働き方改革関連法によって、これまで以上に適切な勤怠管理が求められるようになりました。勤怠とは何か、どのようなことを管理するべきか、労務管理に携わる人は改めて確認しておく必要があります。
この記事では、勤怠および勤怠管理に関する基本的な知識について解説します。適切な勤怠管理体制を整えるうえで参考にしてください。
この記事の目次
勤怠とは?
勤怠とは、出勤と退勤の状況を示します。何時に出社し、何時に退社したか、どれくらい休憩し、どれくらい休暇をとったか、有給を何日消化し、あと何日残っているかなどを管理することが勤怠管理です。
勤怠管理をする目的
勤怠管理をする目的は、就業時間の管理だけではなく、給料の管理や、コンプライアンスにも関わります。ここでは勤怠管理をする目的について解説します。
従業員の就業時間・労働時間を把握する
勤怠管理の目的は、従業員の就業時間や労働時間を把握することです。従業員が何時間働き、残業を何時間しているかがわかり、過重労働になっている人がいないかを確認できます。過重労働の早期対応は、従業員の健康被害や、訴訟などトラブル回避にも効果的です。これらの問題は早期に取り組まないと大きな問題になることもあるため、早めに気付ける管理体制を作る必要があります。
給与を正確に計算する
勤怠管理は給与を正確に計算するためにも欠かせません。特に重要なのが、残業時間の管理です。残業時間の管理は給料だけではなく、保険料や税金が関わってくるため、正確に把握する必要があります。勤怠管理を適切に行なっていれば、正確な給料額が把握できます。また、勤怠管理ができることで、人件費などのコストも把握しやすくなります。
コンプライアンスを遵守した経営を実現する
勤怠管理は、コンプライアンスを遵守した経営体制作りに役立ちます。近年では労働時間の超過や残業手当の未払いなどが問題視されるようになりました。このような企業では、適切な勤怠管理が行われていない場合が多くあります。勤怠管理の体制を整えることで、コンプライアンスを遵守した経営が可能になります。
勤怠管理すべき項目
勤怠管理では、労働時間や休憩時間、残業時間に加え、有給などまで管理する必要があります。ここでは、勤怠管理するべき項目を解説します。
出勤時間・退勤時間
出勤時間と退勤時間は、勤務を開始した時間と、勤務を終了した時間です。会社に到着した時間や会社を出た時間ではありません。この違いを理解して、正確に出勤時間と退勤時間を把握する必要があります。
この時間は労働時間を正確に計算するために重要な時間です。タイムレコーダーを使用した管理が一般的ですが、打刻漏れや記入ミスがあった場合に、変更の対応が難しく、手間がかかってしまいがちです。また改竄(かいざん)されるリスクもあるため、対策が必要になります。大企業になると、人数が多い分だけ管理の手間がかかるため、効率的な管理体制を整えることが必要です。
労働時間・休憩時間
労働時間とは「使用者(会社)の指揮命令下におかれている時間」です。勤務時間から休憩時間を差し引いた時間が労働時間となります。
勤務時間が6時間以上8時間未満の場合に45分、8時間以上の場合には1時間の休憩を与えなければいけません。なお、着替えや掃除などは業務として指揮命令下に置かれている場合は、労働時間に含まれます。また、指示を待っている待機時間は休憩時間には含まれません。また、休憩中に電話を取り対応した場合も、休憩時間には含まれなくなります。
時間外労働時間・深夜労働時間
時間外労働時間とは、法定労働時間を超えた労働時間です。法定労働時間は1日8時間、週40時間までと定められており、これを超えるような場合には、残業手当を支払う義務が発生します。逆に勤務時間外でも、法定労働時間を超えていない場合、残業であっても、残業手当は発生しません。法定外労働時間の場合は、労働基準法により、通常の賃金の25%以上支払う義務があります。
深夜労働時間とは、22時から翌5時までの労働時間です。この時間に労働している場合には、深夜労働として扱われ、深夜割増賃金を支払う必要があります。この割増率は労働基準法により、通常の賃金の25%以上と定められています。
休日労働時間
休日労働時間とは、法定休日に働いた場合の労働時間です。法定休日は1週間に1日または4週間に4日以上の休日が与えられていなければいけないと定義されています。この時間に労働する場合には、割増賃金を通常賃金の35%以上支払わなければいけません。この基準は労働基準法にて定められており、支払わないと違法行為となります。
有給休暇の取得日数と残日数
有給休暇とは、労働基準法第39条で認められている「年次有給休暇」を指し、賃金が減額されない休暇です。この有給休暇は一定期間勤続した社員に対して付与され、正社員で雇用された場合には、雇用から半年後に10日間の有給休暇が付与されます。
2019年の働き方改革関連法によって、年間最低5日以上の有給休暇の取得が義務付けられるようになりました。そのうえ、有給の取得状況の従業員ごとに管理し、5年間保存する義務があります。そのため、有給の取得状況の管理も勤怠管理では重要な項目です。有給取得率を高めることで、企業のコンプライアンスのアピールにつながるでしょう。
欠勤日数
欠勤日数とは、業務免除が受けられない休暇です。従業員の事情による休暇で、欠勤の場合は、給与の支払い対象外となります。やむをえない事情の場合は、有給に切り替えられる場合もあります。
また、会社に断りなく休んでしまった場合には、無断欠勤となり、解雇などの処分ができる場合もあります。懲戒は就業規則の内容に応じて、適切に適用しなければいけません。
各種勤怠管理の手段のメリット・デメリット
勤怠管理の手法には、それぞれメリットとデメリットがあります。それらのメリットとデメリットを把握し、会社の実情にあった勤怠管理を取り入れることが大切です。方法ごとのメリットとデメリットについて解説します。
エクセル表による勤怠管理
エクセル表は導入が簡単でコストがかからない勤怠管理方法です。数式で自動計算できるようにすれば、計算の手間が省くことができます。ネット上でテンプレートを入手することも可能です。
しかし、勤務時間の入力は手作業で行う必要があり、入力ミスが起こる可能性があります。また、法改正によって、計算式が適切でなくなった場合、改変に手間がかかってしまいます。ミスがないか確認したり、数式をメンテナンスしたりと、管理には時間を要してしまいますし、担当者にはエクセルの関数を使いこなすスキルが求められます。
タイムカードによる勤怠管理
タイムカードは昔から活用されてきた勤怠管理の方法です。時間の記録にはコストがかからず、使い方も難しくありません。エクセルと併用して管理することも多いでしょう。従業員が使うのも簡単で、負担になりません。
ただし、タイムレコーダーがある場所でしか打刻できないため、リモートワークには対応できません。また、打刻ミスなどがあると、修正や確認に手間がかかる場合があり、タイムカードをエクセルなどに転記するときにも記入ミスが発覚する可能性があります。タイムカードは勤務時間の管理しかできないため、休日や残業時間などの細かい管理は手動で計算や確認をする必要があります。
クラウドシステムによる勤怠管理
クラウドシステムによる勤怠管理とは、オンラインのクラウドデータ上で勤怠管理するシステムです。このシステムと連携したパソコンやスマートフォンを利用することで、リモートワークであっても勤怠の入力や管理が簡単に行えます。
クラウドシステムを活用すれば、リアルタイムでの打刻が可能で、労働時間から残業時間まで正確に把握できます。また給料計算システムと連動していれば、給料計算もできます。アラート機能があり、残業時間が多い従業員など、対応が必要な従業員を見つけることも可能です。法律の改変にも自動対応でき、更新が必要になった場合にもすぐに対応できます。
クラウドシステムは導入に多くのメリットがありますが、デメリットとしては、導入コストがかかる点です。しかし、それ以上にメリットが大きく、総合的な視点で管理コストを大幅に削減できる可能性もあります。
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勤怠管理は2019年の法改正により、これまで以上に重要になってきました。また、勤怠管理を適切に行うことで、給料計算なども正確にでき、社外にコンプライアンスの遵守をアピールできます。
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