年末調整では社員やパートスタッフに所定の書類を記入・提出してもらい、添付書類を含めて内容のチェックが必要です。各種控除の計算もあり、頭を抱える人事労務の担当者も多いことでしょう。
この記事では、年末調整の社会保険料控除で悩む担当者のために、基本的な事柄を解説します。年末調整を効率よく行うために、参考にしてください。
この記事の目次
年末調整における社会保険控除とは?
まずは社会保険料控除について説明します。
社会保険料控除とは、その年に支払った社会保険の金額を1年の所得から差し引くことです。所得税は各種控除を適用させた金額に対して課せられるため、控除を忘れると収めるべき税金負担が増えてしまいます。
毎月、給料から天引きしている所得税は給与の見込額で計算しているため、年末に所得を再計算する必要があります。再計算時は対象となる各種保険料も見直したうえで、所得税を算出します。
社員のなかには、一緒に暮らす配偶者や親族の社会保険を支払っている人もいるでしょう。また、年の途中で入社した社員は、入社以前に加入していた社会保険の支払いがあります。
このようなケースも考慮して、給与から天引きした社会保険以外に支払った保険料は、年末調整で計算し直します。
健康保険、国民年金、厚生年金保険など、社会保険控除の対象
社会保険のなかで控除できる代表的なものは、下記の通りです。
- 健康保険料
- 厚生年金または国民年金の保険料
- 厚生年金基金または国民年金基金の掛金
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 後期高齢者医療制度による保険料
この他にも海上で働く船員が加入する船員保険や、農業従事者が加入する農業者年金、公務員や教員を対象とした共済金の掛金なども対象です。ここでは一般的な会社員が支払う可能性の高い保険について解説します。
健康保険は医療費の財源であり、75歳未満の人は何らかの健康保険への加入が義務付けられています。会社員の場合は組合健保や協会けんぽに加入します。また、組合健保などは雇用期間の定めがない正社員および一定条件を満たすパート従業員も対象者となります。企業に就職していない自営業者や学生、無職者などは国民健康保険に加入します。
厚生年金保険は年金の財源であり、会社勤めをしている69歳以下の人が加入対象となります。会社勤めでない自営業や公務員の人は、国民年金保険に加入します。年金を上乗せするために加入する、厚生年金基金または国民年金基金の掛金も、従業員の負担分については控除の対象です。
中途採用者の場合、前職の会社で加入していた社会保険も控除対象になります。他にも、納付猶予をうけた過去の国民年金や子の国民年金を支払っているならば、それらも控除を適用できます。
介護保険は介護サービスを受ける際の財源で、対象者は40歳以上65歳未満の従業員です。一定の条件を満たす場合はパート従業員も加入対象になります。
雇用保険は失業や産休・育休、介護休暇などで無収入になった人への給付金の財源です。週20時間以上雇用される人は加入対象ですが、30日以下の短期雇用者は対象になりません。また、公務員や自営業者、法人の役員、家族従業員、学生も対象外となる保険です。
健康保険は75歳未満が対象ですが、75歳以上になると後期高齢者医療制度による負担があります。従業員自身が対象者として支払うだけでなく、生計を一にする配偶者や両親の保険料を支払うケースもあるでしょう。その場合、支払った人の社会保険控除に含めます。
控除対象外の社会保険
社会保険のなかには、控除が適用されないものもあります。具体的には以下の例が挙げられます。
- 任意に組織された共済制度に基づく会費
- 医療給付を受けたものが負担する費用
- 非課税の在外手当に対する保険料
- 給与の支払い者が負担した保険料
社員の福利厚生のために企業が任意に定めた共済制度の会費は対象となりません。病院をはじめとする医療機関を受診した場合に支払う、本人負担分の医療費や海外赴任する従業員の手当に対する保険料も適用外です。
また、健康保険や雇用保険などは労使折半されており、従業員と企業側がそれぞれに負担しています。従業員の負担分は控除しますが、給与の支払い者である企業側の負担分は対象外です。
成人した子供の国民年金保険料を払っても、別居なら生計を一にしているとみなされず、控除対象外となります。ただし、仕送りなどで定期的な生活援助をしているなら、生計を共にしているものとして控除対象にできます。
保険控除申告書の書き方(記載項目)
社会保険料控除をするには社員に「給与所得者の保険料控除申告書」を記入してもらうことが必要です。年末調整の担当者は書き方を聞かれたり、書類確認したりするので、記載項目について把握しておきましょう。
申告書には、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除の欄があります。給与天引き分以外に支払った分があれば、社会保険料控除の欄に以下の項目を記載してもらいます。
- 社会保険の種類
- 保険料支払先の名称
- 保険料を負担することになっている人の氏名と続柄
- 本年中に支払った保険料の金額
- 保険料の合計(控除額)
種類と支払先の名称は、該当する社会保険の名称と支払先を記入します。例えば国民健康保険なら、支払先は該当する市町村名です。転職した人なら前職で加入していた健康保険の保険組合となり、支払先にはこの組合名を記入します。
保険料を負担することになっている人との続柄については、実際に支払った人から見た本来の負担者を示す名称を記入します。配偶者の負担分を支払ったなら「妻」や「夫」、両親なら「父」「母」、息子や娘なら「子」です。
そして、その年の1月から12月までの間に支払った金額と、各種保険を合計した額を記入します。11月や12月の時点では、まだ払っていない保険料もあるでしょう。その場合も未払分を含めた、1年間の支払予定額を記入します。
社会保険料控除額の計算方法
年末調整で控除する保険料のうち、地震保険や生命保険は所得から差し引く上限額があります。しかし、社会保険については限度額がありません。対象となる社会保険については、すべて所得から差し引けます。
控除額の計算は、給与から天引きした1年間分の社会保険と社員が申告した社会保険の内容を確認し、合計します。
例えば転職して5月に入社した従業員であれば、1月から4月までに所属していた会社で支払った額と、5月から12月までに給与から天引した額を合算。さらに配偶者や子供などの保険料を支払っているなら、その金額を合わせたものが、社会保険料の控除額となります。
保険控除申告に必要な証明書
保険の控除申告には内容確認のため、添付書類が必要です。必要な証明書類は保険の内容によって異なります。該当する証明書を従業員から提出してもらい、内容を確認しましょう。
国民年金や国民年金基金の場合「社会保険料控除証明書」が必要となり、毎年10月から11月に送付されます。前職の会社で支払った健康保険や厚生年金は、源泉徴収票で確認できます。前職の職場から発行された今年の源泉徴収票を提出してもらいましょう。
生命保険控除や地震保険控除については、保険料の控除証明書を提出してもらいます。各保険会社が発行しているので従業員から回収しましょう。
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