飲食店の中でも人気が高いラーメン屋ですが、人気店で修行を積むなどして自分のお店を開業したいと考えている人もいるのではないでしょうか。この記事では、ラーメン屋の開業を検討している人に向けて、必要な開業資金の目安や内訳について解説しています。さらに開業資金の集め方や抑える方法もお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
ラーメン屋の開業資金の相場は?
ラーメン屋の開業では、店舗用物件取得や内装、厨房設備などが含まれる「初期費用」と、経営する上で不可欠な「運用資金」が必要です。ここでは、それぞれの資金における内訳に加え、運用資金を準備すべき期間の目安について解説します。
初期費用の目安と内訳
ラーメン屋開業における初期費用の目安は、1,000~1,500万円と言われています。初期費用の主な内訳は次のとおりです。
- 店舗用物件 取得費用
- 家賃の6~10ヶ月分
(家賃が25万円だとすると150~250万円)
- 内装・外装工事費用
- 500~1000万円
- 厨房機器などの設備費用
- 200~250万円
- 什器
- 約50万円
- 食器・調理器具など
- 約100万円
店舗用物件の取得費用は立地や規模で変動しますが、家賃の6~10ヶ月分を見積もっておくと良いでしょう。内装工事は物件の状態によって異なります。
居抜き物件であれば200万円程度。スケルトン物件なら500万円以上は必要となり、規模やこだわり具合によって金額が変わります。外装工事は10~30万円程度が一般的です。その他、ラーメン屋営業に必要な厨房機器や什器、調理器具などをそろえると、350万円程度かかります。
運用資金の目安と内訳
ラーメン屋開業における運用資金の目安は、店舗規模によって異なりますが200~500万円が一般的です。運用資金とは、ラーメン屋を経営していく上で必要な費用であり、賃貸料・人件費・仕入れ費用といった経費が含まれます。「固定費」と「変動費」に分けられ、代表的な科目は次のとおりです。
- 固定費:賃貸料、通信費、保険料、リース料、減価償却費など
- 変動費:水道光熱費、人件費、広告費、食材費、消耗品費、修繕費など
運用資金1ヶ月の内訳例を挙げてみましょう。
- 賃貸料
- 20~25万円
- 水道光熱費
- 約15万円
- 食材費
- 約60万円
- 人件費
- 50~65万円
賃貸料は売上の10パーセント以下が理想とされています。水道光熱費はガス代がかさみやすく、食材費は原価率30%1日2万円の計算です。人件費は売上の30%と考えると、食材費と同等になります。
開店後半年分の運用資金を準備
ラーメン屋開業にあたり、半年分の運用資金を準備しておきましょう。フランチャイズのように知名度がある場合はオープン後から集客が望めますが、独自ブランドでは認知度が低いため赤字になる可能性が高くなります。また、オープン3ヶ月目から売上が落ちるとも言われており、この期間を耐える余力が必要です。
収入が安定するまでは6ヶ月ほどかかるとされ、口コミが広がる前に資金が底をついてしまうと賃貸料や仕入れ費用が確保できず、閉店せざるを得ない状況になるかもしれません。開店直後の数ヶ月間も安心して営業ができるように、余裕を持って運用資金を準備しておきましょう。
ラーメン屋の開業資金を集める方法
開業資金の準備には、下記の方法が挙げられます。
- 個人で貯金する
- 知人から借金をする
- 金融機関から融資を受ける
- 補助金・助成金を受ける
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説しましょう。
個人で貯金する
自分で開業資金を貯金する方法ですが、これだけで開業資金を全額用意することはあまり現実的ではありません。前述したように、初期費用と運用資金を合わせると、1,200~2,000万円が必要になります。多くの場合、貯金だけで開業資金を全額集めるのは難しいでしょう。
しかし、融資を受ける場合にはある程度の自己資金が必要です。初期費用に対し3分の1以上が理想とされ、それ以下になると融資を受けることが難しくなります。資金が多いほど余裕が生まれますし、開業資金やオープン後の経営にも役立つため、全額は難しくともできるだけ多く貯金はしておきましょう。
知人から借金をする
知人から資金を借りるのも1つの方法です。金融機関からの借り入れとは違って、利息や返済日の融通が利きやすいというメリットがあります。ただし、返済期限を設けていない場合、年間110万円を超えると贈与税の対象となるため注意が必要です。親しい相手でも借用書を作成しましょう。
なかなか返済しない、あるいは返済できないなどのトラブルが発生すると信用問題に発展します。知人との関係性が壊れる可能性もあるため、しっかりと返済計画を立てると良いでしょう。
金融機関から融資を受ける
金融機関から融資を受ける方法も一般的です。民間金融機関に加え、日本政策金融公庫のような公的機関も利用できます。民間金融機関からの借り入れは審査が厳しく、事業計画書やある程度の自己資金が必要です。不動産や保証人などの担保を求められることもあり、飲食店勤務の経験や経営実績などもチェックされます。
一方、政策金融機関である日本政策金融公庫は、経営実績などが問われず融資が受けやすい点がメリットです。低金利な上、一定金額までは無担保無保証も可能。比較的早い期間で融資を受けられます。その他、自治体が実施している融資制度もあるためチェックしてみましょう。
補助金・助成金を受ける
自治体や国が事業支援・創業支援などを目的として支給される補助金・助成金も利用できます。補助金は公募制で、「国家政策に合うか」あるいは「国家の政策目標を達成できるか」といった点が審査基準となるため、必ずしも受け取れるとは限りません。しかし、助成金は条件を満たしていれば、原則として誰でも受け取ることが可能です。例えば、次のような補助金や助成金が挙げられます。
- 東京都中小企業振興公社「創業助成金」
- IT導入補助金
東京都中小企業振興公社の「創業助成金」は、都内で創業予定または創業後5年未満の中小企業者などを対象に、経費の一部を助成する制度です。助成の対象となる経費は賃借料、広告費、器具備品購入費、従業員人件費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費で、上限300万円まで受けられます。
IT導入補助金は、ITツール導入にかかわる経費の一部を補助することで業務効率化や売上アップをサポートする制度です。「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の3つに分類されています。PC・タブレットに加え、会計ソフトや決済ソフトも補助対象です。
ラーメン屋の開業資金を抑える方法
ラーメン屋の開業資金について、金額の目安や調達方法を解説してきましたが、費用はできるだけ抑えたいもの。ここからは、ラーメン屋の開業資金を抑える方法をお伝えしていきます。
居抜き店舗を利用する
居抜き物件を利用すると初期費用を抑えられます。居抜き物件とは、これまで営業していたテナントの設備や内装などを、撤去せずにそのまま残した物件のこと。新規物件よりも改装費や設備費が抑えられ、工事期間の短縮にもなります。
ラーメン屋の居抜き物件なら、ひと通りの設備が揃っている状態になっているでしょう。自分で購入すれば高額になる設備が譲渡されるケースもあり、大幅なコストカットを実現できます。ただし、数十万円の造作譲渡料がかかる場合もあるため、条件のチェックが必要です。
加えて、ラーメン屋には油脂を下水管に流さなくする「グリストラップ」という装置の設置が必要になるため、あわせて確認しておきましょう。居抜き物件はインターネットで探すか、専門の不動産屋に紹介してもらうことで利用できます。
厨房機器は中古品も活用する
ラーメン屋の居抜き、しかも厨房機器がついた居抜き物件がベストですが、難しい場合は厨房機器を中古品でそろえるのがおすすめです。ラーメン屋の営業に必要な厨房機器はさまざまですが、以下のようなものが挙げられます。
- ガステーブル
- 鋳物コンロ
- 寸胴
- 茹で麺機
- シンク
- 冷蔵庫
- 冷凍庫
- 製氷機
- 食洗機
メニューの種類によっては複数必要な機器もあり、すべて新品でそろえるとかなりの高額です。しかし、業務用厨房機器は中古品が多く出回っており、リサイクルショップやネットオークションの他、中古専門店でも手に入れることができます。数年で撤退するラーメン屋もあるため、中古品と言えども新品に近い厨房機器を見つけられるかもしれません。
メニューを厳選する
メニューは多いよりも、厳選した方が開業資金を抑えられます。ラーメン1杯にかかる食材費は種類によって異なり、以下のような金額が一般的です。
- しょう油ラーメン:200円
- とんこつラーメン:250円
- 味噌ラーメン:300円
ラーメンだけでなく、サイドメニューやトッピングなども考えなければなりません。メニュー数を増やしすぎると食材費用がかかるだけでなく、必要な設備や機器も増えます。メニューを厳選してお店独自のラーメンを提供することで、他店との差別化にもなりますし、ファン化にもつながるでしょう。宣伝をする際にも分かりやすいため、認知されやすくなります。
自家製麺にこだわらない
自家製麺ではなく、仕入れ麺にすることでも開業資金を抑えられます。自家製麺は自分で原材料を選べることで安全性を保て、オリジナルの麺質が提供できる点がメリットです。しかし、製麺機の購入には300万円程度必要で、製麺時の人件費やメンテナンスなどを考えるとコストが高くなります。
一方、仕入れ麺は細かな改良もできませんし、保存に注意が必要ですが、製麺の手間や人件費などのコストもかかりません。麺でオリジナリティが出せない分、スープなどその他の部分で工夫してみましょう。麺にこだわるのであれば、複数の麺を組み合わせる、メーカーとオリジナルの麺を開発するといった方法も考えられます。
ラーメン屋を開業するのに必要な資格や手続き
ラーメン屋の開業には「食品衛生責任者」と「飲食店営業許可」が不可欠です。また、場合によっては「防火管理者」の取得も必要になります。それぞれ確認しておきましょう。
食料品衛生責任者
食品衛生責任者は、飲食店の営業に必須の国家資格です。食品の製造・販売を行う際に必要な資格であり、店舗には必ず1人以上の食品衛生責任者の配置が義務付けられています。自分で取得するか、あるいは資格保有者を雇用しなければなりません。
食品衛生責任者は、各自治体で開催されている食品衛生責任者養成講習を受講し、保健所に申請を行うことで取得可能です。ただし、栄養士・調理師・製菓衛生師といった資格を持っている人は、保健所への申請だけで取得できます。
飲食店営業許可
ラーメン屋を営業する際には、保健所から飲食店営業許可の取得が必要です。食品衛生法に定められており、審査に合格することで取得できます。飲食店営業許可は提供する内容によって分けられ、例えば次のような種類が挙げられます。
- 飲食店営業
- 喫茶店営業
- 菓子製造業
- アイスクリーム製造業
- あん類製造業
申請後は保健所職員によって設備の検査が行われ、「厨房の床の構造」「シンクのサイズ」「手洗い場所の設置」「冷蔵庫内の温度計設置」といった箇所がチェックポイントです。また、飲食店営業許可の申請には、食品衛生責任者の資格証明書類が必要になりますので、事前に取得しておきましょう。
防火管理者
防火管理者とは、店舗に合った消防計画の作成と防火管理業務を計画的に行う責任者です。不特定多数が集まる場所への設置が義務付けられており、収容人数が30人以上(従業員も含む)の施設には必須となります。防火管理者の資格は「甲種」と「乙種」に分けられており、違いは店舗や施設の面積です。
- 甲種:収容人数30名以上、延べ面積300㎡以上
- 乙種:収容人数30名以上、延べ面積300㎡未満
開業するラーメン屋の規模に合わせて取得を検討しましょう。資格は食品衛生責任者と同じく、自治体や消防署が行う防火管理講習の受講によって取得できます。講習時間は甲種が約10時間(2日)、乙種は約5時間(1日)です。
ラーメン屋のオープンに向けて開業資金を用意しよう
ラーメン屋の開業資金は「初期費用」と「運用費用」があり、合計1,200~2,000万円が必要です。とくに運用費用はオープン後に余裕を持って営業するためにも、半年分の金額を準備しておきましょう。また、居抜き物件や中古の厨房機器を利用すると、初期費用が抑えられます。国や自治体が実施している融資制度・助成金などをうまく活用して、ぜひラーメン屋の開業を実現してください。