about
「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社 代表取締役 山本昌弘さんです。同社は、フランチャイズ展開を目指す企業に特化した支援を提供し、効率的で持続可能なビジネスモデルの構築をサポートしています。また、自ら展開している、「うなぎの成瀬」の成功の鍵や、独自の業態開発における戦略や工夫について伺います。
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社を設立した経緯、企業の強みを活かしたフランチャイズ展開支援、そして効率的なビジネスモデルの構築や、独自業態「成瀬」や「よもぎ蒸しサロン」を通じた成功事例、さらに国内外での店舗展開戦略について、3回に分けてお送りします。
第1回は、フランチャイズビジネスインキュベーション設立の経緯や、企業の強みを活かしたオーダーメイド支援の手法などについてお送りします。
この記事の目次
企業の強みを活かした支援
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社は、フランチャイズ(FC)展開を目指す企業や事業オーナーを支援するコンサルティング会社です。フランチャイズパッケージの作成、加盟店募集や加盟希望者の資金調達支援など、FC展開をサポートしています。
私たちはクライアントの強みを活かすことを重視し、ヒアリングを通じて個別の課題を把握することで、足りない部分を補完する「オーダーメイド型」の支援パッケージを提供しています。例えば、FC本部を構築する際には、まず直営店を調査し、収益性を確認します。
その結果、収益がある場合は、その成功要因を分析し、真似されるリスクや加盟店にとってのメリットなどを見極めます。そして、FCに加盟するメリットがあると判断した場合、私たちが支援に入らせていただきます。
効率的で持続可能な事業モデルの見極め
通常、コンサルタントによる支援では、クライアントがノウハウを持っている場合でも、不必要な部分にまでコストが発生してしまうことがあります。しかし、私たちはクライアントの持つノウハウを尊重し、本当に必要な部分にのみ焦点を当ててアプローチすることを心がけています。
具体的には、依頼された業態がFCに適しているかを判断する際、まず事業モデルがスタッフ個人のスキルや経験に過度に依存していないかを確認します。また、業務が属人的ではないか、少人数で運営できるか、または有資格者に頼らないビジネスモデルかを慎重に検討します。
例えば、有資格者が必要なビジネスモデルの場合、採用面で課題が生じる可能性があります。人材を採用できたとしても、スタッフが辞めた場合に営業が停止するリスクが高い業態です。また、スタッフのスキルや影響力が強くなりすぎると、オーナーが店舗運営をコントロールすることが難しくなる恐れがあります。
FC成功のための要素は初期費用
FC展開において、成功の鍵となる要素の一つが初期費用の設定であり、低コストでのオープンが可能な業態が適しているといえます。私たちは、サロン系業態で約500万円、飲食業では約1000万円程度の初期投資額を目安としており、これは一般的な初期投資額である1500万~2000万円と比較して、かなり抑えられています。
募集については、既存のビジネスプラットフォームを活用する方法があります。例えば、「成瀬」では広告費をかけず、口コミや既存のビジネスプラットフォームを活用して加盟店を集めていますが、そうしたプラットフォームを通じて「他に良いFCはありませんか?」という問い合わせを受けることもありので、紹介するなどしています。
ただし、現在の「成瀬」は多忙であるうえ、最近オープンした「よもぎ蒸しサロン」の直営店運営にリソースを割いているため、現在は、他のFC案件のサポートには手が回っていない状況です。
FCとしての『よもぎ蒸しサロン』の魅力
私たちが運営する「よもぎ蒸しサロン」はFC展開に非常に適しています。理由は、初期費用が低コストで始められる点です。一方、現在フランチャイジーとして運営しているドライヘッドスパのサロンは、人材に関わる課題が避けられません。
ドライヘッドスパの場合、1人のお客様に対し必ず1人のスタッフが対応する必要がある施術型業態の特性上、売上の上限が決まってしまいます。また、スタッフの採用や教育に労力がかかり、運営においては大きな課題となっています。
これに対して「よもぎ蒸しサロン」は全く異なる運営モデルです。スタッフの業務はお客様をブースに案内することであり、施術そのものは必要ありません。例えば、利用開始時間を工夫することで、1人のスタッフが同時に3~4名のお客様を対応する運営が可能です。
このため、1人あたりの生産性が非常に高く、人件費の比率を大幅に抑えられる点が大きな魅力です。また、施術が不要なため、スタッフの身体的負担もほとんどありません。
さらに、「よもぎ蒸し」はホットペッパービューティーなどの検索サイトで上位に表示される人気キーワードであり、需要の高まりが見込まれます。業界全体の認知度が高まりつつある点も、この業態を選ぶ理由の一つです。
大手企業が参入しない市場
「よもぎ蒸し」の現状、『よもぎ蒸し』の市場にはナショナルチェーンが存在しておらず、競争が比較的緩やかな環境です。この状況は、かつて私たちが「ウナギの成瀬」を展開した際の環境と似ています。
当時、ウナギは多くの人々に馴染みのある食品でありながら、個人店が主流でした。私たちはそこに参入し、成功を収めました。「よもぎ蒸し」においても同様の成功が可能だと考えています。
「よもぎ蒸し」や「ウナギ」のような業態は模倣されやすいという側面がありますが、大手企業が参入するほどの市場ではないため、大量の資金を投入してまで手を出す分野ではありません。
このような環境であるからこそ、早めに動くことで市場のシェアを確保できるチャンスがあると考えています。過去に「成瀬」を展開した際も、短期間で集中的に店舗展開を進めることで、市場の主要なシェアを獲得しました。
「よもぎ蒸し」や「ウナギ」のような業態は、スモールビジネスとは言えないものの、ミドルビジネスとして十分に成立するライトな業態です。特に、人件費を抑えつつ比較的簡単に展開できる点が大きな強みです。この特性を活かすことで、成功への道筋が明確になります。
理念にあったビジネスモデルを作る
うなぎの「成瀬」を立ち上げたきっかけは、フランチャイズコンサルティングの経験から得た気づきにあります。クライアント企業の本部支援を通じて、クライアント企業の意向に従い本部支援を進めていましたが、加盟店が十分な成功を収められていない現状に直面しました。私はこの構造に違和感を抱き、長期的には持続可能ではないと考えるようになりました。
改善提案を提案したものの、「理想的すぎる」という理由で改善提案が受け入れられず、現状を変えることはできませんでした。この経験を経て、自分で実現可能なビジネスモデルを示そうと考えたのです。
タイミングよく、職人レスで運営可能なうなぎ業態を持つ会社と出会い、そのモデルをさらに発展させる形で事業化に挑むことになりました。
うなぎ業態の最大の課題は、価格の高さでした。日本人の7~8割がうなぎを好む一方、価格が高いため日常的に選ばれることは少ないのです。そこで、「価格を半額程度に抑えれば、うなぎを日常食として広く受け入れられるのではないか」と考えました。
高価格の壁を超えるための3つの要素
一般的に、うなぎが1人前5,000~6,000円と高価格なのは、原価の高さが主因とされています。しかし、私は「うなぎは本当にこれほど高コストなのか」という疑問を持ち、実際に取り組んだ結果、手頃な価格で提供する可能性があることを証明しました。
私たちがリーズナブルに提供できた理由は、以下の三つに集約されます。一つ目は、海外で養殖された日本うなぎを使用し、コストを大幅に削減したこと。二つ目は、調理工程を標準化し、職人の技術に頼らない体制を構築することで、人件費を抑えたこと。三つ目は、二等立地や三等立地など、比較的家賃の安い物件を選定し、固定費を抑えたことでした。
仕入れたうなぎについては、「海外で養殖された日本うなぎ」と明確に伝えたうえで販売しましたが、お客様からは特に抵抗が見られず、食事を楽しんでいただけました。この成功の背景には、「海外産」の印象を「日本うなぎ」というブランド力で補完した戦略があります。
第1回は、フランチャイズビジネスインキュベーション設立の経緯や、企業の強みを活かしたオーダーメイド支援の手法などについてお送りしました。
第2回は、「成瀬」や「よもぎ蒸しサロン」の成功、人件費を抑えた効率的な運営モデルの特徴、低コストで始められる業態の魅力などについてお送りします。