従業員の労働時間の把握や残業代の計算のために役立つタイムカードですが、どこまで正確に時間の管理をしなければならないのかご存知でしょうか。もし「15分単位で切り捨てしている」という経営者の方がいたら、それは違法行為です。
今回は、タイムカードの15分単位の切り捨てがNGな理由や適切な勤怠管理について、詳しく解説します。知らないうちに違法行為をしてしまわないように、しっかりチェックしておいてください。
この記事の目次
- 勤怠管理の基本情報
- タイムカードの15分単位・30分単位の切り捨ては違法!
- 従業員の雇用形態によっても勤怠管理の方法は異なる
- 正確に勤怠管理を行うためのコツ
- 勤務時間や労働時間は法律に基づいて適切に管理することが大切!
勤怠管理の基本情報
はじめに、勤怠管理の基本的な情報についてみていきましょう。「そもそも勤怠管理とは何なのか」「なぜ勤怠管理を行わなければならないのか」などを知っておくことが、適切な勤怠管理の第一歩となります。
勤怠管理について覚えておくべき点を、以下で解説します。
勤怠管理とは?
勤怠管理とは、従業員の出退勤や休憩の時間・有給休暇の取得状況・欠勤や遅刻の有無など、労働状況を把握して管理することです。労働時間を正確に把握しておかなければ、給与や残業代が正しく支給できません。
また、特定のスタッフが働きすぎていたり、遅刻や欠勤を繰り返す従業員がいたりするケースもあるので、タイムカードなどで各従業員の労働時間を把握することは大切です。
勤怠管理を行うべき理由
企業が勤怠管理を行うべき理由のひとつが、従業員の働きすぎの防止です。労働時間を正確に把握して、誰かに負担が集中しないように調整しなければ、過重労働で体調を崩す従業員が出てくるかもしれません。
また、労働基準法によって、原則1日8時間、週40時間を超えて労働させてはいけないと定められています。労働時間に応じて取るべき休憩時間も定められており、適切に勤怠管理を行わなければこれらの対応ができません。
賃金を正確に支払うためにも、勤怠管理が必要です。労働基準法第108条では、従業員ごとに労働日数や労働時間、基本給や手当などを細かく記載した賃金台帳を作成することを義務付けています。
このように、適切に勤怠管理を行わなければ労働基準法違反となる可能性があるので、注意してください。また、勤怠管理を行わず給与や残業代が実際の労働時間分に満たなかった場合、法律違反だけでなく「ブラック企業」として世間からの評判が落ちてしまう可能性もあります。
勤怠管理の問題点
勤怠管理をしっかり行うことは大切ですが、正しい労働時間を把握するのは難しく、ミスが起きやすいという問題点もあります。
例えば、フレックスタイム制やテレワークを導入している企業の場合、実際の労働時間を正確に把握するのは難しいでしょう。多様な働き方を導入している企業ほど、勤怠管理にかかる負荷が大きくなります。
従業員数の多い企業では、集計作業も大変です。紙の台帳などで管理していると、手作業によるミスも起きやすくなります。タイムカードを導入している場合でも、打刻のし忘れがあると正確な時間が把握できず、勤怠管理に支障が出ます。
正確に勤怠管理をしなければ大きなトラブルに発展する可能性があるうえに、ミスが起きやすく管理者の負担が大きくなるのが、勤怠管理の課題です。
タイムカードの15分単位・30分単位の切り捨ては違法!
労働時間の管理を簡単にするために、タイムカードの15分単位・30分単位の切り捨てを行っている企業もあるかもしれません。しかし、それは違法です。
ここでは、労働時間の切り捨て・切り上げについて、詳しく解説します。
労働時間は1分単位で計算することが原則
労働時間は、原則として1分単位で計算しなければなりません。なぜなら、労働基準法第24条で「賃金全額払いの原則」が定められていて、15分単位や30分単位の切り捨てはこれに違反するからです。
もし就業規則に15分や30分単位で切り捨てる旨の記載があったとしても、この場合は就業規則よりも労働基準法のほうが優先されます。そのため、労働時間の切り捨ては原則行ってはいけません。
労働基準法24条に違反すると罰金が課せられる可能性があり、労働基準監督署から指導や勧告を受けるケースもあります。
1カ月間の端数処理は切り捨てや切り上げが可能
労働時間は原則1分単位の管理が必要ですが、例外として1カ月の労働時間の合計に端数が出た場合には、切り捨てや切り上げが可能です。具体的には、30分以上1時間未満の端数は切り上げ、30分未満の端数は切り捨てることができます。
ただし、労働時間の切り捨て・切り上げが認められているのは月給もしくは年俸で働く従業員のみです。時給や日給で働く従業員の労働時間は1分単位で計算しなければならないので、注意してください。
従業員の打刻するタイミングが遅れた場合は、ケースバイケース
タイムカードで勤怠管理を行っている場合、遅刻や打刻忘れなどで打刻するタイミングが遅れてしまうケースがあります。この場合でも、1分単位で計算するのが原則です。
ただし、遅刻や打刻ミスが多い従業員がいた場合は、別途就業規則で定めるルールに則った処理が可能なケースもあります。例えば、「遅刻が○回を超えた場合は減給」といったペナルティの記載がある場合です。
タイムカードの打刻が遅れたときの対応はケースバイケースなので、就業規則にタイムカードに関するルールを定めておくと良いでしょう。
従業員の雇用形態によっても勤怠管理の方法は異なる
勤怠管理の方法は、従業員の雇用形態に応じた対応が必要です。特に、正社員・派遣社員・アルバイトなど複数の雇用形態の従業員が混在している場合は注意してください。
フレックスタイム制やテレワークを導入している場合も同様です。勤務形態が不規則な職場では、労働時間をどのように管理するのか基準を明確にして、従業員にも周知しておきましょう。
アルバイトやパートといった時給で働く従業員は、毎日の勤務時間がバラバラなので、柔軟な対応が求められます。勤務する時間帯によって時給が変動する場合もあり、より細かい管理が必要です。
正確に勤怠管理を行うためのコツ
毎日の勤怠管理に苦労しているという事業者の方もいるでしょう。ここでは、正確に勤怠管理を行うためのコツを紹介するので、自社に合った方法を試してみてください。
エクセルを使ってタイムカードの集計をする
ひとつは、エクセルを使ってタイムカードの集計をするという方法です。個別に用意したエクセルファイルに各自で出退勤の時間を入力してもらい、コピペやマクロで管理者が集計します。
エクセルを使った勤怠管理は、手軽に導入できるのがメリットです。自社の用途に合わせて項目などを自由に設定できますし、シンプルなもので良ければインターネット上に公開されている無料テンプレートを活用するという方法もあります。関数やマクロを使えば、手作業で計算してミスが起きる心配もありません。
ただし、マクロや関数の入力を間違えると集計結果も誤った値になることや、従業員数が多くなるほど管理が大変になることなどに注意が必要です。
勤怠管理システムを活用する
より正確に勤怠管理を行うには、勤怠管理システムの活用がおすすめです。勤怠管理システムとは、出退勤時間の記録や労働時間の集計などが行えるシステムです。有給休暇の申請や給与計算まで対応したものもあります。
ICカードやスマートフォンなどで出退勤時間を記録できるシステムもあり、出退勤時間の入力ミスや改ざんも防げます。エクセルや紙の台帳に時刻を記入する方法と比べて、従業員にも管理者にも手間がかかりません。
従業員ごとの労働時間がリアルタイムで集計されるので、月の途中でそれぞれの残業時間をチェックしたり、アルバイトやパートの従業員のシフト調整をしたりするのも簡単です。
勤務時間や労働時間は法律に基づいて適切に管理することが大切!
勤怠管理を適切に行うことは、企業や経営者の義務です。労働基準法に違反すると罰則があるだけでなく、従業員から訴えられるなどのトラブルに発展する可能性もあるので、エクセルや勤怠管理ツールを活用して正確な労働時間の管理を実施しましょう。
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