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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
#37 『帰ってきた宮田麺児』シャンプーハットてつじのプロデュース
#38 『帰ってきた宮田麺児 』の宣伝方法
今回のゲストは、大阪を中心に芸人として大活躍するシャンプーハットてつじさんです。今回は芸人としてではなく、つけ麺好きが功を奏して始めたつけ麺専門店「宮田麺児」のプロデューサーとしてお越しいただきました。そのユニークな戦略について深ぼっていきましょう。
1回目は、宮田さんがつけ麺専門店を始めた経緯と、値付けの考え方についてを伺いました。2回目の今回は、メニューの名前の重要性や、広告宣伝費をスタッフやお客さんに還元する話についてです。
この記事の目次
メニューの名前を先に決めて、そこから味が決まる
僕は、メニューの名前をどうするかに10割の力を注いでいて、名前を決めてから味を決めることもあるほどです。
たとえば「小麦のエスプレッソ」という麺があるのですが、これを聞いた時に、すごく濃縮されたようなイメージが湧きませんか?どんな麺よりも小麦の味がするんじゃないかな、と感じてもらえるのではないかと思うのです。
だから「甘味なんかも気にしなくていいから、とにかくこの名前に負けないような麺を作ってくれ」とオーダーをかけてみました。するとものすごく茶色い麺が出来上がりました。でも、食べてみると意外と美味しいのです。
他にも日本酒が好きなので「小麦の大吟醸」として、真っ白で綺麗なめちゃめちゃ小麦の味がする麺を作ったりもしました。
この手法は意外とよくて、「こういう味にしてくれ」と伝えても僕と製麺所の人の間にはどうしてもイメージのずれができてしまって、思い通りにいかないことが多いのです。
でも「エスプレッソで」などのイメージ先行で伝えると、「これはエスプレッソや」「いやこれはカフェオレや」などのことが言いやすくなります。名前から味を決めるスタンスはすごくおすすめです。
このはしりがシェフの気まぐれサラダだと思っています。初めて聞いたとき、衝撃が走りました。これならどんなサラダが出てきても「今日の気まぐれはこれなんやなあ、しゃあないなあ」となってしまいます。そこから僕はこういう名前のつけ方っていいなあと思うようになったんです。
ふとした思いつきから新メニュー誕生。車と同じで、お店も遊びが大事。
つけ麺は麺が主役なので、スープは麺を極力邪魔しないように作っています。
しかし、それが行き過ぎてしまってもお客さんがついてこないと思っているので、スープを楽しむ方向けのメニューも作ることにしました。
僕は洋食が好きで、中でもビシソワーズというじゃがいものスープが好きなんです。その中に麺を入れたら美味しいんじゃないかと思って、ビシソワーズのような麺を作ってくださいとお願いしてみました。
これなら多分女性もいっぱい来てくれると思うし、女性につけ麺が流行ったらもっとイメージが変わるんじゃないか、それはラーメン界のためになるんじゃないかと思いました。そして実際、女性人気がすごいつけ麺となりました。
僕は宮田麺児で生活しようとしていないので、その分遊びがあります。
車のハンドルでも、遊びがなかったら運転なんて怖くてとてもできないですよね。お店作りでもそうなんじゃないかと思います。
広告宣伝費はお客さんとスタッフへ還元する。そこが一番の営業マンだから。
お店を経営されていたら、広告宣伝費には頭を悩まされることでしょう。そればかりになって自分の給料も後回しになっていることもよくあるはずです。
でも僕は、広告宣伝費は年間でいくらと決めたら、それを全てスタッフとお客さんに還元すると決めています。
なぜかというと、一番の営業マンはお客さんとスタッフだと思っているからです。
そもそも、いきなり広告を見せるという行為は、街中で肩を叩いて「宮田麺児来てください!」と言ってるようなものです。それでは結局、お店には来てくれません。
でも、お店のスタッフが友達を誘う場合はどうでしょう。
「俺のバイトしてる店、めっちゃええで」とおすすめしてくれたら、こんなに信頼できるものはありません。自然とお客さんを増やしてくれるのはもちろん、採用にも困らなくなります。
だからたとえば宮田麺児のスタッフだけが被れる、めちゃくちゃお金をかけてかっこいい帽子を作ったりしたりしました。外に普通に被っていけるものなら、自然と話題になって宣伝になります。イベントをたくさん開催して、楽しい職場だと思ってもらうことも重要です。
お客さん向けにはファンミーティングを開いたりしています。新しいメニューができた時に、それを無料で食べられる会を開催するんです。
こうすると「なんか楽しいことやってるんやな」となり、食べ終わった人たちが勝手に宣伝してくれます。
スープも工場では作らず、従業員にやりがいを感じてもらう
通販には力を入れています。お店に来られないという声が多く届いたので始めましたが、おかげさまで好評で売り切れ続出です。
工場で大量にスープを作ることもできるのですが、全て手作りです。宮田麺児は外にスープを頼んでいる、と思われるのが嫌だったのと、従業員にやりがいを与えるためです。
宮田麺児のスープを作っているという事実からくるやりがい、責任感はお金には代えられないものです。この方が時給を100円上げるよりもよっぽど嬉しいはずです。
このスタイルだと多店舗展開をして拡大、などは難しいのですが、それは仕方ないと思っています。人が作れる量には限界があって、それを超えるとそれはもう人が作っていない、と感じてしまうんです。
お客さんには人が作ったつけ麺を味わってほしいので、多店舗展開などの話が来ても「乗っている電車が違うので…」と断るようにしています。
お店には、自分の考え方が全てあらわれている
僕にとってお店とは、「てつじそのもの」です。直接喋らなかったとしても、お店の雰囲気やメニューの出し方などから「ああ、てつじってこんなこと考えてんねや」ということが伝わったらいいなと思っています。
宮田麺児で生活していくつもりがないので、その分自分の考え方や遊び心が出ているはずです。そういう意味でも、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。