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お店ラジオ 2024/11/19 2024/11/19

団体客を軸にした経営モデルの展開

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、1975年に創業し、現在は、個人客だけでなく団体客向けの日本料理を軸として、独自の戦略により静岡県を中心として17店舗を展開、さらに、「ジャンボエビフライ」など魅力ある商品展開で注目を集めている「株式会社 なすび」の専務取締役 藤田尚徳さんです。

長年にわたり築かれた家族経営の歴史、地元食材にこだわった店舗運営、さらには団体客を軸にした戦略や、地域貢献を意識した取り組みなど、会社の成長と挑戦、そして地域に根ざしたビジネスモデルについて、3回に分けてお伝えいたします。

第1回は、株式会社なすびの創業から50年の歴史と、地元密着型の飲食戦略、団体客を軸としたビジネスモデルについてお送りしました。

第2回は、団体客を軸とした経営モデルや、専務としての営業活動における付加価値戦略についてお届けします。

 

この記事の目次

 

団体客を軸とした経営モデル

近年、原価や人件費の上昇により、FLコスト(フードと労務費)を適切に管理することが非常に難しくなっており、売上があっても、以前ほどの利益を出すのが難しいと感じています。

ただ、団体客に関しては、個別の顧客とは異なりFLコストが比較的低く抑えられるため、効率が良いと感じています。特にフードに関しては、あらかじめ決まったメニューを提供することで食材の無駄を最小限に抑えられ、ロスが少なくて済みます。また、団体向けの注文は一定量を見込めるため、卸業者との取引においてもスケールメリットを活かした取引ができます。

さらに、団体予約では個別のオーダーがないため、料理を運ぶだけで済むことが多く、効率的にサービスを提供できるのも大きな利点です。フリーのお客様の場合、さまざまな注文に対応する必要があるため、調理や提供に手間がかかり、その分人件費も増えてしまうのですが、宴会などの団体対応ではその手間が減少し、効率的に人件費を抑えることができます。

一方で、通常の店舗運営では、固定費の存在は避けられません。しかし、当社の強みは、自社物件や行政施設を多く利用していることです。自社物件であれば家賃が発生しませんし、行政施設の物件は比較的家賃が低いことから、経費の負担を大幅に軽減できています。これが、私たちの競争力を支える大きな要因となっています。

このように、売上を確保しつつも、通常の飲食店とは異なる戦略を取る必要があると感じています。効率的に運営を行いながら、団体客を軸にした経営モデルを今後も発展させていくことが課題です。

 

専務としての営業活動と付加価値戦略

私は専務という役職にありますが、同時に営業活動も行っています。私たちの営業は、企業向けではなく、旅行会社や葬儀社、そして一般の団体のお客様が対象になります。

飲食業界では少し珍しいかもしれませんが、私たちは専任の営業マンを雇用し、彼らが県庁や大手企業に足を運び、宴会や会合の依頼を取り付けることで、団体客の確保に力を入れています。特に、60歳を超えた再雇用の方々を営業マンとして雇い、彼らの豊富な経験とネットワークを活かして、企業や団体に向けた営業活動を展開しています。

営業において、もちろん営業トークや商品性も大切ですが、私が特に重視しているのは「付加価値の提供」です。たとえば、営業活動の際には、地元の歴史や文化にまつわるストーリーをお伝えすることで、料理だけでなく地域の魅力も一緒に伝えるようにしています。具体的には、静岡の名所である久能山東照宮と提携し、特別参拝プランを作成するなど、他にはない独自のオリジナルプランを提案しています。

このようにして、当店でしか体験できない唯一無二の商品やサービスを作り上げることで、営業活動において他店との差別化を図り、顧客に特別な価値を提供することに注力しています。

 

三保の松原を活かした清掃体験と地域貢献の新たな観光プラン

静岡県清水市に富士山はありませんが、世界遺産の構成資産の一部である三保の松原があります。この美しい景勝地は、通常はただ眺めるだけの場所ですが、私はこの松原に「体験」を加えることで、より魅力的な観光地にできると考えました。そこで、三保の松原の清掃体験を企画し、それを地元の料理と組み合わせたプランを提供したところ、大変好評をいただいています。

一見すると「清掃が楽しいのか?」と思われるかもしれませんが、実際に体験してみると、松林の中で感じる涼しさや美しい景色とともに、自然を守る活動を行うことが非常に心地よいものです。実際、長野から訪れたJTBのツアー客も多く参加してくれました。歴史博物館を訪れるのも良いのですが、体を動かしながら地域に貢献する活動に魅力を感じ、幹事さんがこのツアーを選んでくれたのです。また、三重や岐阜からも観光バスで多くの方が訪れ、この体験を楽しんでいただいています。

さらに、清掃で集めた松葉は、名刺の原材料としても再利用されています。その名刺には「世界遺産三保の松原の落ち松葉を再生した紙を使用しています」と書かれており、環境への配慮と地域資源の活用を示す新たな価値を提供しています。

 

「三保の松原焼き」と地域貢献を融合した循環型観光プラン

私たちが提供している「三保の松原焼き」は、三保の松と藁を使ってカツオやブリを丸焼きにする料理です。これが非常に好評で、世界遺産の三保の松を使用した料理として商標登録も取得しました。

この料理の売り上げの一部が、三保の保全活動に寄付される仕組みを作り、地域貢献と循環型の仕組みを確立しています。富士山を見た後に三保の松原にも立ち寄り、ランチに「三保の松原焼き」を楽しんでいただく観光ルートを提案できると思っています。

また、私たちは地元密着の活動を続けてきた結果、静岡県内のお客様からも、接待やお祝い、会社の宴会などで「どうせ行くなら、なすびがいいよね」と選ばれる存在になっています。

静岡には、かつてデザイナーズレストランのようなものが少なかったのですが、私たちは内装にも工夫を凝らし、接客にも力を入れてきました。さらに、地元の食材を活かし、飲食業の基本を忠実に守り続けたことで、現在では高い評価をいただけるようになったと感じています。

その他にも、私たちが地元商工会議所やネットワークにも積極的に参加し、地域の人々との信頼関係を築いてきたことも、地元で支持されるために重要だったと実感しています。こうした地道な活動が、今の私たちの成功を支えています。

 

第2回は、団体客を軸とした経営モデルや、専務としての営業活動における付加価値戦略についてお届けしました。

第3回は、一回転に集中した宴会ビジネスモデルの成功と、ジャンボエビフライの誕生から全国的な人気に至るまでの経緯についてお送りします。

執筆 アキナイラボ 編集部

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