給与計算は項目が多く、正確な計算が求められます。しかし、計算の項目は決まっているため、あらかじめ準備をしておけば、それほど難しいものではありません。
今回は経理の初心者の方に向けて、給与計算の計算式や必要な準備、注意するべきリスクやおすすめのソフトまで紹介します。給与計算を行う際の参考にしてください。
この記事の目次
給与計算の基礎知識
給与計算は、従業員の毎月の給料を計算する業務です。給料の計算はさまざまな要素が関係するため、事前準備をしっかりと行い、変更点がないか確認しながら計算することが大切です。ここでは給与計算で知っておきたい基本的な知識を紹介します。
給与計算の計算式
給与計算の計算式は、「支給額-控除額=差引支給額(手取り額)」です。支給額は「基本給」「時間外手当」「各種手当」の3つで構成されています。基本給はそれほど変動することはありませんが、時間外手当は毎月変わる手当で、その他手当は会社ごとに異なります。
控除額は「社会保険料」「雇用保険料」「所得税」「住民税」に分けられます。それぞれ計算し、給料から天引きします。所得税は「源泉所得税」とも呼ばれ、総支給額と扶養家族の数で計算方法が変わります。支給額から控除額を引いたものが差引支給額です。
給与計算の事前準備
給与計算は上記の式に基づいて計算しますが、そのためには事前準備が必要です。事前に準備をしておかなければ、正確な計算ができません。ここでは、その方法について詳しく解説します。
就業規則を作成する
就業規則は、従業員に働くルールや労働条件を定めたもので、給与を計算する際にも重要です。10名未満の会社であれば、作成や届出の義務はないものの、就業規則を作っておくと給与計算がスムーズに進みます。
就業規則では給与規定を定めることが多く、基本給や手当の支給方法についても明記されています。特に記載しなければいけないのは、以下の点です。
- 給与の決定方法
- 計算や支払いの方法
- 締め日や支払日
- 昇給についての規則
上記を決めておかなければ、給与計算を適切に行うことは難しくなるでしょう。
従業員の情報を収集し書類を準備する
給与計算をするためには、従業員の個人情報が必要です。例えば、家族構成は所得の控除額に影響し、住所は通勤手当に影響します。必要な書類は以下の通りです。
- 住民税課税決定通知書
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
- 保険料額表および保険料率表
- 源泉徴収税額表
- タイムカードなどの勤怠記録
これらの書類には個人情報を含むものもあるため、適切な管理が必要です。情報漏洩してしまった場合、懲役や罰金が科される可能性があります。
正しく給与計算をする方法
給付計算の事前準備ができたら、給付計算を行います。ここでは正しく給付計算をする方法について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
①支給額を計算する
給与の支給額の計算式は、「基本給+時間外手当+各種手当=支給額」です。それほど変更しない項目もあれば、状況によって変動する項目もあります。各社によって異なるため、事前に調べておくと安心です。
基本給、時間外手当、各種手当がどのような項目なのか、詳しくみていきましょう。
基本給
基本給は、毎月一定期間働くことでもらえる固定した給料です。主に三つの種類があり、種類によって性質が異なります。
- 仕事給型:仕事内容、職務遂行能力、業績、成果などによって基本給が決まる
- 属人給型:年齢、学歴、勤続年数などによって基本給が決まる
- 総合給仕事給型と属人給型を組み合わせて基本給が決まる
基本給は昇給などで変動することはあるものの、そう頻繁に変わるものではありません。そのため、給与計算の際には基本的に計算する必要がないものとして考えます。
時間外手当
時間外手当の計算式は「労働時間×1時間あたりの賃金×割増率」です。時間外手当とは、「残業」や「休日労働」などの時間外労働に対して支払います。労働の時間帯によっては、割増賃金の対象になることがあります。また、休日出勤も手当ての金額が異なる場合があるため、注意が必要です。
時間外手当の対象になるのは、法定労働時間を超えた労働時間や、法定休日に労働した場合です。法定労働時間は1日8時間、1週間に40時間までと定められています。この時間を超える労働には25%の割増賃金を支払わなければいけません。また、22時から翌朝5時までに該当する場合には、深夜手当25%がかかります。
法定休日に何らかの事情があって労働する場合には、35%の割増賃金が必要になります。ただし、企業が独自に定める法定外休日に労働する場合には、休日手当の割増賃金の対象外になることがあります。また、休日の労働により法定労働時間を超える場合には、時間外労働の割増手当が発生します。
その他の各種手当
その他の手当は会社によって異なりますが、例えば通勤手当や出張手当などが挙げられます。手当は項目によって課税項目と非課税項目に分けられるため、注意が必要です。非課税枠の例としては、一定以下の通勤や出張、転勤に関する手当があります。課税項目と非課税項目に分けて計算しましょう。
これらの手当がある場合には、就業手当にあらかじめ記載しておく必要があります。
②控除額を計算する
支給額の計算が終わったら、次に控除額を計算します。控除額の計算式は「社会保険料+住民税+源泉所得税+その他の控除」です。
項目によって計算方法は異なり、個人情報が計算に影響を与えることもあります。そのため、計算を間違えないよう丁寧な確認が必要です。それぞれの項目の具体的な内容について次に解説します。
社会保険料
社会保険料には「健康保険料」、「厚生年金保険料」、「雇用保険料」の3つがあります。健康保険料と厚生年金保険料は、日本年金機構から送られてくる「社会保険料の納入告知書」の金額を確認しましょう。この書類を受け取るためには、7月上旬までに「社会保険料の算定基礎届」を提出しなければいけません。
給料を区切りよく分けた金額である標準報酬月額に対し、保険料率をかけて計算します。保険料率は健康保険と厚生年金保険で別のため、事前に確認しておきましょう。
なお、会社によっては保険料を会社と社員で折半することもあります。折半する場合には、2で割りましょう。計算式は「標準報酬月額×保険料率÷2=保険料」です。
雇用保険の計算式は「総支給額×雇用保険料率」です。厚生労働省のホームページにて、雇用保険料率は確認できます。
住民税
住民税とは、社員が市区町村に納める税金です。会社が社員の代わりに納税します。前年度の所得を元に計算し、住民税特別徴収税額の通知書にて1年間の住民税の金額が決まるため、その金額を月額で分割して天引きします。自治体が計算するため、企業側で細かい計算をする必要はありません。
なお、住民税特別徴収税額の通知書は毎年5月に届きます。給料から天引きされる場合は「特別徴収」という納税方法になります。普通徴収の場合は、社員自身が自治体に納付書を出して納税します。
源泉所得税(所得税)
源泉所得税は、住民税と同様前年度の給料を元に納税額を計算します。国税庁にある「源泉徴収税額表」を元に、「総支給額-(社会保険料+非課税手当の額)」と「扶養家族の数」を当てはめると金額を確認できる仕組みです。扶養家族が多いほど、課税額は少なくなります。
また、源泉徴収では会社が毎月給与から所得税を天引きします。ただし、この計算式はあくまで概算であり、実際の計算とは異なります。計算が異なる場合には、年末に年末調整を行い、実際の税金の額と源泉徴収した金額のズレを調整します。
給与計算をする時のリスク
給与計算は重要な計算です。そのため、下記のようなリスクが伴います。
- 労務リスク
- 情報漏えいリスク
給与計算は人力で計算する場合、計算を間違えるリスクがあります。計算ミスが発覚した場合には、後からまとめて請求されるだけではなく、追徴課税の対象になり、本来であれば納める必のない税金を納めなければいけません。
また、給与計算で使う書類には、個人情報が関わるものが多いため、個人情報漏えいリスクもあります。これは個人情報保護法の対象であり、万が一漏洩させてしまうと、漏えいさせた社員に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、その会社に対して30万円以下の罰金が科せられます。刑事罰を受けた履歴が残ることもあり、軽視できません。
【比較】無料も!給与計算ソフトのおすすめ2選
給与計算はミスをしてしまうと、問題が非常に大きくなります。そのため、給付計算は慎重な管理が求められます。上記で紹介したようなリスクを回避するためには、給与計算ソフトを使うのがおすすめです。ここでは給与計算ソフトのおすすめを2つ紹介します。
スマレジ・給与計算
スマレジの給与計算は簡単に操作でき、必要な機能を多く兼ね備えている給与計算ソフトです。さまざまな賃金形態に対応し、時間外手当や各種手当、控除社会保険、源泉所得税、住民税が自動で計算できます。
料金は10名まで2,420円(税込)、それ以降は社員1名につき385円(税込)です。利用できる人数に制限はなく、初期費用も端末を利用しない場合にはかかりません。クラウド型のため、法令改正があってもすぐにアップデートされます。そのため、コストを抑えつつ、給与計算のために必要な機能を求めている方におすすめのソフトです。
フリーウェイ給与計算
フリーウェイ給与計算は社員5人までなら永久無料で使える給与計算ソフトです。6名以上の利用でも月額1,980円(税込)で利用できます。
インターネットとパソコンがあればすぐに導入できるため、導入ハードルが低い点が特徴です。非常に安価で、年末調整などの機能も無料で利用可能です。
勤怠管理をより簡単にしたい人はシステム化を検討しよう!
給与計算は必要な項目を把握し、必要書類や手続きを適切に行い、適切に計算することが大切です。社員ごとに計算の条件が異なるため、ミスがないよう慎重な操作が求められます。
給与計算や勤怠管理をより簡単かつ正確にしたい場合には、システムの導入がおすすめです。スマレジの給与計算は初期費用がかかることはなく、機能も充実した給与計算ソフトです。給与計算を効率化させたい方は、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。