居酒屋の開業をするには、いくつかの資格を取得し、正規の手続きを取る必要があります。思いつきで居酒屋を開業して成功することは難しく、しっかり準備をしておくことが大切です。
本記事では、居酒屋を開業するために必要な資格や手続き、集めておくべき開業資金について紹介します。この記事を読んで、居酒屋開業に向けて取り組みましょう。
この記事の目次
居酒屋開業の際に必要な資格・手続き
居酒屋開業の際に必要な資格は、食品衛生責任者と防火管理者の2つです。また、開業にあたり、飲食店営業許可の申請と深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の提出をしなければなりません。この段落では、各資格や手続き内容について解説します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、飲食店を運営する上で必須の資格です。食品衛生法第51条において、飲食店に設置することが決められています。食品衛生責任者は、食品の衛生管理を行う役割を担っており、お客様が安心して食事をするために重要な資格です。
地域によって現役高校生は受講対象から除外されている場合がありますが、基本的に17歳以上であれば誰でも、食品衛生責任者養成講習を受講することで取得できます。
具体的な講習内容は、食品衛生学や食品衛生法、公衆衛生学など食品管理に必要な知識です。講習時間は6時間で、最後に小テストを行う地域もあります。受講料に関しても地域によって差がありますが、1万円前後が一般的です。
受講する際は事前予約が必要で、電話やインターネット等で申し込めますが、人口が多い地域は予約がすぐに埋まるため、早めに予約することをおすすめします。10時から17時(間に休憩時間を含む)の講義を受けたら、その場で修了証書を受け取って終了です。
なお、栄養士や調理師、製菓衛生士、船舶料理士などの資格を取得している方は、食品衛生責任者の講習を受ける必要はありません。
参考:「食品衛生法第51条」
防火管理者
防火管理者は、飲食店において店舗の収容人数が30人以上の場合に必要です。消防法により、対象店舗は防火対策として防火管理者を選任しなければなりません。防火管理者には甲種と乙種があり、店舗の延べ床面積が300平方メートル以上の場合は甲種、300平方メートル未満の場合は乙種の講習を受講しましょう。講習内容については、以下の表のとおりです。
- 講習種目
- 講習内容
- 講習時間
- 受講料
- 甲種
- 防火管理の意義及び制度
火気管理、施設・設備の維持管理
防火管理に係る訓練及び教育
防火管理に係る消防計画など - 約10時間
(2日間制) - 8,000円
- 乙種
- 防火管理における基礎的な知識及び技能
- 約5時間
(1日間制) - 7,000円
防火管理者講習も事前予約が必要なので、日本防火・防災協会ホームページまたはFAXで申込みを行いましょう。
参考:「日本防火・防災協会ホームページ」
飲食店営業許可の申請
保健所に対して飲食店営業許可の申請をしなければなりません。事前に保健所に連絡をして、担当者に施設検査をしてもらいます。飲食店営業許可の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 飲食店営業許可申請書
- 営業施設及び設備の図面
- 水質検査成績書(貯水槽や井戸水を利用する場合)
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類(食品衛生責任者手帳など)
- 店舗場所の見取り図
- 登記事項証明書(法人が申請する場合)
また、申請時に手数料を納める必要があり、地域によって設定金額は異なります。ちなみに、東京都の場合は18,300円です。
店舗の工事の完了から期間を空けずに営業を開始したい場合は、工事が完了する前に申請しておくことをおすすめします。一般的には、申請から2~3週間程度で営業ができる状態になるため、遅くとも工事完成予定日の10日前には申請しておきましょう。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜0時以降も営業する場合は、所轄の警察署に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出する必要があります。具体的には、深夜0時から午前6時までの間にお客様に対してお酒をメインに提供する飲食店が対象です。
たとえば、居酒屋やバーなどが該当し、開店前に提出することが求められます。ちなみに、お酒をメインに提供しないレストランやラーメン店等は0時以降営業していても届出する必要はありません。
保健所から飲食店営業許可を取得したのちに、必要書類を揃えて所轄の警察署の窓口で深夜酒類提供飲食店営業開始の届出を行いましょう。届出に必要な書類は以下のとおりです。
- 営業開始届出書
- 営業の方法が分かる書類
- メニューの写し
- 営業所平面図、営業所面積求積図、客室面積求積図、音響照明設備配置図
- 申請者の住民票(本籍地記載)
- 保健所の飲食店営業許可証の写し
また、法人として届出をする場合は、追加で以下の書類が必要です。
- 法人登記簿謄本(登記全部事項証明書)
- 法人の定款の写し(原本確認が必要)
- 役員全員分の本籍地記載住民票
届出から10日後に営業が可能なので、開店予定日の10日前には手続きを済ませましょう。
居酒屋の開業資金
居酒屋の開業に必要な資金について解説します。開業資金は大きく分けて、初期費用と運営資金の2つです。各資金の目安と内訳についてまとめているので、資金確保の参考にしてみてください。
初期費用の目安と内訳
居酒屋開業の初期費用の相場は600万円程度ですが、店舗の立地や工事内容によって1,000万円を越える場合があります。初期費用は大きく分けて物件取得費と設備投資費の2つです。
物件取得費は、店舗に使う物件を確保するために必要な費用で、保証金や礼金、仲介手数料などが発生します。仮に1カ月の家賃が20万円、敷金が10カ月分だった場合に必要な費用の目安は以下のとおりです。
- 前家賃
- 20万円
- 敷金(保証金)
- 200万円
- 礼金
- 20万円
- 仲介手数料
- 20万円
- 合計
- 260万円
家賃によって大幅に変動するため、余裕を持って家賃の15倍程度(家賃が20万円の場合は300万円程度)は確保しておくとよいでしょう。
一方、設備費用は内装工事にかかる費用で、内装のこだわりや居抜き物件かどうかで変わります。居抜き物件の場合は、必要な設備がすでに揃っているため、設備投資を抑えることが可能です。スケルトン物件の場合は、すべての設備を新調しなければならないため、費用が高額になります。設備費用にかかる費用の平均は以下のとおりです。
- 内装・外装工事
- 居抜き物件:10~30万円
スケルトン物件:20~70万円
- 厨房設備
- 中古:~100万円
新品:~250万円
- POSシステム
- 10万円程度
スケルトン物件で、厨房設備をすべて新品で揃えると300万円を超える可能性が高く、居抜き物件ですべての設備を中古で揃えれば100万円程度に抑えられる可能性もあります。あくまで目安なので参考程度にとらえる必要がありますが、少なくとも600万円は用意しておいた方がよいでしょう。
運営資金の目安と内訳
居酒屋を開業した後もあらゆる項目の費用が発生します。運営資金の主な項目は以下のとおりです。
- 材料費
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
まず、料理やドリンクを提供するためには、材料を仕入れる必要があるため、その分の費用がかかります。また、従業員を雇う場合は、給料を支払わなければなりません。他には、店舗の家賃や水道光熱費は毎月必ず発生し、場合によっては宣伝活動にお金をかけることもあります。
毎月の運営コストは、基本的には売上から抽出することになりますが、開業して軌道に乗るまでは十分な売上が確保できるわけではありません。居酒屋の場合、開業から軌道に乗るまで約半年かかるといわれているため、店舗運営に集中できるように半年分の運営資金は確保しておきましょう。
特に人件費と広告宣伝費が多くを占めることになるので、店舗規模と想定売上から調整して、毎月の運営資金の目安を定めておくことをおすすめします。
居酒屋の開業するまでの手順
居酒屋を開業するまでの手順について一通り紹介します。大まかな流れは以下のとおりです。
- コンセプトを定める
- 事業計画を練る
- 物件を決める
- 融資を集めるなど資金を調達する
- メニューを開発する
- 必要設備を用意する
- 従業員の求人募集をかける
- 集客のために宣伝活動をする
- プレオープンで実践練習を行う
居酒屋を成功させるためには、入念に準備することが大切です。コンセプト決めからオープンまでのスケジュールを管理して、しっかり時間をかけて準備に取り掛かりましょう。
コンセプトを定める
居酒屋を成功させるためには、コンセプトを定めることが大切です。コンセプトとは基本方針のことで、店舗のテーマを意味します。つまり、どのような店舗にしたいのかを決めることがコンセプト決めです。
居酒屋といってもさまざまな種類の店舗があり、低価格帯でたくさんの方に来店を促す店もあれば、高価格帯で高級志向のある方に極上の時間を提供する店もあります。また、和食中心のメニューで固めている店もあれば、イタリアンに寄せた料理を揃えている店もあるなど、居酒屋のジャンルは豊富です。
数多くの居酒屋が乱立する中、事業を成功させるには、他店との差別化が必須で、独自の戦略を立てるには、コンセプトを明確にしておく必要があります。たとえば、店舗のテーマを決めるには、以下のような項目が重要です。
- ターゲット層
- 提供するメニューの種類
- 価格帯
- 店舗の強み
コンセプトによって目指すべき店舗の姿がガラッと変わるので、最初にコンセプトを決めておきましょう。
事業計画を練る
コンセプトを実現するための事業計画を策定します。定めたコンセプトをもとに、より具体的にイメージすることがポイントです。たとえば、ターゲット層が20~30代の女性、洋食メインかつ低価格設定をコンセプトにし、店長が女性という強みがある店舗だとします。
このような場合、コンセプトに合わせて女性でも食べやすい一口メニューを増やしたり、デザートメニューを強化したりするなど、女性視点を生かした構想をすることが重要です。他にも、女性がお酒を楽しめるように、カラフルな色彩を意識したものや度数が弱めのものを豊富にすることも高い効果が得られるでしょう。
具体的に店舗の運営方針を決めたあとは、目標客単価や目標回転率を定め、実現できるように料理の値段や提供方法、スタッフ体制等を決めていきます。なお、値段に関しては、原価等が関わるため、この段階では大まかな価格帯を決めるだけで問題ありません。
物件を決める
店舗の方針が具体的になったら、物件を探します。特に物件の立地や広さは、売上に直結するほど極めて重要な要素です。絶えず人が行き交う通りに面しているだけで、ある程度の集客が見込め、収容人数が大きいほど多くのお客様を同時に迎え入れることができます。
ただし、条件が良い物件だからといって必ずしもすべての店舗に適しているわけではありません。条件が良くなるほど家賃は高くなるので、低価格帯で料理を提供したい店舗では、理想の店舗運営を実現するのが難しくなる可能性があります。また、隠れ家のようにひっそりとした落ち着いた店舗をコンセプトにする場合は、かえって人通りが少ない方が適している場合もあるでしょう。
そのため、コンセプトに照らし合わせた上で、物件を選ぶことをおすすめします。なお、少しでも支出を抑えたい方は、居抜き物件を探してみましょう。小規模の改修工事で済むので、低予算で設備を整えることができます。
融資を集めるなど資金を調達する
必要な資金を融資などで集めましょう。初期費用の約600万円に加えて半年分の運営資金を用意しなければならないため、基本的には金融機関から融資を受けることになります。ただし、満額の融資を受ければ多額の借金を負うことになるため、自分で開業資金の3分の1を用意し、融資で残りの3分の2をまかなうのが一般的です。
なお、個人が銀行から大金の融資を受けることは難しいため、日本政策金融公庫からの融資や、自治体が設けている創業補助金などの補助金・助成金を利用しましょう。
メニューを開発する
コンセプトに合わせたメニュー表を作りましょう。メニューは店舗の顔であり、コンセプトを体現するための要素でもあるので、メニュー決めは店舗の命運を左右する極めて重要な作業です。
想定している客層が好んで注文してくれるように、料理名や見た目、味、値段を決めましょう。なお、値段を決めるときは、原価率を計算して理想の利益を出せるように設定することがポイントです。
必要設備を用意する
厨房設備以外の必要設備も用意する必要があります。たとえば、店舗運営に必要な設備は以下のとおりです。
- レジ
- パソコン
- 電話機
- タイムカードなど
居酒屋は高額会計になりやすいことからキャッシュレス決済に対応する必要があり、売上管理が重要なので、POSシステムが搭載されたPOSレジの導入がおすすめです。POSレジを導入することで、料理やドリンクの売上動向を追うことができ、金銭の管理が簡単になります。
スマレジでは、居酒屋に対応したPOSシステムを提供しており、業務効率をアップすることが可能です。中でもスマホのように簡単に操作できるスマレジ・PAYGATEはおすすめで、マルチ決済に対応できます。POSシステムに興味のある方は、スマレジ・PAYGATEの公式ページで詳細をご確認ください。
従業員の求人募集をかける
スタッフ体制が整うまで従業員の求人募集をかけます。スタッフ採用は、開店まで3カ月を切る頃から募集をかけ、オープンに備えて研修を行いましょう。ちなみに、必要なホールスタッフ数の目安は、「収容人数÷テーブル数÷4」といわれています。
たとえば、収容人数が100人でテーブル数が10であれば、100÷10÷4=2.5となり、この場合3人のホールスタッフが適正人数です。ただし、従業員は毎日働くわけではないため、ホールスタッフの適正人数を確保すればよいわけではありません。一人の従業員が週に1〜2日しか入らなくても回るように、従業員は揃えておきましょう。
集客のために宣伝活動をする
オープン前は、集客のために宣伝活動も行います。宣伝方法はさまざまで、たとえば以下の方法が効果的です。
- チラシのポスティング
- SNSによる情報発信
- ホームページ・ブログ作成
- 口コミサイトに登録
宣伝活動の王道はチラシのポスティングです。一からパソコンで自作したりチラシ制作会社に依頼したりすることでチラシを用意し、周辺の住民に直接配ることで店舗の認知を図ります。
また、SNSの利用もおすすめで、ツイッターやインスタグラム等で情報を発信することで、コミュニティの形成が可能です。コストを抑えたい方は、自作のチラシやSNSを活用しましょう。
プレオープンで実践練習を行う
開店前にプレオープンすることで、本番に向けて最終調整を行うことが可能です。実際にお客様を相手に接客することで、想定と異なる場面が多々生まれることがあります。たとえば、スタッフの人数や用度品等の保管場所等は、実際に働いてみてはじめて適正かどうか分かることです。また、研修ではほとんど想定しないレジや調理機器のトラブルが多発することもあるでしょう。
本開店前に実践練習をし、オペレーション等を再確認することで、本番を迎えたときにスムーズに業務を行えるようになります。研修と実践では、得られる経験値が異なるので、本番形式で練習を行うことは非常に大事です。
居酒屋の開業に向けて準備しよう
居酒屋の開業のためには、必要な資格を取得し正規の手続きを取ることが求められます。また、開業のために必要な資金調達をしておくことも大切です。居酒屋を成功させるためにはオープン前の段階が最も重要なので、スケジュールを立ててしっかり準備をしておきましょう。
なお、POSレジの導入を検討している方には、スマレジをおすすめします。居酒屋の運営に便利な機能が揃っているので、興味のある方はお気軽にご相談ください。