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お店ラジオ 2024/08/01 2024/08/01

食パン界のエルメス

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、市場価格の半額程度でサービスを提供するマッサージ店に衝撃を受け、2009年に31歳で「りらくる」を創業。7年間で600店舗にまで拡大し、会社を売却。

その後、「今ある価値を繋ぎ、新しい価値を創造する」をコンセプトに、新規事業の立ち上げから既存事業の発展まで、あらゆる業種で企業や事業の強みを最大化するサポートを行うT’sインベストメントを設立し、現在は会長を務める、りらくる創業者でT’sインベストメント会長の竹之内教博さんです。

大阪の格安マッサージ店をヒントに、「りらくる」を創業し、「全てのお客様を満足させる必要はない」という独自の店舗経営や出店戦略で、600店舗まで店舗を拡大し、会社を売却。

現在は、韓国で高級食パン専門店を展開し、3年間で約40店舗を展開し、「食パン界のエルメス」や「シャネル」と呼ばれるまで成長させた店舗経営の考え方などについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、マッサージビジネスへの挑戦や店舗拡大、価格戦略などの成功戦略などについてお送りしました。
第2回は、人を上手に活用する方法や店長の役割、強みを活かした店舗運営、コッペパンの失敗などについてお送りしました。
第3回は、失敗から学んだことや紹介の大切さ、韓国での食パン専門店の成功、大切な人との出会いなどについてお送りします。

この記事の目次

 

コッペパン屋の失敗から学んだこと

一般的なイメージではコッペパンはスイーツです。
多くの人は、食事としてコッペパンを思い浮かべることはありません。私たちはそうした認識がなく、コッペパンを食事としての文化にできませんでした。もし私たちに、マーケティングコストを含めて文化を作る力があれば成功していたかもしれませんが、資金や気持ちの面で続けることは難しいと判断し、撤退することにしました。

もう一つの失敗の要因は、私たちが参考にした福島の成功事例がテレビなどで大きく取り上げられ、観光スポットとなっていたことを理解していなかったことです。私たちのお店は関東にあり、そのような集客方法を真似することはできませんでした。

この経験から学んだことは、真似すべきは業態ではなく、集客方法だということです。そのためには、お客さんが来ている理由を分析する必要があります。参考にしたお店の集客方法が真似できないものであれば、いくら真似をしてもお客さんは来ません。しかし、こうしたコッペパン専門店での経験を失敗だとは思っていません。その時に得たパンに関する知識や、パン職人とのつながりが、今の成功に活かされています。

 

商売が長続きする秘訣は紹介による拡散

私は「りらくる」を売却して以降、これまでに24、5の事業に取り組んできました。その中で21、2個の事業は成功を収めました。現在は韓国の食パン専門店が非常に好調です。

日本で食パンが流行した際、私は「乃が美(のがみ)」の行列に並んで購入し、100名以上の顧客にインタビューを行いました。その結果、リピート率の高さが成功の鍵であることがわかりました。顧客が再度購入する理由として、味や香りが重視されていましたが、最も重要なのは友人からの紹介でした。

ビジネスにおいて紹介が強い影響力を持つのです。紹介があるビジネスは成功しやすく、長続きします。一方、紹介がないビジネスは成功が難しくなります。自分で一生懸命宣伝することも効果がありますが、紹介による宣伝が最も堅実で持続的なビジネスの基盤となります。

 

コミュニケーションで大切なことは相手を否定しないこと

私は日本を避け、韓国で市場調査を行いました。韓国で食べた食パンは、主観ですが美味しくないと感じました。これは小麦粉の違いによるものらしいですが、それでも、「匠」という高級食パンが韓国で人気だったため、韓国でも成功の可能性を感じました。

私は、アルバイトを使って、客数や客単価をカウントし、月の売り上げを推測しました。そのお店は韓国の辺鄙な場所にありながらも高い売上を達成しており、マスコミでの露出がなく、知人の紹介が中心でありながら、1年以上続いていましたので、私たちも成功できる、短期間で潰れることはないと確信しました。

私は韓国に土地勘がありませんでしたが、以前、事業で知り合ったキムさんという知人に韓国での展開をお願いしました。戦略を共有し、彼とコミュニケーションを取りながら進めました。私のやり方は、アイディアを出し合って良いものを選ぶという方法です。重要なのは否定しないことで、多くのリーダーが否定的な態度を取ると良いコミュニケーションができません。議論が平行線になっても徹底的に話し合います。否定ばかりだと会議の雰囲気が悪くなり、生産的な話し合いができなくなります。

私たちは楽しいと感じながら議論し、一緒に進める感覚を大切にしています。意見を押し付けることはなく、エビデンスを提示して「これについてどう考える?」と意見を聞くことが重要です。意見を通したいのであれば、ファクトベースで話すことが大切だと考えています。

 

韓国での成功はSNS

韓国に出店して3年が経ち、現在では約40店舗を展開しています。今年中には100店舗に達する見込みです。韓国ではすべてフランチャイズ形式で展開しており、募集をかけると約400人の希望者が集まります。おかげさまで、「食パン界のエルメス」や「シャネル」と呼ばれるまでになりました。

営業については、最初からリファラル(紹介)を中心にマーケティングを行ってきました。特にバズらせることを狙った宣伝はせず、高級食パンを販売していることを知らせる看板を出しただけで、お客さんが来始め、さらにお客様の友達を連れてきてくれるようになりました。

店舗が増えると口コミが広がり、マスコミにも取り上げられるようになりました。最初の店舗は初月に約400万円の売り上げでしたが、現在では最も新しい店舗で月に2,000万円の売り上げを達成しています。売り上げの大部分は食パンによるもので、毎日完売しています。ドミナント戦略ではありませんが、エリア全体で展開することで、口コミがしっかりと形成されています。最も効果的な宣伝は、「あそこの食パンは美味しいらしいよ」というSNSでの口コミです。

 

高級食パンで大切な接客

日本では高級食パンのブームが少し落ち着いており、店舗数も減少しているようです。特に複数店舗を運営するフランチャイズオーナーの店舗が閉店していることが多い一方で、オーナー自身が店舗に立ち、管理しているお店は残っています。

私は、高級食パンのビジネスにおいて、接客が重要だと考えていて、これは「りらくる」とは異なる点です。高級食パンを販売する際、接客が思い出に残るような体験を提供することが求められます。店員が上品で、自分の商品に愛着を持っていることが顧客に伝われば、顧客はまた来店してくれます。

そのため、韓国では店舗に立てないフランチャイズオーナーはお断りしています。オーナーが私たちの食パンに愛情を持ち、素晴らしいと思ってくれることが重要で、私たちは400名の希望者の中から厳選してオーナーを選び、どのお店でも良い接客を提供できるようにしています。

私たちのお店はホスピタリティと情熱を大切にして運営していますので、他のお店に真似されることはありません。高級を謳う以上、愛情と熱意を持ってお店を運営することが成功の秘訣です。

 

人との出会いが事業成功の秘訣

シリアルアントレプレナーとして連続して事業を立ち上げていく過程で、多くのパートナーと協力することになります。出会いの重要性は言うまでもなく、私が目立ち、有名になるほど出会いの機会は増えます。一般の方々は出会いが少ないと感じるかもしれませんが、実際には日常的に多くの出会いがあります。

普通の人々は出会った相手を才能の有無で判断しがちですが、私は、その人に学ぶ意欲があるかどうかで判断します。学ぶ意欲があれば、無限に成長することができると信じていますし、一生懸命学ぶことでプロフェッショナルになれるのです。

ファーストコンタクトでは学びの姿勢を完全には見抜けないかもしれませんが、質問の有無や会話のリアクションである程度判断できます。例えば、「ああ、なるほど、勉強になりました」と言う人と、「ああっ」とだけ言って次の質問に移る人では、自分中心かどうか、相手を思いやる姿勢があるかどうかが分かります。

私はそのような人を記憶に留め、適切なビジネスの機会があった時に協力できるかもしれないと考えます。こうした基準で出会ったパートナーと共に事業を立ち上げることで、成功への道を築いていくのです。学ぶ意欲と相手を思いやる姿勢を持つ人々との出会いが、私の事業成功の秘訣です。

 

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