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お店ラジオ 2024/11/19 2024/11/19

このビジネスモデルではやっていけないかもしれない

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、1975年に創業し、現在は、個人客だけでなく団体客向けの日本料理を軸として、独自の戦略により静岡県を中心として17店舗を展開、さらに、「ジャンボエビフライ」など魅力ある商品展開で注目を集めている「株式会社 なすび」の専務取締役 藤田尚徳さんです。

長年にわたり築かれた家族経営の歴史、地元食材にこだわった店舗運営、さらには団体客を軸にした戦略や、地域貢献を意識した取り組みなど、会社の成長と挑戦、そして地域に根ざしたビジネスモデルについて、3回に分けてお伝えいたします。

第1回は、株式会社なすびの創業から50年の歴史と、地元密着型の飲食戦略、団体客を軸としたビジネスモデルについてお送りします。

 

この記事の目次

 

女性をメインターゲットに50年前に創業

株式会社なすびは、静岡県に本社を構える日本料理の専門企業です。1975年に父が創業し、現在は、懐石料理や炭火焼き料理、ビュッフェレストランなど、幅広い飲食店を運営しています。

また、ケータリングサービスや公共施設内のレストランの管理も行っており、今年でちょうど50周年を迎え、私自身は、専務取締役として会社の運営に携わっています。

創業当初は、静岡県清水市にあるビルの地下17坪の小さなお店で、炭焼き料理と麦とろろなどを提供していました。当時としては珍しく、女性をメインターゲットにした居酒屋として手作りの和食を提供していました。

現在では、静岡県静岡市内に15店舗を展開し、さらに沼津市や神奈川県横須賀市にも店舗を拡大しています。横須賀市の「さいか屋」というデパート内にある店舗では、天ぷらや手延べそうめんを提供する和食レストランを運営していますが、どの店舗も基本的に和食を中心に展開しています。

 

家族で築いたなすびの成長と挑戦

株式会社なすびは、現在17店舗を運営していますが、最初は父が創業し、5店舗ほどまでお店を増やしました。そして、25年ほど前に、現社長である私の兄が旅行会社を辞め、家業に加わりました。私は大学卒業後にサッポロビールで営業マンとして働いていましたが、兄から「帰ってきてくれないか」と言われ、22、23年前に静岡に戻りました。

それからは、地元の伝統的な料亭やビアホールをM&Aによって買収し、徐々に店舗を拡大していきました。そうした実績がしだいに認められ、静岡県庁をはじめとした行政の施設や大規模な会館のレストラン部門のパーティーも任せていただくようになりました。

一般的に、行政施設内のレストランは低価格で提供する食堂のような形態を求められますが、私たちは地元の食材をふんだんに使い、わざわざ足を運んでもらえるようなメニューを提供することを目指しました。とはいえ、単品のランチメニューだけで大きな利益を上げるのは難しいのが現実です。

そこで、私たちは広いスペースを活かしてパーティーや宴会を引き受けることで、利益を生み出してきました。行政施設の家賃は一般的な相場よりも安いため、その分、地域に貢献するメニューを提供しながらも、宴会などで収益を確保しています。現在も、私たちは行政関係の施設で4店舗を運営し、地域に根ざしたサービスを提供し続けています。

 

団体客を軸にした飲食戦略

私たちの店舗運営は、宴会やパーティー、法事などを軸に、団体のお客様にご利用いただく戦略を組んで、利用者を安定的に確保することを目指しています。

飲食業は、定期的な利益が保証されるストックビジネスとは異なり、今日ご来店いただいたお客様が明日も来てくださる保証はありません。

そのため、予約を取ることが重要であるため、法事や宴会、観光など、事前に団体予約が見込める分野を軸としながら、同時に単品メニューやユニークな料理も提供して、広くお客様に選んでいただけるよう努めています。この二本柱をしっかりと活かして、お客様を安定的に確保していきたいと考えています。

また、こうした団体客を得るためには、接待の質も非常に重要になります。かつては、団体のお客様を確保することで売上がある程度見えていたため、それに合わせて費用を管理することで、利益を出すことができました

現在、私たちの売上は約17億円から18億円ほどありますが、その約半分がパーティーや宴会、法事などの団体のお客様によるものです。今後も、この分野をしっかりと軸にしながら店舗を運営していきたいと考えています。

 

「このビジネスモデルではやっていけないかもしれない」コロナ禍での試練

2020年の3月、コロナ禍の影響で私たちの売り上げは9割減少してしまいました。

特に、店舗での営業が壊滅的な打撃を受け、お弁当やケータリングのサービス以外はすべて休業を余儀なくされたのです。この時、売り上げは2億円にまで減少し、何度も「再開できるかもしれない」と思っては、再びダメになるという厳しい状況が続きました。

メンタル的にも大きな打撃を受けましたが、なんとかコロナが明けて以降、これまで続けることができました。

私自身、「もうこのビジネスモデルではやっていけないかもしれない」と思ったこともありましたが、現在はコロナ前の100%にはまだ届かないものの、コロナ前の約80%までお客様が戻ってきています。東京などの都市部の状況はわかりませんが、静岡では接待や団体利用が復活しつつあるようです。とはいえ、少し回復しているとは感じているものの、依然として厳しい状況が続いています。

 

第1回は、株式会社なすびの創業から50年の歴史と、地元密着型の飲食戦略、団体客を軸としたビジネスモデルについてお送りしました。

第2回は、団体客を軸とした経営モデルや、専務としての営業活動における付加価値戦略についてお届けします。

執筆 アキナイラボ 編集部

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