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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、人生で初めての就職が109のショップの店長。そして、新橋の居酒屋でのアルバイトから経営者、現在は株式会社ドムドムハンバーガーの代表取締役社長をされている藤﨑さんです。
1回目は、専業主婦から予約の取れない居酒屋の経営者になるまでについてでした。
2回目の今回は、ドムドムハンバーガーのとの出会いから代表取締役に就任されるまでについてお送りします。
この記事の目次
店舗の拡大と楽しんでいただくための明確なコンセプト
新橋の最初のお店をオープンして1年半後にたまたま隣の店が空き、2店舗目をオープンすることになりました。その当時はイタリアンバルが流行っていましたので、2店舗目のお店はワインが飲めて、イタリアのおつまみが食べられるお店にしました。でも、レジは1つだけです。
両店舗のレジを1つにして、和風の居酒屋でワインも飲めてピザも食べられる。一方で、洋風な見た目ですが厚焼き玉子も食べられるし、ボトルキープしている焼酎を飲むこともできるお店にしました。
これも当たったのですが、こうした明確なコンセプトって結構大事だと思います。
常連さんを増やすために“心を尽くす”
とはいえ、どうしようという期間が全くなかったわけではありません。
最初のお店をオープンしたばかりの3ヶ月間くらいは、心を尽くすことだけに集中をして、お客様と必死に会話をし、料理も一生懸命作りました。そうしているうちに、徐々に常連さんが増えていきました。
時代背景も良かったのだと思います。SNS、特にfacebookが流行り始めた頃ですので、お客様がこの店いいよとアップしてくださり、お店の評判は口コミで広がっていきました。
最初はぐるなびさんなどのサービスを利用していましたが、口コミの予約の方が多くなったため利用を止めました。
私にとって心を尽くした接客だと思える一例を紹介します。
例えばカウンターに6人のお客様が座っていらっしゃるとします。私はカウンターの中で料理をしながらいろいろお話しをするのですが、カウンターの6人のお客様は、皆さんそれぞれの思いで座っています。
ある方は会社で嫌なことがあって、静かに飲みたい。あるいは、友達を作りたい。1人で来て他のお客様と喋りたい、私と喋りたい、スタッフのノリちゃんと喋りたいなど、皆さんそれぞれ違います。
座っているところは同じであっても、お客様は一人ひとり違いますので、同じ接客をしていては駄目だと思っています。
お客様の顔を見れば静かに飲みたい方はわかりますので、あまり干渉しない。一方で友達を作りたいと思われている方には、そういう方とお引き合わせをします。すると、常連さん同士でお友達になって、お店に来ることが楽しくなります。
また、4人のテーブル席が3つありましたが、大体予約で来られるお客様は決まっていました。
静かに飲みたいお客様と賑やかに飲みたいお客様。その方たちが隣同士になってしまったら少しバツが悪くなってしまいますので、そういう時には隣にどのようなお客様がいらっしゃるのかを事前にお伝えしていました。
例えば、静かなお客様に対しては、「この後こちらに、少し元気な方がいらっしゃいます。ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしいですか?」とお伝えしますと、「お客様は元気な方が良い。」とおっしゃってくださいます。
そして、元気なお客様には、「お隣にちょっと静かに飲まれたい方がいらっしゃいますが良いですか?お店も盛り上がるから、いつもの様に賑やかにしていただきたいのですけれど。」とお伝えしますと、「いいよ、いいよ。」とトーンダウンしてくださいます。
そうすることで、お店の空気がとても良い感じに作り上げられていきます。
ドムドムハンバーガーとの出会い
居酒屋を2店舗経営していて多くのお客様にお越しいただきましたが、その中のお一人に、現在の私どもの親会社であるレンブラントホールディングスの役員の方がいらっしゃいました。
その方が私のお料理を気に入ってくださり、「今度ドムドムハンバーガーを譲り受けることになったので、商品開発の手伝いをしてくれませんか」と言われました。それがきっかけで、2017年の7月に顧問契約をしました。そして9月には社員になりませんかとお誘いを受けました。
しかし居酒屋はもう会社経営にしており、私が社長でしたので嬉しい反面難しいと思いました。ですが、当時50歳で企業に誘っていただいたことがすごく嬉しかったです。
居酒屋のおばさんを社員で引っ張るなんて勇気のある企業だと思いましたし、再生にかける情熱がそういうところで測れると感じましたので、やってみるかということで、2017年の11月に正式に社員になりました。最初は新店舗の店長をやり、4ヶ月程で東日本の16店舗を見るスーパーバイザーになりました。
ドムドムハンバーガーの体質改善のために発言権を獲得しにいく
会社に慣れてきて、自分なりに改善すべきところなどを考えながら仕事をしているうちに、1期目の決算が出ました。決算は私が経営していた居酒屋だと無くなってしまうのではないかと思うほどの赤字でした。
しかし当時の会議は数字の羅列で、予算がいくら、結果がいくらなど、ペーパーを見ればわかることをただ読み上げるだけで、対策についても具体案がないまま「頑張ります」「改善します」という発言ばかりでした。また、取締役会は商品や店舗開発の担当の提案に「はい、わかりました。」と答えるだけです。
しかし、私は実際の店舗を見ていますので「はい、わかりました。」とは言えない。ここがこう変わらないとこの施策はできないとか、新店をこういう風に作るけれども、場所も含めて本当にそこでいいのか?と私は自分で疑問を持つのです。この会社の会議には、そういった発言やコミュニケーションが必要だと思いました。
ですから、その時に感じていたことや具体的な改善案などを進めるためには、会議で発言できる立場にならないといけない。そしてステップアップしたところから、自分がやりたいことの舵取りができる立場にならなければならないと思い、発言する立場にしていただくようお願いしましたが、その時は断られました。
それならば、ということで現状の課題や、それに対する提案をペーパーにまとめてメールで送りつけ、電話をして夢を語っていたところ、根負けしたのでしょうか、役員になってくださいと言われました。
その時はすごく嬉しかったのですが、「つきましては代表取締役で」と言われた時には、椅子から転げ落ちそうになりました。
一つ一つの改善を大局に繋げる
個人経営のマネジメントとチェーン店のマネジメントは違うと思われるかもしれませんが、私自身は大きなことをしたことがなく、経験が不足していることもあってか、足元をしっかり見ることができるのです。ですから、私がやることは、一つ一つ改善していくということだけです。
この大きい組織の中でも、目の前にあることを一つ一つ改善をしていくと、それが大局に変わることがあると思っていましたので、一つ一つ改善していくことだけを心がけました。
スタッフとのコミュニケーションが店舗の改善の第一歩
マクドナルドなどは細かくマニュアル化されているイメージですが、ドムドムハンバーガーは全く駄目でした。レタスやオニオンの位置など、ハンバーガーがお店によって違っていたのです。まず、そういうところから改善する必要がありました。
しかし、改善しなければいけないとは思ったものの、具体的なことを改善するよりも前に、私が社長になってスタッフは不安だろうと思いました。
ならば、まず現場で働いているスタッフがお客様と一番接点があるのだから、お客様の声を一番聞いているスタッフの声をしっかり聞いてコミュニケーションを取ろうと思いました。優しく丁寧にコミュニケーションをとるだけで、信頼関係ができて社内風土も変化し、オペレーションのミスも減っていくのです。