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お店ラジオ 2024/09/19 2024/09/19

平子DNAを言語化する

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、ふらっと入りたくなるような田舎町のレストランをコンセプトとして始まった「Hiracon’chez(平子ん家という造語)」からスタートし、福岡発祥のベーカリー「AMAM DACOTAN」やドーナツ専門店「I’m donut?」などを展開している株式会社peace put 代表取締役 平子 良太さんです。

創業者がどのようにして料理の道へ進み、福岡にて小さなパスタ食堂をオープンするに至った経緯、成功を収めたパスタ食堂から派生し、パン屋やドーナツ専門店「I’m donut?」の開業に至るまでの挑戦と革新、国内外での店舗展開や、品質に対するこだわりについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、創業者がどのようにして料理の道へ進んだか、パスタ食堂のオープンなどについてお送りしました。
第2回は、パスタ食堂から、パン屋やドーナツ専門店「I’m donut?」の開業に至るまでの挑戦と革新などについてお送りしました。
第3回は、国内外での店舗展開や、品質に対するこだわりをどのように貫いているのかなどについてお送りします。

この記事の目次

ブランドの社会的な意味を発信する

ドーナツ屋は他にもありますが、当時、私は「ミスタードーナツ」以外の専門店を知りませんでしたし、リサーチもしておらず、ほとんど気にしていませんでした。

それは、私たちのドーナツは誰が食べても感動するという自信があったからです。

オープン当初のプロモーションとしては、「生地へのこだわり」や「食べたらわかる、誰もが驚くI’m donut?がオープンします」という程度の情報をインスタグラムで発信しただけでしたが、オープン日には約150人のお客様が行列を作ってくれました。

「AMAM DACOTAN」がドーナツ専門店をオープンするという情報がコアなファンに伝わり、それが興味を引き行列につながったのだと思います。

しかし、それ以上に私は、このブランドの社会的な意味やブランディングの部分を発信することの方が重要だと考えていました。

そのため、あまり長々と説明することなく、「I’m donut?」の意味をシンプルに表現しました。「私はドーナツなの?」と誰もが自問自答するような感覚を引き起こし、「だから食べてみてください」というメッセージです。

食べてもらえれば、この「I’m donut?」の意味を理解してもらえると思っていました。

 

「I’m donut?」渋谷から広がる5店舗の個性とサービス

「I’m donut?」は2年前の4月にオープンし、現在で2年と数ヶ月が経ちました。現在、店舗数は5店舗にまで増えています。

それぞれの店舗は、内装をすべて異なるデザインにしており、内装以外にも独自の工夫を施しています。

例えば、渋谷店では約50種類のドーナツを取り揃え、お客様に選ぶ楽しさを提供しています。そのため、パン屋のようにお客様自身がトレイにドーナツを乗せるセルフサービス方式を採用しています。

渋谷店は渋谷駅から徒歩約10分の場所にありますが、その距離を補うために、多くの種類のドーナツを揃えています。

一方、駅近くのアンテナショップ的な店舗では、商品数を約8種類に絞り、まずはそこでドーナツの美味しさを知っていただくことを目指しています。

そして、駅近の店舗で美味しさを実感したお客様が、渋谷店にはさらに多くの種類があると知ることで、「行ってみよう」と思っていただけるのではないかと考えています。こうして、駅から少し離れていても渋谷店を訪れる意味を感じていただけるでしょう。

また、原宿店では揚げたてのドーナツを温かいまま提供する特別なサービスを行っています。通常、温かい状態では砂糖が溶けてしまうため、冷めてから砂糖をつけてパッケージングしますが、原宿店では作りたての商品も提供しながら、温かいドーナツをそのまま楽しんでいただけるサービスを実施しています。

 

平子DNAを言語化し伝えていく

現在、店舗も増えスタッフも200人を超える規模になりました。
私自身が作ってきた内装や雰囲気、空気感を継続していくためには、この自分の感覚をスタッフに伝え、維持していく必要があります。

私はこれまで、アーティスティックな店舗づくりをしてきたため、「平子DNA」を言語化し、それを伝えていく必要があると感じました。

その必要性を強く感じている私たちは、8年ほど付き合いのある方を軍師として迎え入れ、彼と一緒に言語化を進め、組織づくりを突貫工事で行っているところです。

元々、私たちのお店のコアなファン層があって、その土台部分はしっかりとできていましたので、意志を共有することはそれほど難しいことではありませんでした。

そのため、軍師以外にも現在は多くの協力者が現れ、それぞれが会社の中で自分の役割を果たしてくれています。

 

ニューヨーク進出と将来の展望

今後の展開については、2024年10月にニューヨーク店をオープンする予定です。

形態としては、フランチャイズに近いものになりますが、単なるフランチャイズではなく、コラボレーション的な要素も含んでいます。

具体的には、日本でチームを編成し、そのチームがニューヨークの依頼元(フランチャイジーではない協力会社)と協力して運営を行います。現在、この2社が共同でプロジェクトを進めています。

半年ほど前、ニューヨークへ行きテストキッチンでブリオッシュ生地やビーガン生地を使い、ドーナツを試作しました。さらに、パンも提供したいと考えています。

その際、現地のシェフたちに試食してもらったところ、「アメージング!こんなものは今まで食べたことがない」と絶賛されました。

非常に柔らかく、溶けるような食感に驚いていたようです。この反応から、ニューヨークでの展開には大きな可能性を感じています。現地で多くの人にも試食してもらい、良い手応えを得ています。

一方、日本での展開についてですが、様々な提案を受けていますが、国内ではすべて直営店として運営しています。次の店舗がいつオープンするかは具体的にお伝えできませんが、慎重に進めています。

基本的には、自分たちが直接見届けることができる範囲で少しずつ展開していきたいと考えています。

 

目の届かない場所での商売はしたくない

私たちのお店は、私自身の感覚を大切にしなければ、うまくいかないお店だと思っています。そのため、毎日研究を続けています。

生地や砂糖など、本当に細かい部分まで誰にも気づかれないくらいの微調整を重ね、常に少しずつ改善を図っています。例えば、揚げ油の温度や揚げ時間、砂糖の配合や種類など、試行錯誤を繰り返しています。

もちろん、こうした微調整を続けていると、どこが一番良い状態なのか見失う危険性もあります。「前の方が良かったかもしれない」と思うこともありますが、それでも常にベストな状態を追求することを心がけています。

その結果を現場に伝える際も慎重に行います。セントラルキッチンで製造担当者と調整を行い、最終的に「これが良い」というものが決まったら、それを全体に周知し変更を行います。

また、ドーナツは物販としても非常に適しているため、ビジネス的にはECやコンビニとのコラボレーション、他社への提供など、さまざまな可能性が考えられます。実際、大手コンビニからも提案を受けたものの、すべてお断りしています。

それは、私が基本的に自分の目が届かない場所で商品が提供され、それが美味しくなかった場合言い訳をしたくないからです。

ですから、これからも私が目を届かせられない形態での展開は避けていきたいと考えています。

 

執筆

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