決定する
- 開業時金を調達する
- 仕入れ先を決める
- 出店先を決める
- 備品を揃える
- プロモーション活動をする
実店舗とネットショップの2パターンについて触れているので、計画を立てるときの参考にしてください。
コンセプトを決定する
セレクトショップは、独自性を出すためにコンセプトを確立することが必要になります。コンセプトとは簡単に言えば店舗のイメージのことで、ブランドを確立する上で重要な要素です。店舗に統一感があれば印象が残りやすく、ファン層の確保にもつながります。
コンセプトを決めるときのポイントは、顧客にどんな印象を持たせたいかをイメージすることです。たとえば、「どこよりも安い」「輸入物が揃っている」「オーガニックにこだわっている」など、顧客にどんなことを印象付けたいかを考えましょう。
ざっくりとしたイメージができたら、具体的な顧客層を明確にし、ターゲット層のニーズを深堀していきます。ターゲットになり得る層のペルソナを作成し、年齢や悩み、ライフスタイル等をイメージして、好まれるようなアイテムを考えていきましょう。
開業時金を調達する
開業するためには資金が必要なので、事前に十分な額を調達しておく必要があります。先ほど開業資金の目安を紹介しましたが、まずは独自に開業資金と運転資金をシミュレーションして、実際に必要な資金を算出しましょう。
ネットショップの場合は初期費用がほとんどかからないので、全額自力で用意できるかもしれませんが、実店舗であれば、自己資金のみで補うことが困難な場合があります。
店舗規模が大きく好立地に店舗を構える場合は、数千万円かかることもあるので、金融機関から融資を受けるのが有力です。なお、補助金や助成金をもらえることもあるので、自治体に補助制度がないか確認してみましょう。
仕入れ先を決める
セレクトショップは品揃えが大事なので、仕入れ先もしっかり吟味しましょう。コンセプトに沿ったアイテムが充実している卸問屋を探すのがポイントです。
また、利益を出すためには、原価率を考慮することも重要なので、原価も比較対象にすることがおすすめです。仕入れ数が多くなれば原価の交渉もできるため、なるべく同じジャンルの商品は仕入れ先をまとめるようにしましょう。
出店先を決める
開業資金の調達や仕入れ先の選定と並行して、出店先も決めましょう。実店舗とネットショップでは出店方法が異なるため、準備内容も確認しておくことが大切です。どのような準備をしなければならないのか説明するので参考にしてください。
実店舗の場合
実店舗で展開する場合は、物件選びをしなければなりません。立地をチェックして、ターゲット層の集客に適しているか見極めることが重要です。また、家賃を予算内に収める必要もあるため、時間をかけて理想に近い物件を探しましょう。
物件が決まったら、内装・外装工事を行います。特に内装は、店舗の雰囲気に大きく影響するので、コンセプトに沿った設計を心がけることがポイントです。さらに、商品を魅力的に展開するために、インテリアにもこだわることをおすすめします。店舗のイメージを崩さずに、かつ商品が映えるデザインで揃えましょう。
ネットショップの場合
ネットショップのみで開業する場合は、ECプラットフォームを選定することから始めます。専用のプラットフォームを活用することで、パソコンが苦手な方でも簡単にECサイトを立ち上げることが可能です。ECサイトを立ち上げるには、様々なショップが並んでいるECモールを利用する方法、独自のショップを立ち上げる方法の2パターンがあります。
ECモールとは、具体的には楽天市場やYahoo!ショッピングなどのことで、登録することで簡単に出品することが可能です。しかし、既存のネットショップ内で出店する形になるため自由度が低く、オリジナリティを出すことは難しいでしょう。
一方、独自にサイトを立ち上げる場合は、デザインの自由度が高い点が魅力です。ただし、サーバーやドメインの用意をしなければならず、専門的な知識が必要な点がネックです。どちらもメリット・デメリットがあるので、都合のよい方を選びましょう。ECサイトが決まったら、アイテムごとに商品画像を撮影し、一つ一つ登録をしていきます。
備品を揃える
実店舗で開業する場合は、ショップの営業に必要な備品を揃えましょう。どのジャンルの商品を展開するかで必要な什器が変わります。たとえば、食品を置く場合は冷蔵庫や冷凍庫が必要で、衣類を販売する場合は、ハンガーや全身ミラー等も用意しなければなりません。
また、レジやキャッシュトレイ、タイムカード等も揃える必要があります。営業する上で、何が必要か事前に確認しておきましょう。なお、売上管理や在庫管理を効率よくするために、POSシステムの導入がおすすめです。スマレジでは、セレクトショップに役立つPOSレジを展開しているので、興味のある方はお気軽にご相談ください。
プロモーション活動をする
オープン日が近づいてきたら、プロモーション活動をしましょう。制作したチラシをポスティングしたり、SNSで情報拡散したりするのが一般的です。開店記念として割引セールやポイント還元などのキャンペーンを実施することで、より集客効果を高めることができます。
ネットショップの場合は、いきなり検索エンジンからの流入が期待できないので、積極的にSNSで情報を発信したり、広告を配信したりして、ECサイトになるべく多くの人がアクセスしてもらうことが大切です。開店初日からつまづかないように、しっかりと宣伝活動に力を入れましょう。
セレクトショップの開業準備をしよう
セレクトショップを開業するには資格や届出が必要なので、取り扱う商品に応じて必須の手続きをする必要があります。他の店舗にはない独自性を出せるように、しっかりとコンセプトを決めて、それに合ったアイテムを選定しましょう。スマレジでは、売上管理に便利なPOSシステムを展開しているため、POSレジの導入を検討している方は、チェックしてください。