Powered by

Home お店ラジオ 買い付けの幅を広げるためのブランド展開

お店ラジオ 2024/07/19 2024/07/19

買い付けの幅を広げるためのブランド展開

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、大学在学中に古着屋の魅力に惹かれ、就職後2年で仕事を辞め、古着屋の道に進み、オーストラリアでのワーキングホリデー中に仕入れた靴を販売するショップを開き、仲間とともに「JAM TRADING」の原型を構築。2007年に現在の株式会社JAM TRADINGを設立し、以降、独自の仕入れスタイルと多様なブランド戦略により、店舗拡大を続ける、株式会社JAM TRADING 代表取締役 福嶋政憲さんです。

古着に惹かれ、その世界に引き込まれるように海外へ。そして、ワーキングホリデーで集めた靴を販売するショップを出店、その後のパートナーとの出会いやネット戦略で成功。2007年「株式会社 JAM TRADING」を設立し、「古着屋JAM」を出店するまでの経緯や、独自の多様なブランド戦略、社員教育、在庫管理と仕入れ戦略、インターネットと実店舗との連携についてなど、3回に分けてお送りします。

第1回は、古着との出会いやオーストラリアでのビジネススタート、相棒と出会いやヤフオクの成功などについてお送りしました。
第2回は、楽天への挑戦と成功、「古着屋JAM」第1号店、現在のブランド戦略などについてお送りします。

 

この記事の目次

 

ヤフオクから楽天への挑戦

ヤフオクでは激しい競争がありましたが、私たちは次々と商品を出品し、数で勝負する作戦を取りました。またその頃は、楽天が注目され始めた時期で、友人から「楽天というのを知っているか」と言われたことがありました。

当時、私は楽天を知らなかったのですが、古着屋で楽天に出店している人が20万円ほど売り上げたという話を聞き、私たちも挑戦してみることにしました。これが2003〜2004年頃のことです。

ヤフオクでは1円スタートで出品し、最終的に1,000円や2,000円になるかは終了してみないとわからないため、データ分析が重要でした。しかし、楽天は価格を設定して販売するため、街の商売と同じようにお客さんが買ってくれるのを待つスタイルでした。

しかし、全く売れません。売れないので、楽天に出店するのをやめ、ヤフオクに出品するとすぐに売れました。社内では、「例えば7,900円などの価格を設定せず、ヤフオクで出品して3,000円や4,000円でも売れる方が良い」という意見もありました。

 

楽天での成功とオンライン拡大

楽天に出店するかどうかの議論していたとき、楽天のコンサルタントが倉庫を訪れ、私たちの当時の主力商品であったドクターマーチンの在庫を見て、「騙されたと思って、今あるドクターマーチンを全て楽天に出してみてください」と言われたのです。

それまで楽天には商品を50点ほどしか出品していませんでしたが、コンサルタントの助言を受け、一気に1,000点ほどの商品を出品しました。すると、少しずつ売れ始めたのです。価格は店頭と同じ7,900円や8,900円、ヤフオクの落札価格の倍くらいの価格と、高めに設定していたのですが、それでも売り上げは伸びていきました。

楽天の場合、出店数の中で私たちの商品数の割合が大きく影響するため、シェアが重要になります。新品の商品を探している人の中にも、古着で良いという人が一定数いて、商品数を増やすことでそうした人たちの目にとまるようになります。

結果として、楽天内のSEOも向上し、月商も3,000万円に達しました。それ以降、店舗を増やすよりも、ネットでの販売を強化する戦略を取ることにしました。

 

一点集中からの多角化「古着屋JAM」第1号店

私たちは今、古着屋ですが、最初は靴屋からのスタートでした。ラインチェスター戦略というわけではありませんが、靴に集中することにしたのです。具体的には、ドクターマーチンやウェスタンブーツなど、靴に一点集中し、その後、徐々にアイテムを増やしていきました。

当初から古着にまで商品の幅を広げることを考えていたわけではなく、徐々にデニムのパンツやTシャツなど、メンズのアイテムを仕入れるようになり、少しずつ古着の取り扱いが増えていきました。そして、海外から届く商品、楽天に出品する商品の保管場所が手狭になってきたため、お店を出そうということになりました。

出店にあたっては、商品をショールーム的に見せる形で保管することを考えました。商品に番号を付けて倉庫に置く代わりに、店内にショールーム的に展示し、ネットで売れるか店舗で売れるか早い者勝ちで販売することにしました。

そして、現在の「古着屋JAM」の1店舗目となるお店を、2009年4月に大阪市内の玉造という場所にオープンしました。本来はアメリカ村に出店したかったのですが、倉庫としても利用するための広さや家賃を考慮すると難しいと判断し、最終的に玉造に落ち着きました。

玉造は中心部から少し離れていますが、倉庫兼事務所としての機能を兼ね備えた場所を探している中で、最適な場所でした。

 

靴にフォーカスした理由とその成功

私たちが靴にフォーカスしたのには理由があります。
それは買い付けの際に経験したことなのですが、私たちはラルフローレンのシャツやパタゴニアのフリースなど、誰もが欲しがるアイテムをまとめて購入しようと考え交渉しましたが、仕入れ先から「触るな」と言われてしまったのです。

そして、「それはお前らのものではない」と断られました。それらのアイテムは既にバルクで卸先が決まってしまっていたようで、許可されたのが、その横にあった売れ残りの靴で、なかなか売りづらい商品でした。汚れているものも多く、日本に帰ってからクリーニングや手入れが必要でした。

当時、ネットでは新品の靴でさえ売れにくい時代でした。試し履きが必要で、アパレル以上にハードルが高いとされていました。しかし、私たちは楽天で中古の靴を販売し、これが成功しました。

もちろん、サイズが合わないという理由で返品もありましたが、多くのお客さんがサイズ感や履き心地にこだわらず購入してくれました。返品率は3〜4%程度であり、サイズを試さなくても購入するお客さんが多かったことが成功の要因です。

 

 

現在の店舗展開とブランド戦略

創業当初はヤフオクや楽天での販売に力を入れていましたが、現在は「古着屋JAM」という屋号で、札幌から沖縄まで全国に15店舗を展開しています。他にも「LOWECO by JAM」というブランドを仙台から福岡まで11店舗展開しています。

「JAM」では、ヴィンテージアンドセレクトショップとして、ラルフローレンのシャツやパタゴニアのフリース、カーハートのジャケットなど、ブランドネーム付きの商品を販売しています。

「LOWECO(ロエコ)」というブランドは、誰もが知っているような有名ブランドではないけれど、デザインが良くて面白いアイテムを低価格で提供することをコンセプトにしています。Tシャツなども含めて、ロープライス アンド エコという理念で商品を販売しています。

さらに、「Elulu by JAM(エルル バイ ジャム)」というレディース古着を集めた店舗も運営しており、原宿と心斎橋に2店舗あります。この店舗はトレンドを重視しており、古着だけでなく新品のボトムスやリメイクしたアイテムも扱っています。

「Elulu」の姉妹ブランドとして「ADÉL VINTAGE by Elulu(アデル ヴィンテージ バイ エルル)」も展開しています。他にも、無人古着屋「ストッピー」が3店舗あり、今後も拡大予定です。

 

ブランド展開の本当の理由:仕入れのためのブランド展開

運営するブランドが多くなると、経営側として管理が複雑になりすぎる懸念があります。私たちは、「古着屋JAM」を軸にして、その派生ブランドとして「LOWECO(ロエコ)」を展開していますが、このブランドは古着のエントランス、ファッションの入り口のような位置付けで、少し安い価格でお客さんにチャレンジしていただこうと考えて作りました。

こうしたブランド展開をする理由は色々ありますが、古着の買い付けという視点から言うと、海外での仕入れの際にはとにかく効率よく、たくさん買いたいということがあります。しかし、例えば、ラルフローレンやパタゴニアなど特定のブランドに絞って買い付けるとなると、千品見てやっと1つ見つかるかどうかで、多くは買えません。足を使って様々な地域のリサイクルショップを訪れ、やっと見つけられるほどです。

しかし、レディースのドレスやスカート、ボーダーのロングTシャツなどの商品は比較的簡単に手に入ります。そこで、買い付けの幅を広げるために、ブランド展開を増やしていったのです。

このようにブランドを多角化することで、様々なニーズに対応し、効率的に買い付けを行うことが可能になりましたが、その分、管理が複雑になるという課題も抱えています。

第2回は、楽天への挑戦と成功、「古着屋JAM」第1号店、現在のブランド戦略などについてお送りしました。

第3回は、在庫管理と仕入戦略、スタッフの採用と教育、インバウンドと地域店舗などについてお送りします。

 

執筆

このページの先頭へ