労働基準法では、企業が労務管理を行う際に保存しておくべき書類を定めています。出勤簿はその書類の中の1つです。
出勤簿には労働時間、労働日数、残業時間などの記載が求められます。一部の会社では、タイムカードを出勤簿として利用している会社もあるかもしれません。しかし、厳密にはタイムカードだけでは出勤簿の代わりにはできません。
この記事では、どのような形で従業員に出勤簿を記入してもらい、保存しておくと良いのか詳しく解説します。自社の出勤簿を見直すためにも、ぜひご確認ください。
この記事の目次
出勤簿は法定帳簿の1つ
出勤簿とは、労働基準法で定められた法定帳簿の1つです。法定帳簿(法定三帳簿)とは、「労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等」の3つを指し、出勤簿等のなかの出勤簿では労働者の労働時間や入退社時間など必要な記載事項が定められています。
出勤簿は労働基準監督署の立ち入り検査の際に提出を求められることがあります。その際に提出を拒んだり、内容に虚偽の記載があった場合は処罰の対象になる可能性もあります。そのため、会社側は不備のないようしっかり出勤簿を管理しておく必要があります。
出勤簿の作成に必要な労働時間の管理とは
各従業員の労働時間は、出勤簿の必須項目に該当します。したがって、出勤簿の規定を満たすためにも、企業はタイムカードなどを使って、従業員の労働時間の管理に努めなければなりません。
なお、労働時間には会社からの指示により業務に従事する時間だけでなく、会社指示での研修・教育訓練時間も含まれます。実際に勤務時間を管理する際は、研修時間なども含めて計上するよう注意が必要です。また、従業員からの自己申告にて労働時間の管理する場合、従業員からの申告と実態にズレが起きていないかを定期的に確認することも大切です。
管理方法はさまざまですが、タイムカード、パソコンの使用時間などで労働時間を計測する方が手間もなく確実だと考えられます。なるべく管理の手間を減らすためにタイムカードやパソコン管理を検討しましょう。
出勤簿の記載内容と記入例
実際に出勤簿を作成する際は、労働時間以外にも記載すべきことがあります。
具体的には、以下の記載項目が挙げられます。
(出勤簿に記載するべき項目)
- 各労働者の出勤日と労働日数
- 出社、退社時間
- 1日ごとの労働時間数
- 時間外労働を行った日付、時刻、時間数
- 休日労働を行った日付、時刻、時間数
- 22時から翌5時までの深夜労働の日付、時刻、時間数
これらの項目が記載された出勤簿の例が以下になります。
上記の完成例を参考にして、逆算して必要事項を事前にまとめておけば、効率よく出勤簿が作成できます。
出勤簿の保存期限と形式
出勤簿の保存年数は5年間(当面は3年間の経過措置)となっています。出勤簿の作成を行わない場合や保管に不備がある場合、30万円以下の罰金に処されることがあるので、ルールはしっかり守るようにしましょう。
保存形式に関しては、紙とデータのどちらの形式でも問題ありません。しかし、紙の場合、全従業員分の出勤簿を保管する場所を用意しなければならず、破損、劣化、紛失のリスクにも備えなければなりません。そのため、コストがかさむと考えられます。
費用をなるべく抑えるためには電子データでの保管を選択するのがベターです。ただ、電子データに関しても紛失、破損などのリスクがあるので、バックアップをとるなどの対策は必要です。
改正労働基準法で保存期限は5年に延長
2020年4月に労働基準法が改正されたことで出勤簿のみならず、さまざまな書類の保存期間が延長となりました。この改正で保存期間を5年に延長された「その他労働関係に関する重要な書類」の中に出勤簿も含まれています。
書類の保存期間の延長は、未払金賃金の請求延長の観点で実施されています。法改正の背景もふまえ、しっかりと出勤簿を保管できる体制の整備が不可欠です。
次の項では出勤簿の各管理方法におけるメリット、デメリットについて解説しましょう。
手書き
従業員数が100人未満の小規模な会社の場合、アルバイト/パートも含め、集計する人数が少ないため、手書きの集計も可能です。勤務形態が複数ある場合は手書きの方が管理しやすい場合もあります。
従業員が少人数のうちは紙での管理でも問題ないですが、従業員数が増えてくると書類を保管するスペースも多く必要になり、紛失リスクも高まるので状況に応じて見直しが必要です。
エクセル
エクセルでの管理のメリットは、パソコンにソフトさえ入っていれば、追加費用がかからず、手軽に利用できることです。ただし、一から自分たちで管理表を作成する必要があるので、多少の手間が掛かります。
欠点としては、エクセル操作が不慣れな人が操作している際に、数式を誤って消してしまうといったトラブルが発生しやすい点です。また、出勤簿の関わる法律が変わった際にはその都度修正が必要で、予期せぬ抜けや漏れが起こる可能性は高くなります。
エクセルを用いる場合は、定期的に管理に使用しているエクセルシートに不具合がないかを必ず確認しましょう。
タイムカード
残念ながらタイムカードだけでは、労働時間の管理を正確に行っているとは認められません。タイムカードを押した後に食事をしたり、終業後に同僚と雑談した後に押すこともあり、業務時間を正確に判断できないからです。
どうしてもタイムカードを出勤簿として活用したいのであれば、作業日報、残業許可証などと照らし合わせて検証する必要があります。確認した結果、タイムカードと実際の業務時間がかけ離れている時には修正が必要となります。手軽に見えますが、実は非常に手間が掛かる方法だということは頭の隅に入れておきましょう。
出勤簿の正しい記録・保存方法を理解しよう
2018年に制定された働き方改革関連法で、原則として従業員の自己申告による労働時間の管理は禁止になっています。その結果、従来の紙やエクセルなどの出勤簿での管理を続けるには、これまで以上に時間と手間が掛かるようになりました。
制度の変化に伴い、出勤簿の作成、管理が重荷になっている企業も少なくないと考えられます。
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