出汁にこだわった繊細な味わいや、四季が感じられる美しい盛り付けなど、和食には日本ならではの魅力が詰まっています。そんな和食を自分で作ってみたいと思い、和食料理人を目指している人も多いのではないでしょうか。
本記事では、和食料理人の仕事内容や年収、一人前になるまでの流れなどを紹介します。和食料理人になりたいと思っている人は、ぜひチェックしてみてください。
この記事の目次
まずは和食の定義を理解しよう!
和食料理人を目指すなら、まずは和食の定義を知っておきましょう。和食は2013年にユネスコ無形文化遺産として登録されていて、次の4つの特徴があるとされています。
- 新鮮で多様な食材を用いて、その食材の持ち味を尊重している
- 健康的で栄養バランスに優れている
- 自然の美しさや季節の移ろいが感じられる盛り付けがされている
- おせち料理や年越しそばなど年中行事と関わりがある
このように、自然を尊重した日本人の伝統的な食文化を感じられる料理が、農林水産省が定義している「和食」です。
和食料理人の基本情報
ここでは、和食料理人を目指すときに知っておきたい基本情報についてみていきましょう。
以下で、仕事内容・年収・必要な資格をそれぞれ紹介します。
仕事内容
和食料理人の仕事は、その名のとおり和食を作ることです。和食料理人が働く場所は割烹や料亭、ホテルなど多岐にわたります。ただ料理をするだけでなく、包丁などの調理器具の取り扱いや手入れ、食品を提供する場所で必要となる衛生管理なども仕事のひとつです。
料理の味を極めるのはもちろん、和食の特徴である美しさを引き出すために、器選びや繊細な盛り付けの技術とセンスも求められます。
1日のスケジュールは勤務する料理店によって異なりますが、基本的に仕込み・料理の提供・片付けや掃除などが主な仕事です。入社したての料理人は、従業員のまかない作りも担当します。
割烹や料亭では、料理人に階級があります。入社から数年程度はまかないや下処理を担当し、お客さんに提供する料理を作ることは基本的にありません。階級が一番高いのは「料理長」で、料理長になるまで入社から10年程度かかります。
年収
「平均年収.jp」によると、和食料理人やシェフなど、料理を仕事としている人の平均年収は約350万円でした。ただし、勤務する料理店や料理人としての階級などで年収は大きく変わるため、あくまでも目安だと考えておいてください。
料理人としてキャリアを積み、独立して自分のお店を開業する人もいます。その場合はお店が繁盛するかどうかで年収が大きく変わり、なかには年収が1000万円以上になるケースもあります。
資格
和食料理人として働くには、次の2つの資格を持っておくとよいでしょう。
- 調理師免許
- 食品衛生責任者
調理師免許を持っていると、調理技術だけでなく栄養や衛生に関する知識があることの証明になります。ただし、調理師免許は和食料理店で働くために必須というわけではありません。調理師免許を持っていなくても働ける職場もあり、お店で修行しながら調理師免許の取得を目指す人も多くいます。
食品衛生責任者は店舗の衛生管理を担当する人で、基本的に飲食店では食品衛生責任者を設置しなければなりません。食品衛生責任者の資格を取得するには講習会を受講するほか、調理師や栄養士などの資格を持っていれば食品衛生責任者の資格も有していることになります。
【板前修業】和食料理人として一人前になるまでの流れ
一人前の和食料理人になるための板前修行として、以下のような5段階の流れがあります。
- 追い回し・下積み
- 八寸場・盛り付け
- 焼き場、揚げ場
- 蒸し場、煮方
- 板場
ここでは、それぞれどのような仕事をするポジションなのか詳しくみていきましょう。
追い回し・下積み
新人としてお店に入ったら、まず担当するのが「追い回し」といわれるポジションです。追い回しとはいわゆる雑用の仕事で、掃除や皿洗い、器の用意や野菜の下処理などを行います。追い回し・下積みの期間はだいたい1〜2年程度で、この期間に現場の作業や季節ごとの流れを把握し、先輩たちの仕事内容を理解しておくことが大切です。
追い回しはまかないの用意を担当するケースも多く、予算や食材、時間に限りがあるなかでまかないを作らなくてはなりません。まかない作りは、先輩たちに技術をアピールする機会にもなります。
八寸場・盛り付け
八寸場・盛り付けは、お客さんに提供する料理に携われるポジションです。料理を盛り付けるポジションで調理自体は行わないものの、和食の特徴である「美しさ」を表現するための重要な仕事です。
盛り付けのセンスや技術はもちろん、お客さんの食べるスピードと料理が仕上がるタイミングに合わせて盛り付ける必要があるため、スピード感やまわりを見て対応できる力が求められます。
特に、お客さんに最初に提供する先付けは第一印象を左右するため、盛り付けが非常に重要な役割を担います。
焼き場、揚げ場
八寸場・盛り付けの期間を終えると、実際の調理を担当できるようになります。このタイミングで、下積み時代を抜けたと思っておいてください。焼き場・揚げ場は、その名のとおり焼き物や揚げ物といった加熱調理を担当するポジションです。
和食は味付けだけでなく火のとおり具合もおいしさを左右するため、加熱時間や温度などを管理する技術が求められます。また、適切なタイミングでお客さんに提供できるように、段取りやスピード感も重要です。
加熱調理以外には、さばいた魚を焼き物用に切りつける作業も担当します。そのため、刺し身を担当する「板場」の予行演出にもなるポジションです。
蒸し場、煮方
蒸し場や煮方は、味付けを担当する重要なポジションです。すべての料理の味付けを確認する役割を担っているため、お店によっては板前よりも蒸し場、煮方のほうが重要視されているケースもあります。
具体的には、出汁をとったりお吸い物や茶碗蒸しを作ったりするのが仕事です。お店の味を守るポジションで、調理場全体の進行管理や若手の育成なども行わなければなりません。
蒸し場、煮方は味覚が重要となってくるため、味や香りをしっかり感じられるよう体調管理が求められます。そのほかにも、普段から味の濃いものは控えるようにし、調理前に口にする飲み物にも気をつけるなど、高いプロ意識が必要です。
板場
お刺身を切る板場は、和食の世界では最も重要なポジションだといわれています。お刺身は「切る」ことがそのまま調理になるため、高い技術と集中力が求められます。また、お刺身の味や見た目は包丁の切れ味によっても左右されるため、毎日包丁を研いでおくことも仕事のひとつです。お刺身以外には、先付けやお吸い物などに使う鮮魚の切りつけを担当する場合もあります。
カウンターがあってお客さんから調理場が見えるタイプのお店では、魚の切りつけだけでなく接客も担当します。美しい包丁さばきや所作、お客さんを楽しませる会話など、料理の技術以外のスキルも磨いておかなければなりません。
日本の和食料理人は男性だけではなく女性も目指せる!修行を通して独立しよう
和食料理人は一人前になるまでに5つの段階が用意されている、奥が深い世界です。日本ならではの四季や年中行事が感じられる和食に、魅力を感じている人も多いでしょう。和食料理人は男性が多いイメージがあるかもしれませんが、女性も目指せます。興味がある人は、本記事を参考に和食料理人を目指してみてください。