「従業員にタイムカードを改ざんされたらどう対処しよう」「タイムカードの改ざんの疑いがある従業員がいて困っている」など、タイムカードの改ざんトラブルに悩まされている企業は多いのではないでしょうか。
本記事では、タイムカードの改ざんがどのような罪に問われるのか、企業や従業員がタイムカードを改ざんした場合のリスクを紹介します。タイムカードの改ざんの抑制策についても触れるので、タイムカードにおける不正防止対策の参考にしてください。
この記事の目次
タイムカードの改ざんは違法!企業側のリスクを知ろう
タイムカードの改ざんは違法で、決して許されるものではありません。タイムカードの改ざんには企業が行う場合と、従業員が行う場合の2パターンあります。この段落では、企業がタイムカードを改ざんした場合のリスクについて紹介します。
①労働基準法違反:残業代の未払いが発生
企業側がタイムカードの改ざんを行うと、労働基準法の第37条第1項に違反することになります。労働基準法第37条第1項は以下の通りです。
第37条第1項
「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、(中略)割増賃金を支払わなければならない」
企業は労働者に対して相応の対価を支払うことが義務付けられています。タイムカードの改ざんにより残業代の未払いが発生すると、罪に問われる可能性が高くなるでしょう。労働基準法第37条第1項に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。
企業がタイムカードの改ざんをする大きな理由として、残業代の支払いを逃れることが想定されます。小売業などの店舗を複数展開している企業は、管理が店舗ごとにゆだねられる傾向があるので注意が必要です。店長の中には、人件費をカットするためにタイムカードの改ざんに手を出してしまう人もいます。各店舗ごとにしっかり給与管理ができているか確認しましょう。
②労働基準法違反:虚偽の報告による罰金など
企業側がタイムカードの改ざんをした場合、虚偽の報告をしたとして労働基準法第120条に従って罰則を受ける可能性があります。労働基準法第120条とは以下の通りです。
第120条
「次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」
第4項
「労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、(中略)虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者」
労働基準法120条によれば、虚偽の帳簿書類を提出した企業は30万円以下の罰金を処される可能性があるということです。タイムカードの間違いに気づかなかったなどの軽度の過失であれば罰金に処されないケースもありますが、意図的にタイムカードを改ざんすれば虚偽の報告とみなされる可能性が高いでしょう。
③パワハラや強要罪に問われる
企業がタイムカードの改ざんをすることで、パワハラや強要罪に問われる場合もあります。たとえば、上司が部下の残業を承認しない場合や、実態より少ない時間数の報告を強要させるといったケースが考えられます。
権力を乱用して、意図的に部下や従業員の残業を減らした場合は、より悪質なものとして労働基準法ではなく刑法が適用されることになります。部下や従業員など立場の弱い者に対して脅迫し、タイムカードの改ざんを強要した者は、刑法第223条第1項にもとづいて処罰を受ける可能性が高いです。
第223条第1項
「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」
従業員の集団離職の原因になるため、使用人(部下や従業員)にヒアリングを行い、パワハラや強要が行われていないかチェックすることが重要です。
④労働基準監督署に告発され訴訟へ発展
タイムカードの改ざんに適切に対処しなければ、労働基準監督署に告発されるリスクがあります。労働基準監督署に通告されて、企業側が改善に取り組まない場合は訴訟になる可能性もあるのです。
訴訟になると、外部弁護士を雇ったり労働基準監督署の調査対応のために社内リソースを割いたりするなどコスト・時間がかかります。万が一企業が負けることになれば、損害を補償するだけでなく企業のネームバリューは傷つき、社会からの不信感も高まります。
労働基準監督署に告発されると良いことは一つもないので、最悪のケースにならないように職場環境に注意しましょう。
タイムカードの改ざん・従業員側のリスクを知ろう
タイムカードの改ざんを従業員が行った場合のリスクを紹介します。詐欺罪や私文書偽造罪、電磁的記録不正作出罪の3つの罪に問われる可能性が高いです。それじれの罰則内容について解説するので、しっかり確認して従業員に周知しましょう。
①詐欺罪
タイムカードの改ざんを行った従業員は、刑法第246条にもとづいて詐欺罪で処罰される可能性があります。
第246条第1項
「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」
従業員が企業を騙して適正な額よりも多く報酬を請求し受け取っている場合、または受け取ろうとしている場合は、詐欺罪で罪を問うことが可能です。詐欺罪が適用されれば、従業員は10年以下の懲役に処されるケースもあります。
もし従業員がタイムカードの改ざんが未遂であったとしても、第250条の未遂罪に該当し、相応の処罰を受けることになります。タイムカードの改ざんは大きな罪として扱われるので、従業員の教育の際に伝えるようにしましょう。
②私文書偽造罪
タイムカードが紙の場合は、タイムカードの改ざんはタイムカードを偽造することになるため、刑法第159条3項にもとづいて「私文書偽造罪」に問われる可能性があります。
第159条3項
「(前略)権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
たとえば、出退勤の時刻を記入する形式で、遅刻してきたにもかかわらず当初の予定通りに出勤したものと偽ると、私文書偽造罪が適用されるのです。つい出来心でタイムカードを改ざんした場合でも、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処される場合があります。遅刻や早退をしたとしても正直に申告させるように勧告しましょう。
③電磁的記録不正作出罪
パソコン上のデータを編集してタイムカードを改変した場合は、刑法第161条の2第1項にもとづいて電磁的記録不正作出罪が適用される可能性があります。
第161条の2第1項
「人の事務処理を誤らせる目的で、(中略)事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
紙のタイムカードを偽装した場合は私文書偽造罪が適用されますが、タイムカードのデータを改ざんした場合は電磁的記録不正作出罪が問われることがあります。詐欺罪と同様に、未遂でも処罰の対象となり、有罪と判定されれば5年以下の懲役または50万円以下の罰金が処されます。
従業員が触れることができないように管理するのがベストですが、万が一のことも考えて事前に注意喚起をしておきましょう。
タイムカードの改ざんをされたとき:企業の対処法
タイムカードを従業員に改ざんされたときの企業側の対処法について紹介します。従業員を信じたい気持ちは分かりますが、実際にトラブルを想定して対処法を明確にしておかなければ、いざタイムカードを改ざんされたときに的確に対応することが困難です。対処法を4つ紹介するので、従業員が不正に手を出したときに冷静に対処できるように準備しておきましょう。
①口頭で厳重注意し要因を探る
従業員によるタイムカードの改ざんが発覚したら、まずは口頭で厳重注意をして要因を探るようにしましょう。タイムカードの改ざんに手を出した従業員をいきなり懲戒処分することはあまりおすすめしません。不正に手を出した背景を把握しなければ、また同じようにタイムカードを改ざんする従業員が現れる可能性があります。
たとえば、「給料が労力に見合っていない」「残業代を支払ってくれない」など企業への不満が改ざんにつながっているケースもあるでしょう。タイムカードの改ざんが起きてしまった要因を追求し、同じことが繰り返されないよう、職場環境を改善することが重要です。なお、タイムカードの改ざんが起きた事実を社内に周知し、注意喚起も忘れないようにしましょう。
②懲戒処分|証拠が必須
タイムカードの改ざんの原因が判明したら、従業員の反省の度合いによっては懲戒処分を行います。懲戒処分をするためには、タイムカードを改ざんした証拠を集めなければなりません。本人に不正を問いただす前に不正の証拠を確保しましょう。
たとえば、タイムカードに記録されている時刻と実際に社内に滞在していた時刻を照らし合わせることで、タイムカードの改ざんを証明することができます。社内に監視カメラが設置されていれば、実際に入退室した時刻が明らかになるため、タイムカードの記録と相違など事実が明らかになるでしょう。
監視カメラで従業員の動向をチェックするのが最も簡単なので、映像が削除される前にデータを移して、2~3つ証拠を確保しておくことをおすすめします。
③不正打刻分の残業代を返還させる
懲戒処分とは別に不正打刻分の残業代を返還させましょう。不正に多くの報酬をもらっていることになるため、不正受給した金額分は返還させることができます。もし、情に流されてそのまま許してしまうと従業員のモラルが低下し、タイムカードの改ざんが常習化してしまう可能性が高いです。
タイムカードの不正が常習化すると解決が困難になるため、従業員を懲戒処分をしない場合でも必ずけじめとして不正受給した分の金額は返還させるようにしましょう。
④仕組みで改善する
タイムカードの改ざん防止には、不正しづらい仕組み作りが必要です。定期的に監視カメラで従業員の動きをチェックする姿を見せておくことで、不正は必ず発覚することを警告しておきましょう。
また、タイムカードを管理するシステムを導入して、簡単に出退勤時刻を改ざんできないようにするのも効果的です。タイムカードに限らず、従業員の不正は管理者の気の緩みから生まれるものが多いです。日ごろから不正を許さない姿勢を従業員に見せておきましょう。
違法の改ざんにはスマレジ・タイムカードで備えよう
従業員のタイムカードの改ざんは、企業側の気の緩みが原因で起こるケースが多いので、日ごろからしっかり不正に対する意識を高めておくことが重要です。なお、不正対策としてシステムの導入を検討している企業には、スマレジ・タイムカードを推奨します。
画像認証やパスコード、GPSなどユニークな改ざん防止機能がついているので、従業員の不正を防止することが可能です。従業員の悪質な不正に頭を抱えている方はお気軽にご相談ください。