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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、株式会社アドウェイズの取締役会長であり、同時に「オールドルーキーサウナ」の店長を務める岡村陽久さんです。インターネット広告業界で成功を収めた後、サウナ業界に新しい風を吹き込み、ITの力を活用した無人運営のサウナを展開しています。
岡村陽久さんが、株式会社アドウェイズの取締役会長としてのキャリアを経て、新たに「オールドルーキーサウナ」を立ち上げ、ITを活用した無人サウナ運営という独自のビジネスモデルを展開するまでの経緯や、サウナ事業への挑戦、そして今後の展開について、3回に分けてお送りします。
第1回は、株式会社アドウェイズの創業、上場、そしてサウナ事業を始めるに至った経緯についてお送りしました。
第2回は、「オールドルーキーサウナ」の無人運営の仕組みや、徹底したマナー管理についてお送りしました。
第3回は、今後の展望や新しいエコノミー版の「オールドルーキーサウナ」についてお送りします。
この記事の目次
お客様の協力があってこそ成り立つ無人サウナ
オールドルーキーサウナは無人で運営しているため、忘れ物やガス給湯器のトラブルに加えて、清掃の問題も発生することがあります。例えば、タオル返却口にタオルが溢れたり詰まったりすると、見た目が悪くなりクレームが出てしまいます。
そこで、銀座店以外の店舗では、タオル返却口に2つの回収ボックスを設置し、「血液型がA型とAB型の方は手前に、O型とB型の方は奥にタオルを入れてください」とお願いしています。すべてのお客様が手前にタオルを入れるとすぐに溢れてしまうため、血液型でお客様を2つに区分することで、タオルの回収がスムーズに進む仕組みを整えています。
このように、オールドルーキーサウナはお客様の協力があってこそ成り立っています。そのため、他では体験できない「熱々のサウナ」や「キンキンの水風呂」を提供し、シャンプーには「バルクオム」などの高級品を用意するなど、質の高いサービスを心がけています。こうした高品質なサービスを提供することで、お客様にも「ここまでやってくれているなら協力しよう」と思っていただける環境を作り、参加型のサウナ運営が成り立っています。
さらに、私たちのサウナは「熱々」と「キンキン」を求めるベテランのお客様が集まりやすく、そうしたお客様は非常に丁寧に施設を利用してくださるため、無人サウナであっても快適な環境が保たれています。
夜の清掃は清掃会員さんにお任せ
お店の立ち上げ時には、私自身が現場に入り、トラブル対応や細かい調整を行っていました。そして、パターンが見えると、作業をアルバイトに引き継ぎます。アルバイトは時給ではなく、1店舗あたりの単価で支払っていて、時間をかけてもかけなくても構いませんが、私が教えた方法で清掃を行うことで、効率的に作業を進められるというメリットがあります。
作業の質を担保することも重要です。清掃の水準を維持するために、私は不定期に店舗を巡回してチェックしており、どの店舗を訪れるかは知らせていないため、アルバイトの方々は「いつ来るか分からない」という意識を持ち、しっかり取り組んでくれています。
さらに、昼間の清掃はアルバイトが担当しますが、夜の清掃は「清掃会員さん」にお任せしています。この仕組みでは、サウナを無料で利用できる代わりに清掃をお願いしています。夜に30分の清掃を行うことで、通常2500円相当のサウナに無料で入れるうえ、さらに1100円をお渡しするという内容です。この制度は非常に人気があり、サウナを本当に愛するお客様が、非常に丁寧に清掃をしてくださっています。
お客様に「いい意味で働いてもらう」環境を作ることが、お店にとって非常に大事だと感じています。
店舗拡大の課題
現在、「オールドルーキーサウナ」は4店舗を展開していますが、次のステップとして「オールドルーキーエコノミー」での多店舗展開を計画しています。このモデルが成功すれば、最終的には200店舗まで拡大したいと考えています。
しかし、サウナの出店には大きく3つの課題があります。
1つ目は、物件オーナーの許可を得ることです。オーナーがサウナの出店を認めなければ、物件の契約を進めることができません。
2つ目は消防法の問題です。例えば、2方向避難が可能な物件であるなど、法律上の制約があります。このため、物件は限られており、候補物件が絞られてしまいます。
3つ目は設備の問題です。水道管やガス管が十分に太くなければシャワーやお湯が正常に供給されませんし、電力供給量が不足していると、サウナを運営するための電力が賄えません。さらに、水風呂を設置するためのスペースや配管の整備も必要です。
これらの条件を満たす物件は少なく、30件の物件を見たとしても、契約に至るのは1件あるかどうかという厳しい現実があります。
サービスに対する強すぎるこだわり
今後、200店舗を目指すにあたって、まずは50店舗ほどまでは直営で進めようと考えています。その後、フランチャイズ(FC)展開を検討していましたが、サウナに対する私のこだわりが強すぎることが課題になると感じています。例えば、サウナの温度を少し下げたり、水風呂の温度を上げたりすれば、もっと多くのお客様が来てくださるかもしれませんが、それでは「オールドルーキー」らしさが失われてしまいます。
私は、オールドルーキーにしか提供できないサービスを通して価値を届けたいという思いが非常に強く、そのこだわりに誰もついていけないのではないかと感じています。したがって、現在はFC展開ではなく、直営で200店舗を目指す方針で進めています。
そのため、単なるビジネスとしてのFCではなく、私の信念を引き継いでくれる方への「のれん分け」を検討しています。半年から1年の修行を経て、なぜ「熱々キンキン」にこだわるのか、その根本的な理念をしっかり理解した上で、店舗を運営してもらえる方に任せたいと考えています。
サウナの無限な可能性
サウナに一度も入ったことがなかった私が、なぜ強いこだわりを持つようになったのか。それは、サウナに無限の可能性を感じたからです。
私の中学校の同級生で、女性誌の編集長をしていた友人がいました。出版業界の仕事は非常に不規則で、彼は不眠症に悩まされ、さらにうつ病を患い、5年間ほど家に引きこもってしまいました。
そんな彼に、私はサウナでアルバイトをするよう誘い、サウナに自由に入ってもらいながら働いてもらいました。すると、1ヶ月ほどで病院の先生から「うつが治った」と言われたのです。彼はそれまで重度の不眠症で、3日間眠れないこともあったのですが、サウナに入ることで徐々に眠れるようになり、結果的にうつ病も改善しました。
この経験から、人はしっかり眠れるようになると、多くの問題が解決できるのだと感じました。健康な人でも何かしらの悩みを抱えていることはありますが、サウナに入るとその悩みを忘れてしまうことが多いです。特に、オールドルーキーサウナは、その熱さによって、悩みを考える余裕すら与えないという点が特徴なのです。
サウナに入って、それでも悩んでいたら、それが本当の悩み
オールドルーキーサウナにはもう一つのコンセプトがあります。それは「サウナに入って、それでも悩んでいたら、それが本当の悩みだ」というものです。サウナに入った瞬間、直感的に感じるのは「転んだら死ぬかもしれない」という命の危機です。そして、冷たい水風呂に入ると、「助かった」と感じ、極上のリラックスが得られます。その瞬間には余計なことを考える余裕はなく、3セット(約1時間)する間、何も考えずに過ごすことができるのです。
1時間何も考えずにいると、1時間前に何を悩んでいたのかすら思い出せなくなります。この「熱々」「キンキン」の体験を通じて頭を真っ白にし、家に帰ってぐっすり眠り、翌朝すっきりと目覚めたときには、「今日も頑張ろう」という気持ちになれると思います。私は、この体験をお客様に提供したいと考えています。
オールドルーキーのサウナやカフェは、現時点ではまだ大きな利益を生んでいませんが、最高の施設を作り上げれば、いずれは利益が出ると信じています。そういった施設が増えれば、最終的には大きなビジネスへと成長するでしょう。