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お店ラジオ 2022/12/21 2024/03/14

ズルをして儲ける人は出ないの?信頼関係で成り立つ絶妙なビジネスモデル

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、花を贈れるサービス”花キューピット”を展開する花キューピット株式会社代表、𠮷川登さんです。昭和28年創業、来年で70周年になるという花キューピット。実は社長の𠮷川さんは元々起業をしてIPOをし、上場企業の社長を10年以上やった経験の持ち主です。そんな人が花キューピットに惹かれたのは一体なぜなのでしょうか。言われてみるとほとんど知らない人も多いであろう花業界について深ぼっていきます。

第1回目は𠮷川さんが花キューピットの社長になった経緯についてでした。第2回目は、花キューピットのビジネスモデルと広告戦略についてです。

 

この記事の目次

 

お花は生まれてから死ぬまで、そして死んだ後も贈られるもの

お花屋さんは、地域密着スタイルでずっと商売をされている名店が多いです。慶応元年からやっているような古いお店もあります。

単一セグメントで単一商品という、レパートリーを増やすわけでもなければ新しい事業を作るわけでもないというやり方でなんでそんなに長く続けられるのかを考えた時、リピーターがつきやすいからではないかと思ったんです。

そもそもお花は、産まれた時には出産祝い、小学校入学祝いに卒業祝い、また入学祝いに卒業祝い、入社祝い、結婚祝い、出産祝い、還暦祝い、古希のお祝い…亡くなっても葬式、お通夜、お墓参りなど、一人の人間が生まれてから死ぬまで、そして死んでからもお花は贈られるものです。

これによってとある花屋をひいきにしている家族に生まれた人がその地域を離れずに一生を終えたとき、その人は超優良リピーターになりうるんです

これが地域密着のお店が長くやっていける理由だと思います。

 

生き物である花の品質を安定させるために

花はどうしても品質にばらつきがあり、ピッタリのものを完璧に常備しておくことは不可能です。だから我々のようなたくさんの店舗で連携を取るスタイルが向いています。

例えば注文が入って札幌のお客さんに届けなければいけない時、近くにあるお店に電話をかけて確認します。そこで在庫が切れていたら次のお店に聞いて、それもダメならまた次、というやり方をすることで品質を安定させることができます。これは10や20の店舗数ではとても無理で、我々の4200店舗くらいの規模になってようやくそれが可能になります。

こうしてできるだけ同じようなクオリティできっちり届くような仕組みが作れれば、それが信頼になっていくのだと思います。

 

「ズルをして儲ける人は出ないの?」信頼関係で成り立つ絶妙なモデル

花キューピットは、もともとその土地で商売をしていた花屋が加盟店となるモデルで、フランチャイズほど結びつきが強い関係性ではないので、品質を落として利益を得ようとするお店が現れないのかとよく不思議がられるのですが、意外とそんなことは起こりません。

例えばA店が注文を受けて、遠く離れたB店にお願いをして届けてもらうとします。この時、B店が変なことをした場合怒られるのはA店なんです。だからA店の立場だったら、お願いをするお店は信頼がきちんとあるところがいいはずです。

在庫を使うのはB店なので、A店からお金をもらわないといけません。だからB店はA店との信用の中でやらなければならないのです。

これが成立しないとできないビジネスモデルになっているので、花キューピットに加盟できる花屋というのは花屋が花屋と認めたお店ということになり、ある時からこれがステータスになっているのです

また、このシステムは潜在顧客を探すのにも役立っています。A店がB店にお願いをしてお花を届ける場合、B店からすると全然知らないお客さんに頼まれていることになるので、そこでお花を届ける相手もまだ接点を持っていない可能性が高いです。このとき、受け取った側もおそらくお花が好きなので、潜在顧客ということになります。

ここにしっかりとしたクオリティでお花を届けたら、これがB店の評価に繋がっていきます。B店からすると究極のマーケティングになっていて、何もしなくても遠く離れた人がお花好きであろう人を教えてくれるという仕組みになっています。

ここで品質を落として利益を出そうとしても逆に損をしてしまうことは明らかなので、意外と不正は起こらないようになっているというわけです。

 

花の在庫管理は難しい。情報の整理がカギ

花は生きていますし季節性があるので、在庫管理には入念なヒアリングが必要になります。

今だとウクライナ情勢があるので、コロンビアからは入りにくいとか、燃料が高いから胡蝶蘭は入りにくいなどの情報が入ってきます。地方によって事情も違ったりするのでそれもヒアリングをし、それぞれを統合して、今どのような在庫状況になっているのか整理します。

そしてできるだけ揃っているようなお花を中心に商品展開をしていくことになります。

価格に関しては難しいところがあって、マグロなんかだとニュースで今年は高いなどの情報を小耳に挟むこともあるのですが、花の価格はほとんどニュースになりません。だから花の値段の上下は消費者の想定にあまりないため、原価の上下は花屋さんが吸収して苦しい思いをしていることも多いのです。

 

若い人に認知させるため、ガールズアワードでフォトスポットを作る

花キューピットは長いブランドになっているので20代だと知らない子たちもいます。その人たちにどうやって接するかを考えていくのですが、花自体はすごく映えるのでインスタに載せるためにみんな写真をとったりするんです。だから最初はガールズアワードで協賛をして、お花を使ったフォトスポットを作りました。するとすごく列ができて、花キューピットを認知させることに成功したのではないかと思います。

 

山Pが花を運んでくれるキャンペーン!

みんな花を注文した時に宅急便が運んでくるものだと思っているのですが、実は花キューピットではお花屋さんが直接届ける仕組みになっています。

宅急便だと不在だった時に倉庫に持ち帰ったりするのですが、それではお花は傷んでしまいます。そうではなく、お花屋さんの場合は不在でもまた別の時に作り直して持っていくことによって最高のクオリティでお届けすることができます。

この利点がほとんど伝わっていないと思っているので、そこを伝えるために「#今年は僕が届けます」キャンペーンというものをやっています。これは、インターネット花キューピットで母の日商品を買った1名の方にタレントさんが直接届けるという企画です。

1年目は新田真剣佑さん、2年目は鈴木伸之さん、3年目は松坂桃李さん、4年目は山Pこと山下智久さんです。これなら若い子たちも注目してくれます。

また、お花は本来お店ごとに違うものなのですが、どこで買っても同じだと思われていることが多く、商品での差別化がすごく難しいです。だからこのキャンペーンによって「山Pが来るかもしれないならここで頼んでみようか」となることを狙います。そこで商品に満足してもらえれば、リピーターになってもらえるはずです。

今回はここまでです。次回はお花屋さんを始めるにあたって注意すべきこと、ECをやるポイントなどについて伺っていきます。

 

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執筆 横山 聡

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