皆さんこんにちは、スマレジ福岡ショールームの田中 潮と申します。
私は過去3度にわたり、アメリカの優良小売店へ視察に行った経験があります。
今回はその中から、最高のショッピング体験ができる「トレーダージョーズ」というお店について皆さまにお伝えしようと思います。
この記事の目次
トレーダージョーズの概要
トレーダージョーズは、ロサンゼルスに本拠地を置く食品スーパーチェーンです。
2007年に私が訪問した時点では290店舗展開していましたが、2023年現在では500店舗を超えるチェーン店に成長しています。
このお店のターゲット顧客は、地元のロハス(LOHAS)消費者です。ちなみに「ロハス消費者」とは、環境や健康、社会に対する問題意識が高い人々のことです。
確かに店内に入ってみるとスタイルが良い健康そうな方々が多く、あきらかにウォルマートとは客層が違うと感じました。
アメリカのお店はターゲットマーケティングが明確なお店が多いのですが、このトレーダージョーズも、そのターゲット顧客を意識した独自コンセプトを持ったお店づくりがなされています。
立地も「ロハス」や「ヒッピー」といった自然志向が強い人々が住むエリアを選んで出店しています。
小売りの巨人であるウォルマートは(このようなエリアに出店できないので)そもそも競合しないという立地戦略です。
お店の周りを撮影した写真を見返してみても、自然豊かで住宅もお店も個性的なお店が多いことに気づきました。
トレーダージョーズの特徴
最大の特徴は、500店舗を超えるチェーン店にもかかわらず、あえてチェーンストアオペレーションを導入していない点にあります。
どういうことでしょうか?
最大手のウォルマートは約5000店舗を展開する巨大チェーンです。
つまりスケールメリットでは全く対抗できません。
そこで、あえて地元の人々の感性に合ったお店づくりを行う「脱・均質化」をモットーにしているのです。「1店舗たりとも同じ店を作るな」というのが本部の方針とのこと。
アメリカのEC市場
アメリカにおけるAmazonのオンラインショップのシェアは約40%にのぼります。
同国小売業における2020年度のECシェアは以下の通りです。
- 1位 アマゾン(Amazon):38.7%
- 2位 ウォルマート(Walmart):5.3%
- 3位 イーベイ(eBay):4.7%
- 4位 アップル(Apple):3.7%
- 5位 ホームデポ(The Home Depot):1.7%
いかにアマゾンがオンライン市場を席巻しているのか分かりますね。
だからこそ、小売業者の40%が「アマゾンを容易にやめられない」と回答しているという背景があります。
一方で、利用料については38%の企業が「不満がある」とも回答しています。
大手のポータルサービスは集客力があるので便利ですが、それを企業のマーケティング戦略の主軸においてしまうと、大手の仕組みに取り込まれてしまいます。
やはり自社独自の戦略が主軸にあり、大手ポータルサイトなどはサブとして上手く活用すべきです。
アマゾンをも気にしないトレーダージョーズの独自戦略
この「自社独自の戦略」を徹底しているのが、アメリカの食品スーパーで世界的にもファンが多い「トレーダージョーズ」。ここのエコバッグを持って買い物をしている方が日本でも増えてきました。
看板やPOPは専任のアーティストが手作り
当時私がお店を訪れてまず驚いたのは、全ての看板・POP、プライスカードなどが手づくりであったことです。
実はトレーダージョーズには、1店舗につき2~3人の「アーティスト」と呼ばれる専任者がおり、看板やPOPそしてプライスカードにいたるまでを手作りしています。
その後2回訪問しましたが、店舗数を増やしながらも、その方針が維持されていたことに感銘を受けたことを、今でもはっきりと覚えています。
ピックアップサービスはあえて導入しない
現在、アメリカではピックアップサービス(BOPIS)が普及しています。
ピックアップサービスとは、顧客が店舗アプリで注文した商品を、自分の都合が良いタイミングでお店で受け取れるというサービスです。
とても便利な仕組みで、多くの食品スーパーが採用しており、徐々に利用率も高くなっています。
しかしトレーダージョーズは、そのピックアップサービスすらも導入していません。なぜなら、彼らのマーケティングの主軸は「素晴らしい店舗体験」だからです。
お店に来て買い物を楽しんでいただくことに注力しており、アーティストによる手作業の店舗づくりもその一環です。
独自のストアコンセプトと地元の方々に愛されるお店づくり、アマゾンエフェクトに負けないトレーダージョーズの戦略は、店舗の成長戦略として非常に参考になります。
ピックアップサービスもクリアランスセールも、更には値引きも行わずに地元の方に愛されるお店づくりの秘密は「経験価値(店舗体験)」です。
約500店舗のチェーン店で、このような戦略を採用するのは本当に凄いことだと思いませんか?
店内の約90%を占めるというプライベートブランド商品
そして、このお店のもうひとつの特徴は、店内の約90%を占めるというプライベートブランド商品。
最近値上げしたものの、3ドル前後で販売される「ツー・バック・シャック(Two Buck Chuck)」として知られているPBブランドのワインは、トレーダージョーズの名物になっています。
「美味しい物を安く」提供することを徹底するためアイテム数を絞る代わりに、その殆どをプライベートブランド商品にする。
コストリーダーシップを中心に全方位戦略を展開するウォルマートとは逆に、市場や顧客を絞り込む集中化戦略で展開しているスーパーです。
私もレジの方に薦められたキャラメル入りのチョコレートを試食させて貰ったのですが、本当に美味しかったのでお土産にまとめ買いしてきました。
このような積極的なお薦めも、スタッフのモチベーションが高い証拠ですね。
トレーダージョーズの独自戦略のまとめ
トレーダージョーズの戦略をまとめます。
- 美味しい物が安く手に入る(PB)
- 全て手描きによるメッセージ性が高いPOP
- 店長はキャプテン、店員はクルー(乗組員)と呼ばれ、全員がアロハシャツを着て働く
- スタッフを呼ぶのもマイクやスピーカーを使わず、ベルを使う
- 一部の店舗では、お店にぬいぐるみが隠されていて、子供がそれを発見するとプレゼントが貰える
このように効率化とは逆のお店づくりを、500店を超えるチェーン店で行う理由は、”地元の買い物客がワクワクするようなお店にしたいから”ではないでしょうか。
トレーダージョーズは、「素晴らしい体験(経験価値)」を提供することで近隣の住民をファン化することに成功しているお店、つまり「素晴らしいショッピング体験」という最高レベルのバリューを提供しているお店ということです。
OMO時代だからこそ必要な「店舗体験の強化」
さすがに、トレーダージョーズのような取り組みを皆さまの店舗運営に実際に取り入れるのは難しいと思います。
しかし、業務効率化を実現することで限られた人的資源を「店舗体験の強化」に集中させることは可能です。
例えばスマレジの「スマレジ・Shopアプリ」であれば、来店後のお礼や次回来店クーポンのプッシュ通知を自動配信したり、誕生日メッセージも、常連さんや一見さんなどお客様に応じて企画内容を変えて、自動配信が可能です。
このように、以前は人の手で行っていた顧客管理や販売促進などを自動化することで、来店したお客様のサービスを最大化させることが容易にできるようになっています。
店舗体験の最大化(販促の効率化)についてご関心があれば、ぜひお問い合わせください。より詳しくご説明させていただきます。