コロナ禍も落ち着き、人の動きも活発になってきたことから、実店舗の開業を検討している事業者が増えています。また、近年はオンラインショップからスタートして、実店舗の開業に踏み切る事業者も多いのではないでしょうか。
本記事では、実店舗のメリットを踏まえながら、開業までの手順や必要な資格を解説します。この記事を読めば、実店舗の開業に必要なことを網羅することができるので、ぜひ最後までチェックしてください。
この記事の目次
ネットショップには無い、実店舗開業のメリット
まずは、ネットショップにはない実店舗を開業するメリットについて説明します。
実店舗の主なメリットは以下の3点です。
- 対面で直接接客ができる
- 顧客が実際に商品を手に取れる
- 価格競争になりにくい
対面で直接接客ができる
実店舗の場合は、対面で直接接客ができます。
直接コミュニケーションを取ることができるため、顧客が何を求めているのかを把握しやすい点がメリットです。ネットショップであれば、膨大なアイテムの中からお目当てのものを探し出し、なおかつ商品画像や文章で購入するか判断しなければなりません。
たとえば、アパレルショップの場合は、取り扱うアイテムが多いだけでなく、商品によってサイズやデザイン、素材など細かな違いがあるため、ニーズにマッチした商品を見つけ出すのはハードルが高いと言えます。一方、実店舗であれば、顧客との会話によって要望を聞き出し、瞬時にニーズに沿った商品を提供することが可能です。
また、商品の利用シーンや活用方法などのアドバイスを付け足すなど、接客の質を意識することで、顧客満足度を向上に繋げることもできます。一定の接客スキルは求められますが、リピーターが獲得できれば、安定した収入を得られるでしょう。
顧客が実際に商品を手に取れる
実店舗は顧客が直接商品を手に取ることができる点がメリットです。
顧客自ら視覚や触覚を使って商品を選定できるため、クレームや返品に繋がりにくくなります。ネットショップの場合は、写真と説明文だけで判断しなければならず、商品レビューを中心に購入するか検討することになりますが、満足のいくものが届くことの方が珍しいでしょう。
価値観は人によって異なるため、いくら商品レビューで高評価が多くても、いざ自分が使ってみたら思ったものと違うこともあり、返品対応を求める消費者も少なくはありません。実店舗であれば、顧客が納得した上で商品を購入するため、返品対応になることも少なく、満足度が高いまま買い物を終えて貰える可能性が高いでしょう。
価格競争になりにくい
実店舗はネットショップと比べると、価格競争になりにくい傾向があります。
ネットショップの場合は、簡単に他店と価格を比較でき、類似商品であれば安い価格の方が購入されやすいため、値下げ合戦に巻き込まれる可能性が高いです。
実店舗であれば、ネットショップよりも価格での比較に手間がかかるので、他店との比較ではなく、店舗内での商品比較になりやすいと言えます。そのため、商品の魅力を伝えることに専念でき、接客で満足度を高めることができれば、購入してもらえる可能性が高くなるでしょう。価格以外の面で消費者にアピールすることができるので、ネットショップに比べて適切な価格をつけやすくなります。
実店舗を開業する手順
それでは、実店舗を開業する手順について説明します。主な流れは以下の通りです。
- お店のコンセプトを定める
- 市場調査をする
- 事業計画書を作成する
- 開業する地域を決める
- 開業費用を調達する
- 物件を探す
- 仕入れ先を決める
- 設備・備品を揃える
- スタッフの採用・教育を行う
- 集客の施策を実行する
一通りチェックして、実店舗の開業までのイメージをしてみましょう。
お店のコンセプトを定める
実店舗開業に向けて一番最初に行うことは、具体的にどのような店舗を開業したいのか、店舗のコンセプトを決めることでしょう。
業種や業態は当然ながら、どのようなイメージの店舗を運営したいのか明確にすることが大切です。たとえば、飲食店であればファミリー層がまったり時間を過ごせるような店舗や、仕事帰りに1人でもフラッと気軽に寄れる店舗など、ターゲット層と店舗の雰囲気をイメージしましょう。
また、商品やサービスをどのくらいの価格帯で提供するのか決めることも重要です。低単価かつ高い回転率で勝負するのか、高単価でハイクオリティのサービスを提供するのかなど、できるだけ具体性を持たせることを意識しましょう。コンセプトを明確にしておくことで、必要な資金判断や立地選びで役立ちます。
市場調査をする
コンセプトが決まったら、店舗経営のヒントにするために市場調査をします。
同業他社の経営状況や商品ラインナップ等をリサーチすることで、開業後成功するビジョンがあるのか判断することができます。また、開業したい地域に競合となる店舗が存在するのか、ターゲット層を確保できるのかなど、安定して集客を確保できる可能性があるのか把握しておくことも大切です。実際に出店を検討しているエリアに足を運び、人の流れを中心に調査しておきましょう。
事業計画書を作成する
ある程度開業に目途がついたら、事業計画書を作成します。
事業計画書とは、事業内容をはじめ、店舗の経営戦略や収益見込みを示したもので、事業方針や資金を決めるときに必要な書類です。基本的には、以下のような項目を記載します。
- 創業者または一員のプロフィール
- 経営ビジョン・経営理念・経営目的
- 主な事業内容
- 商品やサービスの特徴・強み
- 市場調査結果(競合や人の流れなど)
- マーケティング戦略
- 売上・利益計画
- 店舗の内装
- 資金調達方法など
事業計画書をチェックすることで、事業内容を客観的な視点で見つめなおすことができるため、事業内容を具現化するときに活用しましょう。
開業する地域を決める
事業計画書の作成と並行して、開業する地域を決めましょう。
市場調査の時点で、ある程度目ぼしい地域を特定しているはずなので、その地域からコンセプトにマッチする場所を探します。開業地域を決めるときは、資金調達の参考にするために、不動産会社のWebサイトを中心に物件の相場を調べておきましょう。
また、相場を調べる際に、いくつか気になる物件をピックアップしておくと、後の物件探しがスムーズになります。内見ができるのであれば、空き物件の構造や空き物件期間、前テナントの退去理由など、契約して問題ないか物件に関する環境を調べておきましょう。
開業費用を調達する
開業する地域を絞って、必要な費用の目途が立ったら、開業費用を調達しましょう。
開業費用の目安は、業種や業態、エリアによって異なりますが、1,000万円用意するのが一般的です。開業資金として少なくとも以下の費用はかかります。
- 店舗取得費
- 改装・設備費
- 備品購入費
- 広告費
- 材料・商品仕入れ費
- 人件費
開業して売上が安定するまでは、赤字になることも想定して、数ヶ月間利益がなくても生活できるように、資金に余裕を持たせておくことが大切です。ちなみに、主な資金調達手段として以下のような方法があります。
- 日本政策金融公庫
- 助成金・補助金
- 信用金庫の融資
まずは、事業を支援してくれる日本政策金融公庫や各自治体が設けている助成金等を利用しましょう。そして、頭金を含めて不足分を信用金庫などの金融機関による融資を受けることをおすすめします。資金調達をする際は、なるべく無駄な借金をしないことがポイントです。融資額を抑えれば、返済の負担が軽減されるため、少しでも多くの頭金を用意しましょう。
物件を探す
資金を調達できたら、いよいよ物件を探して賃貸契約を結びます。
開業地域を決める際に、いくつか物件をピックアップしているはずなので、立地や賃料などを比較して、コンセプトに沿った店舗を作れる物件を選定しましょう。特に物件選びで意識すべきポイントは、顧客が見つけやすい場所かどうか、また顧客が店舗に入りやすいかの2点です。
いくら立地や賃料が良くても、来店してもらえなければ意味がありません。顧客視点に立って、入りやすい場所かどうかを中心に検討してみましょう。なお、物件探しに関しては、タイミングがものを言うので、条件にマッチする物件を見つけたら、他者に契約される前に押さえておくことが重要です。
物件が決まったら、内装工事業者に見積を依頼して内装工事の依頼先を決めます。依頼先が決まり次第、内装工事の打合せを行い、開業日に間に合うように工事を進めてもらいましょう。
仕入れ先を決める
物件探しと並行して、商品や原材料の仕入れ先を決めましょう。まず仕入れ方法として以下のやり方があります。
- 仕入れサイトを利用する
- メーカー・生産者から仕入れる
- 卸売業者から仕入れる
- 海外から仕入れる
- 展示会や見本市で仕入れる
取り扱いたい商品や原材料に応じて、なるべく安く仕入れられる方法を選びましょう。ちなみに、仕入れ先を選ぶ際は、商品や素材の質にこだわることが大切ですが、原価率などの取引条件や納品期日に注目することもポイントです。また、担当者が親しみやすく、長い付き合いがイメージできるかどうかも判断材料になります。原価や品質、納期、担当者などを比べて、総合的に判断しましょう。
設備・備品を揃える
物件の賃貸契約を結んだら、仕入れ先の検討と並行して店舗の設備や備品を揃えましょう。
内装工事が行われる前に、空調設備や什器、飲食店なら厨房器具など、店舗経営に必要な設備や備品を手配しておく必要があります。設備や備品を全て新品で揃えていたら、必要な資金が膨大になってしまうため、なるべく中古品で揃えたり、居抜き物件を利用したりするなど費用を抑える工夫をしましょう。
なお、実店舗を運営する上でレジが必要ですが、POSレジを導入することで、売上管理や顧客管理などの業務を効率化することができます。
「スマレジ」は、実店舗の運営に必要な機能が充実しており、ECサイトとの連携も可能です。オムニチャネル(販売方法に囚われず、安定して顧客との接点を作って販売促進につなげる戦略)を実現したい方や、ネットショップと自動連携したい方や適正な在庫管理に優れたスマレジの導入をご検討ください。
スタッフの採用・教育を行う
店舗内装工事がスタートしたら、スタッフの採用活動を始めます。
人材を雇用するには、求人誌や求人サイトを利用する方法が有力ですが、SNSで募集するのもおすすめです。SNSで求人情報を拡散することで、効率よく宣伝することができます。Twitterなどを利用すれば、無料で効果的に人材募集できるので、公式アカウントを作成して定期的に情報を発信しましょう。
スタッフの採用に成功したら、即戦力になってもらうために、開店準備期間中に研修を行います。店舗の内装が終了したら、開業当日を想定して実践形式でトレーニングしておきましょう。
集客の施策を実行する
開業日が近くなったら、集客のための宣伝活動を行いましょう。
たとえば、SNSアカウントを活用して、キャンペーン実施の情報を拡散したり、ポスティングで周辺住民に徹底周知したりすることが方法として考えられます。また、専用アプリを開発しておくと、開業後にリピーター獲得のチャンスを増やすことができるでしょう。
実店舗の開業に必要な資格・届出
最後に実店舗の開業に必要な資格や届出について説明します。業種によって必要な資格は異なるので注意が必要です。今回は以下の3つのパターンごとに紹介します。
- 飲食店を開業する場合
- 雑貨店を開業する場合
- 個人事業主として開業する場合
飲食店を開業する場合に必要な資格
飲食店を開業する上で必要な資格は以下のとおりです。
- 必要資格
- 資格内容
- 取得方法
- 食品衛生責任者
- 衛生管理において適切な知識を持った人
- 飲食店を開業する場合、1店舗につき1名以上の食品衛生責任者を置かなければならない
- 各都道府県が実施する食品衛生責任者養成講習を受講する
- 栄養士や調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者などの資格取得
- 防火管理者
- 不特定多数が利用する施設で、防火管理上必要となる業務を行う人
- 収容人数が30人以上の施設は、防火管理者の設置が義務付けられている
- 都道府県などが実施する防火管理講習を受講する
いずれも講習日が決まっており、事前予約が必要なので、スケジュールを調整して早めに取得しておきましょう。
雑貨店を開業する場合に必要な資格
雑貨店を開業する場合は、基本的に必要な資格はありません。ただし、中古品を取り扱う場合は以下の資格が必要です。
- 必要資格
- 資格内容
- 取得方法
- 古物商許可
- 中古品売買を行う際に必要
- 未使用の新品状態でも、一度取引された商品を扱う場合も必要
- 必要書類を揃えて警察に提出
- 申請時に19,000円の手数料が発生する
- 申請から40日以内に結果が出る
アンティーク品を扱う場合も古物商許可をもらわなければならないので、該当する方は早めに申請しましょう。
個人事業主として必要な届出
個人事業主として開業する場合は、飲食店や雑貨店など形態に限らず、いくつかの書類を提出しなければなりません。提出が必須の書類は以下のとおりです。
- 必要資格
- 資格内容
- 取得方法
- 開業届
- 個人事業を開始したことを税務署に申告するための書類
- 開業するまでに開業届を提出しなければならない
- 開業して1ヶ月以内に、税務署に提出
- 書類は税務署窓口で入手可能
- 青色申告申請書
- 所得税を申告するための書類
- 売り上げや経費の集計などを申告する際に提出する
- 開業届提出後に税務署に提出
- 開業後2ヶ月以内に提出
どちらの届出も開業後に行いますが、開業日から猶予があまりないので、開業したら時間を空けずにすぐに提出しましょう。
実店舗開業に向けて準備をしよう
実店舗にはネットショップにはないメリットがいくつもあります。
もし実店舗の開業を決心した方は、今回紹介したようにコンセプト決めから順に準備を進めていきましょう。なお、業種によっては開業前に資格取得が必須な場合もあるので、開業に必要な資格や届出は確認しておくことが大切です。
開業準備を進める上で、POSレジの導入を検討している方には、「スマレジ」がおすすめです。スマレジは、ECサイトとの連携もでき、業務効率アップを図ることが可能です。