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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、1975年に創業し、現在は、個人客だけでなく団体客向けの日本料理を軸として、独自の戦略により静岡県を中心として17店舗を展開、さらに、「ジャンボエビフライ」など魅力ある商品展開で注目を集めている「株式会社 なすび」の専務取締役 藤田尚徳さんです。
長年にわたり築かれた家族経営の歴史、地元食材にこだわった店舗運営、さらには団体客を軸にした戦略や、地域貢献を意識した取り組みなど、会社の成長と挑戦、そして地域に根ざしたビジネスモデルについて、3回に分けてお伝えいたします。
第1回は、株式会社なすびの創業から50年の歴史と、地元密着型の飲食戦略、団体客を軸としたビジネスモデルについてお送りしました。
第2回は、団体客を軸とした経営モデルや、専務としての営業活動における付加価値戦略についてお届けしました。
第3回は、一回転に集中した宴会ビジネスモデルの成功と、ジャンボエビフライの誕生から全国的な人気に至るまでの経緯についてお送りします。
この記事の目次
一回転に集中した宴会ビジネスモデルの成功
私たちの宴会ビジネスモデルは、通常の飲食店で見られる「席数 × 回転率」の方式とは異なり、一回転に集中するスタイルを取っています。ランチもディナーも、一回転でお客様に最高のサービスを提供することを重視し、その質を高めることで利益を生み出しています。
特に夜の営業では、一回転でも十分に利益を確保できるビジネスモデルを構築しています。その分、単価は高めに設定しており、宴会での平均単価は8000円から9000円程度です。
例えば、宴会時の席数が220席ほどある店舗では、週末には100万円を超える売上が見込めます。平日でも30万から60万円程度の売上があり、月商では1600万円から1700万円を達成しています。このようにして、安定的な収益を生み出すことができており、一回転集中型のビジネスモデルが十分に機能していると感じています。
この成功の鍵は、単に席数を増やして回転率を上げるのではなく、一度のお客様に最高のサービスと価値を提供し、リピート客や高額な宴会利用を促すことにあります。地元での高い評価と信頼関係を築いたことも、このモデルを支える大きな要因です。
「ジャンボエビフライ」の誕生と人気の理由
私たちの飲食店は、地道な取り組みを続ける一方で、一つのメニューが大きな話題となりました。それが「超巨大エビフライ」、通称ジャンボエビフライです。このメニューが注目を集めた理由は、エビフライを吊るして提供するという独特なスタイルにありました。
このメニューが生まれたきっかけは、コロナ禍による影響で宴会が減少し、家族連れで楽しめる新たなメニューが必要だと感じたことでした。特に、ハンバーグやエビフライのような、子供のお祝いにぴったりな料理が良いのではないかと考え、家族で楽しめるメニューを開発することにしました。
実は、以前にも当店ではジャンボエビフライを提供していた時期がありましたが、一度メニューから外していました。そこで、コロナ禍をきっかけにこのメニューを復活させることを決め、せっかくならさらに大きくしてみようと挑戦しました。
しかし、エビフライがあまりに大きく、お皿に収まらなくなってしまったため、最終的に縦に吊るして提供するシュラスコのようなスタイルで吊るしてみたらどうかというアイディアが生まれました。
メディア出演で大反響!「ジャンボエビフライ」の全国的な人気
私たちのジャンボエビフライが話題になったのは、中京テレビの「オモウマい店」ディレクターから番組で取り上げたいと連絡を受けたことがきっかけでした。最初はB級グルメとして扱われることに少し戸惑いもありましたが、社員たちから「絶対に出演すべきだ」という強い後押しがあり、思い切って出演することにしました。
「なすび」は、全国放送で3回も取り上げられました。特にそのうちの1回は「なすびスペシャル」として、1時間まるごと私たちの店舗が特集されたのです。視聴率はなんと15%に達し、私自身も街を歩いていると「あ、オモウマい店の人だ」「ジャンボエビフライの人だ」と声をかけられるほど、静岡ではすっかり有名になりました。
現在では、週末には予約が取れないほどの人気となり、ジャンボエビフライを目当てに多くの方が来店しています。店内には等身大のパネルを設置しており、来店されたお客様はその前で写真を撮るのが定番となっています。
一時的なブームかと思っていましたが、すでに3年が経ち、今でもSNSでの話題が広がり続けています。コロナが明けてからは、家族連れだけでなく、幅広い層のお客様が訪れてくれるようになりました。
職人技とメディアで広がるジャンボメニューの成功
私たちの店舗には、60人から70人ほどの和食の職人が在籍しており、本物の料理を提供することを最も大切にしています。規模が大きくなると、多くの飲食店ではチェーン店化やマニュアル化、セントラルキッチンの導入によって料理のクオリティが低下しがちです。しかし、私たちは料理長をしっかりと立て、新卒の若いスタッフにも食の基本を徹底的に教え、地元で一流の料理を提供し続けることに注力しています。
例えば、ジャンボエビフライも、何度も味にこだわり、試行錯誤を重ねて完成させた自信作です。さらに、ロングカキフライといった新メニューも、私が描いたイメージをスタッフに伝え、妥協せずに作り上げました。その結果、これらのメニューは大ヒットを記録しています。
次なる展開として、どこまで可能かはまだ未知数ですが、横須賀の「さいか屋横須賀店」の南館3階にある天ぷらと手延べそうめんのお店「あさやま」で、ジャンボエビ天ぷらを試験的に導入しました。するとすぐに『ヒルナンデス』の取材が入り、メディアの影響力を強く感じました。
このお店も爆発的な人気を博しており、これまで必要とされていた職人技のスタイルとは異なり、オペレーション化が可能な業態となっています。現在、店舗展開も視野に入れ、このジャンボメニューの成功をさらに広げていく形を模索しているところです。