about
今回のゲストは、飲食業や店舗プロデュースなど幅広い事業を展開されている、株式会社ガネーシャ代表取締役本田大輝さんです。実家の焼肉店「大将軍」を再生させた後、ハンバーガーブランド「SHOGUN BURGER」を立ち上げ、地域や海外に合わせた独自の戦略で成功を収めています。
実家の焼肉店「大将軍」の再生からスタートし、接客の質やマーケティング戦略を駆使して繁盛店へと成長させ、ハンバーガー事業「SHOGUN BURGER」を立ち上げ、和牛を使った高級バーガーを展開。挫折と改善を繰り返しながら東京や沖縄で成功を収め、今後は海外展開も視野に入れたビジネス戦略について、3回に分けてお送りします。
第1回は、実家の焼肉店「大将軍」の再生と繁盛店へ導くサービスの三大要素などについてお送りします。
この記事の目次
焼き肉店「大将軍」からの始まり
株式会社ガネーシャは、富山県に拠点を置き、飲食事業や店舗プロデュースなどを行っています。実は、このガネーシャという社名には、深い意味があります。ガネーシャはインドのヒンドゥー教における象の姿をした商売の神様なのですが、私はこの神様のように大きな意味を持たせた名前を付けたくてこの社名にしました。
もともと「大将軍」という名前で私の両親が町の焼肉店を経営していのが始まりでしたが、私が大学3年生の頃、経営状況も厳しく、兄弟の誰も後を継ぐつもりがなかったため、店を閉めるという話が出ていました。
当時、私は特に何もせずにフラフラしていた大学生でしたが、「それなら、私が飲食業をやってみようか」と思い立ちました。そして、私はまず自分自身で売り上げを作る経験が必要だと感じていましたので、経験を積んでから事業を引き継ぐことにし、大学3年生から25歳までの4〜5年間、様々なお店で修行をしました。
大将軍の再生
「大将軍」は、私が生まれた年に創業し、37年の歴史を持つ焼肉店です。しかし、私が店を引き継いだ当初は、全くと言っていいほど流行らず、厳しい経営状況に陥っていました。当時の店舗は3つで、スタッフは両親と社員5人ほど。休みは週に1日だけで、1日12〜13時間の労働が常態化していました。月の売上は350万〜400万円の小規模なお店でした。
そんな中、私が店を引き継ぎ、さまざまな努力を重ねた結果、半年で月商を900万円にまで引き上げ、繁盛店へと成長させることができました。この成功には、当時の韓流ブームが大きく影響しています。「KARA」や「少女時代」といった人気グループの影響で、韓国料理や文化への関心が高まり、自然と集客に繋がりました。また、本を読んで勉強したり、SNSを活用したりと、時代に合った手法も取り入れたことが成果を後押ししました。
こうして、店としての「勝ち癖」がつき、少しずつ状況が好転していったのです。

席数減少と見せ方の工夫で繁盛店へ
平日は1日に2〜3組のお客様しか来ない日々が続いていましたが、思い切って土日の半額セールを実施しました。予想を超えるお客様が押し寄せましたが、120席ある店内をわずか4人のスタッフで対応するのは無理があり、オペレーションは完全に崩壊してしまいました。
この経験から、私は席数を120席から50席に減らすことにしました。個室を閉じ、席数を減らすことで、店の前に行列ができるようになり、お店の前を通る人たちにも興味を持ってもらえるようになりました。
他にも、単に半額のチラシを配るだけでなく、全テーブルに半額メニューを置いて、チラシを見ていないお客様にも半額サービスを提供するようにしました。もしも、チラシを見たお客様だけに半額を適用していたら、カウントや客層の分析もできたかも知れませんが、すべてのお客様に一律で半額を適用することで、売上が伸び2〜3ヶ月で売上は2倍になりました。
席数を減らしても、同じ数のお客様が来店すれば行列ができ、自然と繁盛店のように見せることができます。そして、行列ができると、通りがかった人々は「ここに行ってみたい」と思うようになります。
その他にも、私と妻の二人で接客の質向上などにも取り組みました。私は、お金をかけずに見せ方を工夫するのが得意で、そういった小さな工夫が効果を生むと思っていました。
サービスの三大要素意~「事前察知」「顧客認知」「オペレーション」~
私は以前、「HUGE」というレストラン運営会社で働いていた経験があります。そこの経営者である荒川さんは、サービスの神様と称される人物で、サービスの三大要素として「事前察知」「顧客認知」「オペレーション」を重視していました。
「事前察知」とは、お客様が何を求めているかを先読みし、適切な対応を行うこと。「オペレーション」は、タイミングよく商品やサービスを提供する運営力を指します。そして、「顧客認知」は、お客様の名前や好みを覚えることであり、特に地域に根ざした営業においては、この「顧客認知」が重要だと実感しています。
私もこの教えを受け、焼肉店の店長として毎日お客様と接することで、お客様の名前や好きなメニューを覚えるようにしました。さらに、電話番号を登録してお客様の名前が表示される「テーブルチェック」のシステムや、予約システムを導入することで、顧客認知を深めるとともに、オペレーションの効率も向上させています。このシステムは12年経った今でも大変役立っており、店舗運営に欠かせない要素となっています。
先代の顧客データを改善に繋げる
私は、飲食店の売上は、3ヶ月あれば大幅に改善できると思っています。私たちのお店も、工夫やデジタル化を進めることで、徐々に売上が伸びていきました。
例えば、焼肉店では、多くのお客様は3ヶ月に1回くらいのペースで来店されます。そのため、通常は予約システムによる顧客管理の効果が現れるまでに1年ほどかかると思いますが、私たちの場合、両親が経営していた頃からすでに多くの顧客リストがあり、それを活用したことで、短期間で効果を得ることができました。
両親の時代には、半額メニューを利用されたお客様に毎回住所と名前を書いてもっており、そのリストは約2000件を超えていました。私はそのリストをデータ化し、毎月、自作のパワーポイントでハガキを作成し、お客様に送りました。手作りながら、このハガキの反応は非常に良く、約25%のお客様が来店してくれるようになりました。そして、半額チラシなどの広告を出す必要がなくなり、結果として利益率も向上していきました。
毎月送っていたハガキには、新商品やユニークな企画などを盛り込み、単なる価格競争ではなく、コンテンツ重視の方向にシフトしました。
飲食店は、シンプルな基本を徹底することが大切である
半額セールを続けてしまうと、通常価格に戻した時にお客様が来なくなるのでは、と心配する方もいるかもしれませんが、私はそう考えてはいませんでした。客数が一時的に減るのは仕方ないと思っていましたし、たとえ減ったとしても、単価を上げたり、オペレーションを整えたりすることで、十分に対応できると思っていました。
飲食店経営の基本は、しっかりとしたオペレーションを行い、お客様に満足してもらい、リピートしてもらうための顧客リストを作成し、そのリストに基づいて毎月DMを送ることだと思っています。このシンプルな取り組みを徹底することが重要ですが、意外にもこの基本を実践している店は少ないと思います。
私たちが特別なことをしているわけではなく、基本を徹底することで、他の店との差が大きく出てきたのだと思っています。顧客リストを有効に活用することで、経営に大きな変化をもたらす可能性があると、私は強く実感しました。
ちなみに、両親も顧客リストを集めてはいましたが、活用はしていませんでした。「なんでリストを集めているの?」と聞くと、「いや、わからない」と返されたことを覚えています。
第1回は、実家の焼肉店「大将軍」の再生と繁盛店へ導くサービスの三大要素などについてお送りしました。
第2回は、新たな業態への挑戦、「SHOGUN BURGER」の誕生と挫折と成功などについてお送りします。