「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、花を贈れるサービス”花キューピット”を展開する花キューピット株式会社代表、𠮷川登さんです。昭和28年創業、来年で70周年になるという花キューピット。実は社長の𠮷川さんは元々起業をしてIPOをし、上場企業の社長を10年以上やった経験の持ち主です。そんな人が花キューピットに惹かれたのは一体なぜなのでしょうか。言われてみるとほとんど知らない人も多いであろう花業界について深ぼっていきます。
𠮷川さんのお話を紹介する1回目は、?川さんが花キューピットの社長になった経緯についてです。
この記事の目次
花を贈れるサービス”花キューピット”!なんと創業70周年
花キューピットはさまざまなお花をお贈りいただけるサービスです。昭和28年に「日本生花通信配達協会」という名前ではじまり、来年で創業70周年になります。
当時はお花を遠くに届けるのが難しかったのですが、とあるアメリカ兵が「日本からアメリカに花を送りたい」と言っているのを聞いたことをきっかけに、近所の花屋から目的の場所に花を贈れるサービスが作られました。
昭和28年の段階でAmazonのようなシステムを構築
元々はアメリカにあったビジネスモデルだったのですが、日本もこれから景気がよくなって復興していけば欧米のように花を贈り合う文化ができるのではないかと思ったようです。
逆にそれをすることでフラワーギフトが広がり、お花屋さんの業界も大きくなっていくはずだという確信もありながら、最初は手紙を8つの花屋さんに出して交渉し、加盟店22店舗からサービスがスタートしたと聞いています。
当時はクール便なんかもないので、近所の花屋さんがグルーピング(花束を作ること)をしてから贈るシステムは花をうまく届けるのに最適だったようです。
午前中に頼めば夕方には届くというスピード感もあって、Amazonのようなサービスを昭和28年からやっていることにすごく驚いたことを覚えています。
上場企業社長を10年以上やってから、ビジネスモデルの面白さに惹かれてジョイン
僕は元々住友商事にいたのですが早々にスピンアウトし、自分で会社を作ってIPOをし、上場企業の社長を10年以上やっていました。
途中いくつかの会社のメンターやエンジェルなどをやっているときに、花キューピットの社長が僕の若い時の上司だったんです。その人とご飯を食べている時に「この業界は右肩下がりで、若い子も花離れをしていて、花キューピットのブランドも古くなってきている。これをどうしたらいいか一緒に考えてくれないか」と相談を受けました。
僕は元々IT業界にいてお花のことは全く知らなかったので「とりあえず見させてもらって、面白かったらやります」とお答えして、花キューピットのビジネスモデルを調べてみました。すると今日注文したら今日届くということや、Uber Eatsのようなシェアリングエコノミーになっていることを知り「こんなに面白いことを何十年も昔からやっていたのか」と驚き、是非やらせてくださいと話して5,6年前から社長をやっているという流れです。
お花は普遍的な商品!トレンドに左右されないという強み
お花屋さんをやっている人たちはみんなピュアで、花に対してすごく真剣に取り組んでいるのですが、どうしてもコミュニティが狭いので外のトレンドに関してはあまり頓着しない人が多いです。また、お花の特徴としてそれ自体が変化するものではないというのも重要です。
なので、売り方もあまり変化しません。昔から結婚式もお葬式も誕生日もあるので、そこに対する商品も変わらないのです。
これはある意味すごくプラスで、10年後も20年後も商品価値が劣化しないということを示しています。
トレンドにあまり左右されないので、その辺りは気にしなくて済むという側面もあります。Web3.0やNFTのようなものが流行り出しても全然知らなくても仕事ができるのです。
ただ、トレンドがどんどん変わってきて、お客さんの嗜好が変わってきて、買い方も変わってきて…ということが起きているのにも関わらず商品とか商売の仕方が変わらないことによるギャップも存在します。
特に若い人たちにあまり届いていないということをどうにかしなくてはいけません。だから私の役目は、お花の良さをうまく伝えて、花キューピットの存在を知ってもらい、利用してもらうためにどのような発信をすれば良いかを考えることなのかなと思っています。
昔の人がお花を好きだったのは「家に人が頻繁に来ていたから」?
一世帯あたりの年間のお花の消費額は年々減っていて、一時は1万2000円くらいだったのですが、今や8000円前後になってしまっています。
その中でも60歳以上が1万円以上買っていて、そこから下の世代はずっと平均以下で10代20代に至っては1000円,2000円くらいしか使っていません。
これは一体どうしてなのか、と考えてみました。
生まれた時は人間はみんな一緒ですから、お花を好きな人はどこかでお花を好きになるタイミングがあったはずです。ここに再現性があるのなら、若い人たちにも同じ経験をさせることによってお花をどんどん買ってくれるようになるのではないかと思いました。
そうして考えてできた一つの仮説は「昔は家に人が頻繁に来ていて、最も安価なインテリア商材である花が利用されたのではないか」というものです。
昔は応接間もありましたし客間もあって人がくるのが当たり前でした。だから私たち世代の母親は靴を揃えなさいとしつこく言っていたのだと思います。
今では旦那さんやお父さんが夜遅くに同僚や後輩を連れてこようもんなら大変なことになる時代です。このように家に人が来る機会は徐々に減っていき、それとともに装飾的に家に置く花の需要がなくなっていったのではないでしょうか。
この間文部科学省の人に聞いたのですが、今は家庭訪問なんかもなくなっているそうです。実際、家庭訪問がある時はお花と饅頭が売れる、というのは昔からよく言われていました。
昔は花嫁修行としてお花が選択肢にあった
また、もう一つの仮説は「昔は花嫁修行の三種の神器としてお茶・お花・料理という文化があった」というものです。特にお花が好きなわけでもなかったけどいいとこのお嫁さんになるためにお花を習うという人が結構いたのではないかと思います。
そうして何週間か稽古をすると自然とお花の知識もついてきて、家に人が来る時にはお花を買うという選択肢が生まれ、そこから習慣となっていったのではないでしょうか。
こうしてお花に接する時間が多くなると、自然とお花のことを好きになっていき、なかったらちょっと寂しくなるという感覚が根付いていくのだと思います。
タッチポイントを増やして、お花について考えるきっかけを作る
今の若い子たちに「お花を習いに行ったりはしないの?」とヒアリングをしてみると、ヨガや旅行など別のところで教養を得ようとしていることがわかりました。
そもそも花嫁修行という概念が希薄になってきているので、そういう時代ではないのかもしれません。
だとするとタッチポイントを増やしていかなくてはいけないと思っていて、そのために母の日のようなお花がもらえるような記念日をできるだけたくさん作っていきたいです。できるだけいろんなところに協賛を細かくしていって、お花に触れる機会を増やしていきます。
そもそもお花について考えることが全くない人もたくさんいるので、考えるきっかけだけでも作っていかないと新規開拓は厳しいと考えています。
今回のお話はここまでです。次回は、花キューピットのビジネスモデルについてです。