勤怠管理の集計方法を考える際、業務でも使用している表計算ソフト「エクセル」を使おうと考える事業者も多いでしょう。しかし、いざ勤務表の作成に取り掛かると、どのような形にしてよいかわからず計算式の使い方に戸惑う人も珍しくありません。
そこで今回は、エクセルで勤怠管理表を作成する際のポイントや、注意点を解説します。エクセルよりも簡単に勤怠管理ができる「スマレジ・タイムカード」もご紹介するので、勤怠管理方法の検討にお役立てください。
この記事の目次
- 勤怠管理はなぜ必要?
- エクセルで勤怠管理を行うメリット
- エクセルで勤怠管理を行う注意点
- 勤怠管理の3機能
- エクセル勤怠管理表の作り方
- エクセルで勤怠管理表を自作するときのポイント
- 無料の勤怠管理システム「スマレジ・タイムカード」がおすすめ
勤怠管理はなぜ必要?
勤怠管理は、労働安全衛生法や労働基準法で定められた事業者の義務です。もし法令違反が明るみになれば、事業者の信用を失いかねないため、適切な勤怠管理は労働者を守るだけでなく、事業者の信頼を守るためにも重要です。
2019年4月には労働安全衛生法が一部改正され、事業者が労働者の労働時間を客観的に把握するよう項目が追加されました。労働時間を正しく管理し、長時間労働者を減らして労働者の安全と健康を守ることは事業者の責務となっています。
働き方改革でも労働時間管理は注力されているテーマであり、正確な勤怠管理体制を整えることが急務となっています。
エクセルで勤怠管理を行うメリット
エクセルによる勤怠管理には、次のメリットがあります。
- 導入コストがかからない
- 使える人が多い
- 自由にカスタマイズできる
エクセルは在庫管理や資料作成といった業務で日常的に使用している場合が多いです。勤怠管理のために新たにソフトを導入する必要がない点がメリットと言えます。
また、エクセルは広くビジネスで認知され、多くの人が利用方法をある程度理解しています。利用者が多ければ、操作方法を一から指導する手間も省けるでしょう。数式・関数を使えば勤務時間や給与の自動計算もでき、自由なカスタマイズが可能な点も魅力です。
こうしたメリットがあることから、エクセルを使った勤怠管理を検討する事業者も少なくありません。
エクセルで勤怠管理を行う注意点
エクセルで勤怠管理する場合は、メリットとあわせて次の注意点も意識しておきましょう。
入力ミスや改ざんリスク
エクセルは簡単に入力、修正、削除などができるため、入力ミスや改ざんのリスクが高いと考えられます。
エクセルで作った勤怠管理表に複数名がアクセスし、上書き保存を繰り返せば、誰がどの段階で入力を誤ったのかを遡ることが困難になります。書き換えも容易にできてしまうため、勤務時間を改ざんされるリスクもあるでしょう。操作ミスや共有ブック機能による同時アクセス負荷が原因で、データ破損の危険性も高まります。
エクセルで勤怠管理を行うには、入力時のルールを周知・徹底し、改ざんされない管理体制を考える必要があります。
作成や作業が手間
エクセルでは白紙のデータから、利用目的に合った管理ファイルを構築できますが、最初から作成するのは手間がかかります。
基本的な入力ができるだけでは、使い勝手の良い勤怠管理ファイルは作れません。エクセルが持っている機能を理解し、関数やマクロを使いこなす必要があります。また、作成後も従業員の出退勤時刻や労働時間を反映・確認する作業が発生します。
一から作る手間を省く方法として、無料公開されているテンプレートを活用するのもひとつの手です。ただ、自社に合ったテンプレートが見つかるとは限らないため、やはりエクセルをカスタマイズできる人が必要になってきます。
法改正に対応しづらい
勤怠管理用のエクセルファイルを作成しても、法改正がある度に修正しなければなりません。エクセルで自動判別する仕組みを作っても、内容が複雑になると対応しづらくなることも考えられます。
例えば最近は、働き方改革による法改正で時間外労働の上限変更や、年5日の有給休暇を取得させる義務などが追加となりました。
エクセルの機能を理解し、どこまで対応できるのかを把握し、対応が難しいようであれば個別サポートがあるシステムの導入も検討すべきでしょう。
多様な働き方への対応に限界がある
労働時間や休暇取得に関する法令だけでなく、フレックスタイム制や時短勤務・リモートワークといった、多様な働き方に対応した勤怠管理をエクセルで行うのは容易ではありません。
実際に対応内容によっては複雑な設定が必要となり、エクセルを熟知した人材がいなければ、やがて運用上の限界を迎えます。したがって、社内で対応できる人材がいない場合、エクセル以外の勤怠管理方法を検討する必要も出てくるしょう。
勤怠管理の3機能
勤怠管理では、以下の3つの機能が必要です。
- 記録
- 集計
- 給与計算
エクセル勤怠管理するなら、この3つのうち、どの部分をエクセルで処理するのか考えておきましょう。全行程をエクセルで処理することも可能ですが、一部分のみ対応させる方法もあります。以下でこれら3つの機能について詳しくみていきましょう。
1.記録
勤怠管理の1つ目の機能は、出退勤を正確に記録することです。
基本的にはタイムカードやICカードを利用した、改ざんされにくい方法が望まれます。エクセルに直接、時刻を入力する記録方法もありますが、入力ミスや書き換えられてしまう恐れがあるので、慎重に検討すべきです。
厚生労働省も労働時間の記録方法として、タイムカードやICカードの利用を挙げ、客観的な記録を残す方法を原則としています。エクセルへの直接入力では客観性を証明できない可能性があるので、可能であれば別の方法を採用しましょう。
2.集計
2つ目の機能は、記録をもとに労働時間を集計することです。
給与形態や雇用形態によって、集計すべき点は変化しますが、主な項目として勤務時間や出勤日数、欠勤・遅刻早退の日数、休日出勤や残業、深夜帯勤務の時間数などが考えられます。なお、労働者が有給を取得していた場合は、その日は出勤したものとして集計に加えることになります。
3.給与計算
3つ目の機能は集計結果から給与計算することです。こちらも時間給や月給、年棒制など、給与制度によって計算方法が異なります。
実際に計算する際は、控除や各種手当なども考慮しなければなりません。具体的には、給与から控除する社会保険料や住民税・所得税、雇用保険料、従業員に支払う各種手当も計算し、給与として支払う金額を算出します。保険料や税率は改正されることもあり、適用すべき手当も会社方針によって異なります。金額に間違いがないよう、各項目の確認が必要です。
エクセル勤怠管理表の作り方
勤怠管理表には各従業員の出退勤時刻や残業時間、休憩時間、遅刻早退・欠勤の有無、有給取得の有無といった項目が入力できるようにします。そして、入力された数値から、労働時間や残業時間が計算できるよう、数式をいれた集計用の項目を作ります。
以下では、これらの機能を実現するために、エクセルをどのように改良すればよいのかを解説します。
SUM関数を使用する
SUM関数は指定範囲内のセルに入力された数値を合計できるので、時間の集計に便利です。日にちごとの出退勤時刻から労働時間や残業時間を求めたら、締日までの時間数集計にSUM関数を使いましょう。
合計働時間から給与計算を行う
時間給で働いている人は労働時間×時給、月給で働いている人は基本給に残業時間×時間あたりの残業代を加算して、労働時間から給与計算を行います。
はじめに給与計算に使う項目を作り、諸手当や交通費支給、従業員が立て替えている経費の精算も給与支給と同時に支払うならそれも計算し、総支給額を求められるようにしましょう。
また、住民税や社会保険料といった給与から控除する金額も給与計算では必要です。従業員ごとに適応される税率や保険料率を確認し、控除額を計算する項目も用意しましょう。
最後に総支給額から控除額を引き算すると、従業員に支払う差し引き支給額が計算できます。
マクロを組む
エクセルで勤怠管理から給与計算まで行う場合、マクロを活用すれば自動計算ができ、手間を省けます。
出退勤を記録したデータや従業員の基本給、適応すべき諸手当、控除額の計算情報を取りまとめた台帳ファイルを別途用意し、給与計算の際にマクロで参照させるようにします。こうすることで、計算時のミスを防ぎ、効率よく給与計算が進められます。
無料のテンプレートを活用する
何もない状態から勤怠管理表を作成するのが難しければ、無料で公開されているテンプレートの活用もおすすめです。
「エクセル 勤怠管理表」といったキーワードで検索すると、無料で使えるフォーマットが多数見つかります。その中から、レイアウトや項目など、目的に合ったものを見つけて活用しましょう。なかにはカスタマイズできるものもあり、最初から作り上げるより手間にならず、完成度の高い勤怠管理表が利用できます。
エクセルで勤怠管理表を自作するときのポイント
エクセルで勤怠管理表を自作するときは、次のポイントをおさえておきましょう。
「24時間=1」となる
エクセルは入力されたデータをシリアル値と呼ばれる値で管理しており、「24時間=1」と認識しています。
エクセルで勤務時間を集計する際、「1日の勤務が6時間」というデータとして「6:00」と入力したセルが5日分あったとしましょう。合計は「30:00(6時間×5日=30時間)」となるはずが、24時間を超えた時間数が反映されず「6:00」と表示されることがあります。
これは時間数ではなく、時刻として表示されているためです。シリアル値上は24時間で「1(日)」となっており、24時間に満たない時間は小数点以下の数値で認識されつつ、時刻部分のみが表示されます。
ここに時間給を掛けたのでは、正確な給与計算になりません。「時間数×時間給」ではなく「日数×時間給」の計算となるためです。「日数×24時間」として日数を時間数に換算するよう、計算式に書き加える必要があります。
頻出する関数を理解する
エクセルで作った勤怠管理表を運用するには、頻出関数の理解が必須です。無料テンプレートで出来上がったものを使う場合も、関数を理解していないと細かな修正ができません。
- 合計値を出すSUM関数
- 時間計算で必要なTIME関数
- 日数を調べるCOUNTA関数
この他にも、小数点以下の切り捨て・切り上げにROUNDDOWN・ROUNDUP関数や、条件によって計算方法を分岐させるIF関数なども使いたいところです。
しかし、関数が苦手であったり、複雑な関数に手を焼いたりするのなら、エクセルの使用にこだわる必要はありません。なぜなら、理解できないまま関数に手を加えてしまうと、修復不可能な状態になる危険性があるからです。業務や労務管理に支障をきたす恐れがあるので、エクセルに自信がない場合は素直に勤怠管理システムを導入した方が安心でしょう。
無料の勤怠管理システム「スマレジ・タイムカード」がおすすめ
エクセルでも勤怠管理は可能ですが、使いやすい管理表の作成には関数やマクロへの理解が不可欠。ミス・改ざんへの対策や、法改正への対応も考えねばならず、手間や負担もあることがわかりました。
エクセルで勤怠管理をしてくのが難しいと感じたなら、無料で導入できる、勤怠管理システムを利用してはいかがでしょうか。
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