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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、自宅や別荘をホテルとして活用する新しいビジネスモデルを展開する「NOT A HOTEL株式会社」の代表取締役CEO、濱波伸次さんです。2020年に設立された同社は、独自のデザインと運営スタイルで注目を集めています。
新しいビジネスモデルを考案し、宮崎で「NOT A HOTEL株式会社」を設立するに至った経緯、独自のデザインと運営方法によって成功を収めた背景、そして国内外での展開や、品質と顧客満足に対するこだわりについて、3回に分けてお送りします。
第1回は、NOT A HOTELの創業と逆転の発想で生まれた新しいビジネスホテル、ノンアセット型ビジネスモデルなどについてお送りしました。
第2回は、8億円の物件をクリックで購入させるエッジの効いたデザインと魅力、新しい別荘の所有方法などについてお送りします。
この記事の目次
8億円の家をクリックして購入
最初の告知はSNSのみで行いましたが、その大胆な手法が逆に話題を呼び、瞬く間に広がりました。
オンラインで8億円の家を「今すぐ購入」ボタンをクリックして買うというアイデアに多くの人が驚き、その驚きがバズったのです。とはいえ、実際に「ポチッ」と購入ボタンを押す際には高いハードルがあったと思います。
そのため、私たちはクオリティーの高いCGでの情報提供に加え、一緒にプロジェクトを進めていた著名な方のクレジットを情報として提供することで、信頼を得ることができ、成功を収めることができたのだと考えています。
著名な建築家がデザインしたものであれば間違いないだろうという安心感が、投資家たちに10億円の出資を決断させたのだと思います。
エッジの効いた唯一無二のデザイン
私たちのホテルデザインは、従来の日本のホテルや別荘とは一線を画す、非常にエッジの効いたものになっています。
リビングから広がるオープンエアスペース、特徴的なお風呂、さらにはプールがついた施設もあり、そのデザインは他にはない独自のものです。
トップクリエイターたちは「世の中にあるものには欲しいとは思わない」と語っていました。どこにも売っていないからこそ欲しくなる、だからこそ突き抜けるしかないのです。
結果として、私自身が欲しいと思うものを作っていくことになったのですが、それが唯一無二のデザインとなりました。
デザインのエッジや唯一無二感を追求する際には一切の妥協をせず、私たちはCGを使ってプランを進めています。そのため、もし売れなければ建てないという最終的な選択肢があるからこそ、大胆な挑戦が可能になります。
欲しいと思ってもらえるギリギリを追求する
私たちは、人々の感性に訴えかけるプランを模索しながら進めており、これまで一度も完成に至らなかったことはありません。すべてのプロジェクトが実際に建てられています。
世の中にないものだからこそ、欲しいと思ってもらえるギリギリのラインを追求しているのです。たとえば、前回は大開口のガラス張りにしたので、今回は逆に洞窟をコンセプトにしてみよう、というように毎回新しい挑戦をしています。
私のキャリアの中で最も長いのはEコマースですが、その経験を活かして「ここがいけそうだ」という購買者の意向をインタラクティブに見極めることもあります。
普通は建築費が高くなるとコストを削減しようとするのが一般的ですが、私たちはその逆を行います。「このままでは全く魅力がない。ならば、予算を倍にしよう」と考え、予算を増やして魅力を最大化します。
そして、その魅力をもとにウェブサイトを作り、価格と価値のバランスを調整しています。
妥協なき設計とプロダクトアウトの価格決定
私たちはCGを作成しながら、ある程度建築予算を計算していますが、実際の見積もりが予算を超えることが多いです。特に最近は建築費が高騰しており、それを考慮に入れて設計を行っているものの、それでも予算を上回ることが増えています。
私たちのアプローチは、まず妥協せずに設計を行い、その後に販売価格を決定するという完全なプロダクトアウト方式です。
予算が確定した後、コストアプローチで価格を積み上げ、最終的に「はい、1億円で買いますか?」という形で価格が決まります。
予算を超える別荘所有の新しい形
私たちのサービスでは、お客様に年10日から利用できるプランをご提供していますが、実際には年30日単位で購入される方が多くいらっしゃいます。
価格帯は幅広く、最も手頃なもので1,500万円から、最も高いプランで30日間10億円と、様々な選択肢をご用意しています。30日で10億円のプランをご購入いただいた場合、使用期間に制限はなく、使用期限も設けていません。
そのため、私はこのサービスを「一つの家を12人で30日シェアするサービス」ではなく、「自分の予算の12倍の別荘を持てるサービス」と説明しています。
ほとんどの方が一棟を購入しても、実際にはあまり使用しないため、使用する分だけ購入する方が効率的です。これにより、予算の12倍の別荘を持つことが可能になります。
また、1,500万円のプランではローンも利用可能で、月額数万円から所有することができ、ホテルに宿泊するよりも経済的です。
多様化する購入者層と新しい利用スタイル
最近では、サラリーマンの方々の購入が増加しており、現在の一番のボリュームゾーンとなっています。特に「パワーカップル」と呼ばれる、夫婦でそれぞれ年収1000万円前後の方々が多く、超富裕層だけでなく、人生を楽しみたいと考えている若い世代の購入が増えてきています。
また、年間30日や10日といった利用モデルに関して、日本人は休暇が集中しがちで、分散が難しいと考えるかもしれませんが、私たちのユーザー層には30代から50代前半の方で、フルリモートで働く方も多く、平日に利用されるケースが意外と多いです。
年末年始に空いている部屋もありますが、これらのユーザーは年末年始を海外で過ごすことが多く、普段の気軽に行きやすいタイミングで利用される傾向があります。
これにより、以前に比べて土日に利用が集中することが減ってきたと感じています。
柔軟な利用システムによる平準化の戦略
私たちは、お客様が所有する物件に宿泊できなかった場合でも、同じランクの物件に差額なしで宿泊できるシステムを提供しています。このシステムにより、拠点数が増えるにつれて、利用が平準化されていくと考えています。
また、需要が少ない時期には、物件を一休やAirbnbのようなプラットフォームで貸し出すことにしています。
多くの方が3ヶ月前に予約をされるため、3ヶ月を切った時点で予約が入っていない物件は、私たちがホテルとして運営することになります。
この仕組みにより、直前でも宿泊できるチャンスが生まれます。ただし、一泊の料金は高額で、例えば那須の物件では一泊50万円に設定されています。
土地探しのポイントは感動
ここ1年ほどで、私たちのNOT A HOTELにしか使えないような土地の情報が徐々に集まってきました。X(旧Twitter)のDMでも、「こんな土地を持っているのですが…」といった連絡が増えています。
土地探しは必ず私自身が行い、私が感動するかどうかで決めています。土地の選定は、マニュアル通りにはいかないことが多いのです。
実際、例えば10件ほどの土地を見ても、そのうち決まるのは1件程度です。事前にリサーチをし、写真も確認してから現地を訪れますが、それでも決まるのは10件中1件程度です。
最近発表しましたが、北海道ルスツリゾートのスキー場山頂に新たなホテルを建設する計画があります。
通常、スキーイン・スキーアウトの施設はスキー場下のリフト乗り場近くに位置していますが、適した土地がなかったため、山頂に建設することにしました。ここでは、ホテルの部屋から直接滑り始め、ファーストトラックを楽しむことができます。
もちろん、山頂にホテルを建設するのは容易ではなく、ヘリコプターやリフトでしかアクセスできません。しかし、不便な場所だからこそ、その地に特別な価値が生まれると考えています。
社内には30名の建築家がいて、このプロジェクトを迅速に進める方法や、重機をどのように搬入するか、工事の動線をどうするかなど、日々知恵を絞っています。
第2回は、8億円の物件をクリックで購入させるエッジの効いたデザインと魅力、新しい別荘の所有方法などについてお送りしました。
第3回は、独自の働き方と採用方法、無人オペレーションシステムの投資と構築、今後の展開などについてお送りします。